「運動」(movement)というものは、アイデアだけでは始まらない。旗を高々と掲げるカリスマ人物、旗の元でオーガナイズする実務家、オーガナイザーと共に計画・準備・運営するサポーター、そして参加する人員が揃わなければ、運動は起こらない。
6月18日、「ケニア最大の象、惨殺される あなたの印鑑になるのだろうか」というブログ記事を書いた。「ペンと絵筆inアフリカ」は、日本から見れば「地球の片隅」の南アフリカで、多くの日本人には全く関心のないアフリカの出来事を細々と書き綴る、限りなくマイナーなブログである。
ところがこのブログ記事は、酷い写真と「印鑑」という身近な題材のお蔭であろうか、珍しく多くの人に読まれた。20万近いページビューと2万5000を超えるフェイスブックの「いいね!」という、空前未聞の反響だった。
だが、私は活動家ではない。有名人でもない。組織化する力もない。せっかくの反響も、はっきり言ってブタに真珠。そのうち人々の関心が薄れ、忘れ去られる運命にあった。
幸いにも、そこに登場したのが、旗を高々と掲げることができる人物。プレトリア大学日本研究センター所長として南アフリカに関わってきた米倉誠一郎一橋大学教授・日本元気塾塾長である。
米倉氏は10月4日に世界中でゾウとサイの密猟禁止・保護を求めた行進「Global March for Elephants and Rhinos」が行われることを知る。だが、象牙の消費国である日本では開催されないという。是非、東京でも開催を!と幅広く呼びかけたところ、有志が集まり、実行委員会が設立された。
実行委員会の第1回ミーティングは8月14日。そこからが凄かった。皆、仕事を持つ忙しい人たちばかり。お金も時間もない。そこで、クラウドファンディングを立ち上げ、寄付を呼びかけ、資金調達。忙しい中、なんとかやりくりして、関係者が力を合せ、アイデアを出し合い、自分に出来ることをテキパキとこなす。そして、プロジェクトを実現。
皆の一生賢明な姿と、大量のメールのやりとりと、新幹線並みのプロジェクトの進捗状況に、遠い南アフリカの地で感嘆、感動し放っしだった。
海外に住んで30年近いが、たまに日本から来た日本人に会う度に、「最近日本も悪くなった」とか「最近の若者は内向き」とか悲観的な話ばかり聞かされる。でも、そんなことは絶対に、絶対にないと思う。
そして、10月4日がやってきた。まず、上野公園で「ゾウとサイの日」マーチ。(10月2日付けの「日経新聞」、「東京新聞」が大きな紙面を費やして紹介してくれた。)