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2018/02/27

世界で3人しか話せない超マイナー言語「バデシ語」 パキスタン

BBCニュースでバデシ(Badeshi)語の存在を知った。

世界中でバデシ語を話せるのは、パキスタン北部山岳地帯のビシグラム(Bishigram)谷に住む3人の老人だけ。この3人も、日常的にバデシ語を話すことがあまりないため、単語をしょっちゅう忘れるという。

バデシ語を話す最後の3人

バデシ語はインド・イラン語派に属する。2000年には約2800人の話し手がいた。

ビシグラム村でも、1世代前は村中がバデシ語を話していた。といっても、10家族くらいしかいなかったらしい。ビシグラム谷は過疎の村。嫁不足のためトルワル(Torwali)人を妻として迎え入れたことから、バデシ語が話されなくなったという。子供たちは母親の言語トルワル語を覚えて育つ。また、この辺りでは、トルワル語を話す人の方がバデシ語を話す人よりずっと多い。

2018/02/15

ベッカム、ゾンビ、スタートレック・・・。楽しい大学の科目あれこれ

アメリカのテレビ番組『ゲーム・オブ・スローンズ』(Game of Thrones)が米バージニア大学(University of Virginia)で英文学の科目になった。エミー賞、ゴールデングローブ賞など受賞している超人気ファンタジードラマだ。

授業を行うのはリサ・ウールフォーク(Lisa Woolfork)準教授。実績のある学者とのこと。『ゲーム・オブ・スローンズ』は「文学的に見て、非常に多様で含蓄がある文章。何重もの層があり、登場人物が豊富で、とても知的」とベタ褒め。

ディスカッションが主の授業は4週間にわたり、学生たちは最後に『ゲーム・オブ・スローンズ』の新しい章をグループ別に書くことになっている。現在24名の学生が受講中。

4年生のマドリン・マッコーリフ(Madlyn McAuliffe)さん曰く、「昔は本が話題を提供したが、今その役割を果たすのはテレビと映画」「文学と同じ原則をテレビや映画に適用するのは大切だと思う」。

これ以外にどんな「オモシロすぎて、実在するとはとても思えない大学の科目」があるのだろう、と英『デイリー・テレグラフ』(The Daily Telegraph)紙が探し出してきたのが以下のコース。

* * * * * * * 

デイビッド・ベッカム研究(David Beckham studies) 英スタッフォードシャー大学(Staffordshire University)

この大学には「メディア・スポーツ・文化」という学位があるそうで、その授業の一環。ベッカムの写真をホレボレと観賞するわけではなく、人々がサッカー選手に夢中になる現象を社会学的に研究するもの。コースを創設したエリス・キャシュモア(Ellis Cashmore)教授曰く、「今日ベッカムが大きな注目を浴びているのは事実。ベッカムは数多くの夢想・幻想の対象となっている」。

2009年ケープタウンにて。記者会見で一語一語ゆっくり言葉を選んで話す、誠実な態度が印象的でした。

2017/09/21

これは役立つ! 間違いやすい英語の言い回し

20年以上昔の話だが、ニューヨークの某語学学校で日本語と英語を教えていたことがあった。英語を日本人に、日本語をアメリカ人その他に教えていたのだ。

学校の事務員のキムさんは、日本語が流暢な韓国人。とてもいい人なのに、時々、心がグサッとくるような発言をする。「そんなこと、言う人じゃないのに・・・」と注意してみると、原因はちょっとした日本語の言い回しにあった。ほんの小さな言い回しのせいで、とても非人情に聞こえるのだ。勿論、本人は気がついていない。ネイティブ並みの流暢さのために、聞いている日本人も、まさか言い回しを間違っているとは気がつかない。知らないうちに、すごい損をしている。

アメリカの大学の英語教授法修士課程で、第2外国語習得のセオリーと、教え方のテクニックや実技を随分勉強したが、その時、外国語を話す上で、「正確さ」(accuracy)、「流暢さ」(fluency)、「適切さ」(appropriacy)の3つが大切であることを教わった。

実習で中級のクラスを教えた時、出身国の文化や伝統が会話能力に大きく影響していることに気がついた。日本人やタイ人の学生は、元々、授業で積極的に話すことに慣れていない。その上、文法的に正確な英語を話そうとするあまり、恐れて口を開かず、口を開いても小さい声でボソボソ。一方、コミュニケーションに長ける中南米の学生は、手振り身振り入りで、立て板に水のように流暢に話しまくるが、文法はめちゃめちゃ。うまくコントロールしないと、授業はラテンアメリカンに乗っ取られてしまう。

時間をかけて勉強すれば「正確さ」は身に付く。間違いを恐れずに場をこなせば、「流暢さ」は身に付く。体で覚えるしかないのが、「適切さ」である。状況に合った表現を使い、「文法的には正しいけど、普通、そうは言わない」という事態やとんでもない誤解を避けるためには、英語を沢山聞いて、沢山読んで、フィーリングを掴むしかないのである。

それでも、日本にいながら英語を体で覚えるのは至難の業。なにか良い教材はないかなと思っていたら、「Business Insider」に素晴らしい記事があった。日本人が間違って使いやすい、文法的には正しいが言いたいこととはかけ離れた英語表現を分析し、それではどう言うば良いのかが説明してある。

2017/07/06

フィンランド語で「犬」を何というか

日本語には冠詞も、単数と複数の区別もないから、「犬」は「犬」である。なんと楽なことか! しかし、冠詞複数単数の区別、格変化などがある言語では「犬」が「犬」で済まない。

その良い例が、この漫画。(元ネタはimgru.com

イギリススウェーデンが立ち話(?)をしている。

イギリスが何故か突然、「a dog」「the dog」「two dogs」と言い出す。「犬が一匹」、「その犬」(単数)、「犬が二匹」(複数)というわけだ。英語には不定冠詞の「a」、定冠詞の「the」、複数形を表す「-s」があるため、この3通りが可能である。(「the dogs」を入れると4通りだが、この漫画には含まれていない。)

スウェーデンが応える。スウェーデン語だと、同じことが4通りの言い方で表現できる。

そこに現れたのが、ドイツ。ドイツ語の名詞は格変化する。主格、属格、与格、対格の4つあるので、「犬」はもっと多くの言い方で表すことができる。

「おもしろそうじゃん!」と顔を出したのが、フィンランド。さて、なにが起こるか。下をご覧ください。

2014/07/19

ノーベル文学賞作家ナディン・ゴーディマ、逝く

7月13日、ナディン・ゴーディマ(Nadine Gordimer)が亡くなった。享年90歳。ベッドで寝ている間に、安らかに息を引き取ったとのこと。ごく最近、書き物をしている姿を見たという証言がある。最後まで頭もボケなかったのだろう。まさに大往生。理想の逝き方。

晩年のナディン・ゴーディマ。最後まで毅然としていた。(Varsity Breakout

「シネマヌボー」(Cinema Nouveau)という、小粒だが良質の作品を揃える映画館で、その小さな姿をよく見かけた。年配の付き人といつも一緒だった。

1990年の後半だっただろうか、自宅に伺ったことがある。パークタウンウェストという、昔からの閑静な住宅街に立つ古い家だった。アパルトヘイト時代、当局に追われる解放運動家を自宅にかくまった話などを聞いた。物静かな人だった。

政治意識が高く、アパルトヘイト政権への反対を明言するものの、デモの先頭に立ったり破壊工作をしたりするタイプではないゴーディマにとって、文学でアパルトヘイトの欺瞞や理不尽さを淡々と描くことが一番性にあった抵抗運動だったのだろう。アパルトヘイトが提起した倫理問題や人種問題についての作品を発表し、『バーガーの娘』(Burger's Daughter)、『ジュライの人々』(July's People)などは南アフリカで発禁処分となった。

1923年11月20日、ジョハネスバーグの東にある田舎町スプリングズの近くで、ユダヤ系の家庭に生まれる。父親はラトビア出身の時計職人、母親はロンドン出身。倫理観や政治意識が高かったのは母親の方だった。黒人が直面する貧困や差別に心を痛め、黒人の子供を対象とした保育園を開いたほど。

母親はナディンの心臓が弱いことを心配し、殆ど学校にやらなかった。家でひとりで過ごすことが多かった子供時代に、文章を書き始めた。作品が初めて出版されたのは1937年、15歳の時。子供向けの短編だった。大人を対象とした小説が初めて出版されたのは16歳の時。1951年、『ニューヨーカー』誌に短編を発表。国外でも知られるようになる。

2013/12/19

マンデラ追悼式のでたらめ通訳、精神病院に収容。コネはやっぱり与党ANC。

12月10日に行われたネルソン・マンデラの追悼式で、図らならずも世界中の注目を集めてしまった、「でたらめ通訳」タムサンカ・ヤンキー(Thamsanqa Jantjie)。

南アフリカの国営放送(SABC)を見ていた人は、ヤンキーの「実況通訳」の大部分を惜しくも見逃してしまった。SABCでは独自の手話通訳を用意しており(鼻っから政府の手配を信用していなかったのだろうか?)、画面ではオバマその他の要人が中央から向かって僅かに右寄り、四角に入った手話通訳が左下に位置。要人の向かって右に立っていたヤンキーは、たまにしか画面に入っていなかったからである。

2013/12/14

でたらめだったマンデラ追悼式の手話通訳、実は暴力的な総合失調症 世界の要人を危険にさらした責任は?

12月10日、マンデラの追悼式をテレビで見ていた全世界の聴覚障害者は目を疑った。手話通訳者の「訳」が全くわからないのだ。「あのサインは『揺り木馬』? でも、何故オバマ大統領が揺り木馬の話なんか・・・? えっ、『タバコ』? 『エビ』?・・・なんだ、全然文になってないじゃん!」

(「DESTINY.com」より)
それもそのはず。ソウェト在住、34歳の「手話通訳」、タムサンカ・ヤンキー(Thamsanqa Jantjie)による、全くのでたらめ、行き当たりばったりの創作手話だったのである。

一体、誰が南ア史上最大級の大舞台に「偽通訳」を雇ったのか?

2013/05/04

法廷通訳が見つからなくて、起訴取り下げ

2010年11月、ケープタウン行のバスから、サイのツノ12本が見つかった。西ケープ州での道路検問で引っかかったのだ。そのうちの一本は大きすぎてスーツケースに収まらず、半分に切られていた。サイのツノの押収量としては、史上最大である。

逮捕されたのは25歳と32歳のベトナム人男性。

サイのツノは伝統的には媚薬、最近はガン二日酔いの特効薬などとして、中国ベトナムで重宝されている。主な成分は爪や髪と同じケラチン。勿論、医学的効用はない。しかし、迷信のために乱獲が進み、サイは絶滅の危機にある。ワシントン条約で、サイのツノの取り引きは禁止されているから、殆どが密猟・密輸である。

南アフリカは他のアフリカ諸国よりサイの保護に力を入れてきたせいで、世界のサイの73%が南アフリカに生息している。しかし、近隣諸国で取りつくされた感があるせいか、それとも南アフリカで密猟がしやすくなったのか、またはその両方の理由からか、近年、南アフリカでのサイの密猟が増加している。

昨年一年間で、全国で668頭のサイが密猟により命を落とした。今年に入って4か月で、既に70頭以上が殺されている。

サイが殺されるのは、密猟だけではない。「猛獣狩り」ファン相手の合法的狩猟枠を、ツノ獲得に悪用するケースも多い。タイ人の売春婦などを「ハンター」として申請し、合法枠を使って狩猟許可を取り、ツノを取るために殺すのである(サイを「合法的」に「密猟」する方法)。絶滅の危機にある動物に、何故狩猟枠が割り当てられるのか、南ア政府の行動は不可解だ。

そこまでして、こぞってサイ殺害に乗り出すのは、需要があることに加え、逮捕される確立が低く、儲けが莫大だから。

サイの未来に関して暗いニュースが続く中、このベトナム人逮捕は珍しい朗報だった。

ところが、4月29日のことだ。30か月の拘留後、ふたりは釈放された。それも、法廷通訳が見つからない、という理由で。

2013/01/08

南アフリカの英語 「交通信号」は「ロボット」!?!

「3つ目のロボットを左に曲がって・・・。」

南アフリカで道を聞くと、こんな返答が戻って来る。

といっても、道路の各所にロボットがつっ立っているわけではない。交通信号機のことだ。

交通信号機が一体またどうして「ロボット」? 南ア人に聞いても、明確な回答が得られない。せいぜい、

「う~ん。信号が南アに初めて設置された時、あまりのテクノロジーのスゴサに皆驚いて、ロボットみたいだ、と思ったのかな~」程度。

「ロボット」=「人の代わりになんらかの作業を行う装置」という定義に基づけば、交差点に立って交通を誘導するお巡りさんの代わりということで、「交通信号機」=「ロボット」でもいいのかな~???

フェイスブックで最近、こんな一覧表を目にした。題して、「Howzit my bru? - Talk like a South African」(やあ、兄弟-南ア人のように話そう)

2012/02/05

英語の婉曲表現

英語学習本のようなタイトルで恐縮だが、これには深い訳が・・・

・・・あるわけではない。『エコノミスト』の記事が面白かったので、その一部をご紹介しようと思ったまで。

記事の冒頭を飾るのは、1945年8月15日の「玉音放送」。「世界史上最高の婉曲表現のひとつ」だという。「原爆を2つ落とされ、300万もの国民が命を失い、本土決戦を目の前にして、無条件降伏を国民に伝える」のに使った表現が「戦局必ずしも好転せず」。・・・なるほど。

『エコノミスト』が「婉曲表現の世界チャンピオン」と呼ぶのはイギリス人。

その良い例が死亡記事。死んだ人を悪く言うのは礼儀に反するので、どうしても婉曲表現を使うことになる。「死ぬ」こと自体、「die」ではなく「pass away」(過ぎ去る)という。

「宴会好きの」(convivial)、「愉快な」(cheery)と形容してあれば、故人は「大酒飲みの酔っ払い」。「耐えられないほど、つまないことをくどくど言う人」は「社交的な」(sociable)、「熱意にあふれた」(ebullient)。「他人に対して辛辣な話や全然おかしくない話をする人」は「機知に富んだ」(lively wit)。「惨めで落ち込みがちの人」は「厳粛な」(austere)とか「控え目な」(reserved)。「女好き」は「女性と一緒にいるのを楽しんだ」(enjoyed female company)。「男狂い」は「とても活発」(notable vivacity)。「欲望を抑制できない人」は「充実した人生を送った」(He lived life to the full)と描写される。

生きている人だと、訴訟される可能性があるから、記者は更に慎重になる。

2011/02/23

絶滅寸前のブスー語を救おう カメルーン

私のお気に入りのウェブサイトに、www.busuu.comがある。ミクシーやフェースブック同様のソーシャルネットワークサービス(social network service:SNS)だが、外国語を学びたい人が対象というのがミソ。

オファーされているコースは英語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ポルトガル語(ブラジル)、それにロシア語。学びたい言語と話せる言語(母国語及び流暢に話せる言葉)を登録する。学ぶ言語はいくつでもOK。無料。

文法や語彙はインターアクティブなオンライン学習。SNSの長所が生きるのは、作文と会話。ネイティブスピーカーが作文の添削をしてくれ、また、オンライン中のネイティブスピーカーに、「会話の練習相手になって」とリクエストが出せる。

学習している言語の添削をしてもらう代わりに、自分が出来る言語の添削をしてコミュニティにお返し。勿論、普通のSNS同様、「お友達」になることも可能。仲間と励まし合いながら、外国語が習得できる。

日本語しか出来なくても、気後れする必要はない。日本語はオファーされていないものの、会員の中には日本語を学んでいる者もいる。その人たちの質問に答えたり、会話の相手になってあげれば良い。

busuu.comは2008年5月、リヒテンシュタイン人のアドリアン・ヒルティ(Adrian Hilti)とオーストリア人のベルンハルト・ニーズナー(Bernhard Niesner)が設立した。ふたりともまだ30代。本部はスペインのマドリッド。まだ設立間もないのに、既に数々の賞を受賞している。

さて、HPの名前になっている「ブスー」(Busuu)とは何のことか。

実は、カメルーンで話されるバンツー系の言語だ。

話される、といっても、1986年に8人しかいなかったネイティブスピーカーは、2005年には僅か3人に減少。まさに絶滅寸前である。

busuu.comでは「ブスー語を救え」(Save Busuu)キャンペーンを開始。ブスー語の危機に対する意識を高め、ブスー語学習者を増やそうという狙いだ。そのためにHPと「ブスーの歌」のプロモー ションビデオを作成した。(HPでは8人のネイティブスピーカーがいることになっている。)

HPはhttp://save.busuu.com。歌の英語版はこちらをどうぞ。軽快でコミカル。かなり笑えるので、是非見てください。「ブス、ブッスー!ブス、ブッスー!」と思わず口ずさんでしまうかも。

2010/10/17

公用語が11 南アフリカの法廷通訳

南アフリカには公用語(official language)が11ある。このうちヨーロッパ系は、英語とアフリカーンス語。残りの9つはアフリカの言葉。ズールー語、コサ語、スワジ語、ンデベレ語がングニ系、北ソト語、南ソト語、ツワナ語がソトツワナ系、シャンガーン族の話すツォンガ語がツワロンガ系、それにヴェンダ系唯一の言語であるヴェンダ語だ。この11以外を第一言語とする南ア国民は、全体の1%以下しかいない。また、大部分の南ア人は11の公用語のうち2つ以上を話す。

勿論、標識やラベルや注意書きなど、全ての記載を11言語で行うのは現実的でないので、大抵の場合、英語とその地域や職場で良く使われる言語が併記されている。

南アフリカでは、自分で選んだ言語で裁かれる権利を持つ。これは憲法で保障されている。つまり、被告や証人が英語以外の言語を選んだ場合、通訳が必要になるわけである。選ぶ言語は、南アの公用語である必要はない。日本語でもタガログ語でも、アマゾンやパプアニューギニアの言葉でも構わない。

最近、南アにおける法廷通訳の調査を行った南アフリカ大学のローズマリー・モエケツィ教授によると、法廷通訳は一般に思われているよりずっと難しい。「公の場で行われ、またかなりのストレスがある。リハーサルなし、ぶっつけ本番で対応しなければならない」からだ。通訳に被告の命がかかることだってあり得る。

南ア法務省では2000名近くを通訳として使っている。しかし、法廷通訳資格試験があるわけではないため、南アの法廷通訳の質はかなりバラバラだという。とすると、ひどい通訳にあたった被告は悲惨である。お金があれば優秀な通訳を雇うことも可能だが、公選通訳に頼らざるを得ない貧しい人々にはどうしようもない。

南アフリカ大学では3年の法廷通訳の学位コース、ヴィットヴァータースランド大学とポートエリザベス大学では2年のディプロマコースを始めたものの、いずれも生徒数の不足から閉鎖に追い込まれた。

質の良い法廷通訳を確保するには、待遇改善から取り組む必要がある。プロの通訳にとって、法廷通訳は収入にならない。公選だと恐らく料金がとても安いだろうし、裁判はその日になって延期ということが多いので、予定が立てにくい。頼まれて3日間空けておき別の仕事を断ったのにドタキャン、ということも大いにあり得る。そんな場合でも収入を保証されないと引き受けにくい。

それほどポピュラーでない言語の法廷通訳をいつでも引き受けることが出来るのは、小銭を稼ぎたい失業者とか、ボランティアに意欲のある主婦くらいではないか。法務省で使う通訳は仕事を持つ人が多いから、2000名近く名簿に載っていても、肝心の時に引き受けてもらえるとは限らない。実際、通訳手配に裁判時間の10%が費やされているという。

実は私も、一度だけ法廷通訳を務めたことがある。原告側の証人が日本人だったのだ。大手企業の責任ある職にある人だ。

裁判を遅らせたいのか、この証人に証言して欲しくないのか、被告側の弁護士が異議を唱えた。「日本には方言が沢山あるから、証人と通訳の間で言葉が通じない可能性がある」というのだ。裁判長が日本語を知らないことを盾に取ったハッタリ。めちゃくちゃな論理もいいところである。

遠回りなようでも色々な人生経験を積んだり、一見無駄な雑学を蓄積したのが変なところで役に立った。おもむろに裁判長に向かい、明治時代の標準語整備を説明し、これま政府などの通訳を務めた経験を滔々と述べた。「少なくとも日本の政府とあなたの国の政府は、私を通訳として信頼してくれている。」 実は内心冷や汗もの、こちらもハッタリだったが、裁判長はにっこりうなずき、ゴーサインを出してくれた。

(参考資料:2010年10月15日付「Mail & Guardian」など)

2010/07/13

W杯 言語部門の優勝はブブゼラ

2010年のサッカーワールドカップ(W杯)サッカー部門はスペインの勝利に終わったが、言語部門の優勝はブブゼラ。世界60カ国以上の言語学者のお墨付きである。

今回の「W杯で最も影響力を持った言葉」を選んだのは、320人以上の言語学者。75%がブブゼラに投票した。因みに、公式ボール「ジャブララ」、マスコット「ザクミ」、南ア代表の愛称「バファナバファナ」は、それぞれ4%ずつ得票。

「Today Translations」社(ロンドン)のユルガ・ジリンスキーネ社長によると、「ブブゼラは翻訳を必要しない世界語になった」。「個々の試合が 忘れ去れられた後も、この大会はブブゼラワールドカップとして人々の記憶に残るだろう」という。

2010/06/16

これで完璧 南アフリカW杯用語集

ついに開幕したアフリカ大陸初のサッカーワールドカップ(W杯)。3連敗してさっさと帰国の途につくと思われた日本代表が初戦勝利。「第1次リーグを突破できない史上初のホスト国」と陰口を叩かれていた南アフリカ代表は、初戦を引き分け国民を狂喜させたが、第2戦ではウルグアイに完敗した。
 
南ア代表チームは、アパルトヘイト廃止後の1992年に設立された。愛称は「バファナバファナ」(Bafana Bafana)。「バファナ」とは「少年たち」のこと。「バファナバファナ」と繰り返すと「ゴー!ゴー!ボーイズ!」と声援を送っているようなニュアンスになる。
 
2010年W杯のスローガンは、「Ke Nako. Celebrate Africa's Humanity」。「ケ・ナコ」は「It’s time」の意。南アにとって、アフリカにとって、「待ちに待った時がやってきた!」との意気込みが感じられる。
 
マスコットは「ザクミ」(Zakumi)。フサフサした緑の髪がライオンのタテガミを思わせるが、実はヒョウ。南アフリカを示す「za」とアフリカ諸言語で数字の10を意味する「kumi」から名付けられた。1994年6月16日生まれ。第1回民主総選挙が行われマンデラ大統領が誕生した1994年と、ソエト蜂起の記念日6月16日をくっつけたのだろう。当年16歳。ヒョウにしては随分お年寄りかも。
 
扱いにくいと不評の公式ボール「ジャブラニ」 (Jabulani)。「喜び」「幸せ」「祝福」を意味する男の子の名前だ。
 
昨年のコンフェデ杯で世界に知れ渡った応援ラッパ「ブブゼラ」(vuvuzela)。語源に関しては、ズールー語の「騒音を立てる」、タウンシップのスラング「シャワーを浴びる」など諸説ある。1970年代には既に、アルミニウム製がスタジアムで見られた。プラスチック製は2001年、南ア企業マシンケダネ・スポーツ社が月間500本の生産を開始。同社ではW杯期間中、150万から200万ランドの売り上げを見込んでいる。安い中国製は1本20ランドから。

南アサッカーファンの必需品その2は、「マカラパ」 (makarapa)。工事現場で使われるプラスチック製ヘルメットを改造したもの。元々、田舎から都会に出てきて、鉱山や工事現場で日銭を稼ぐ労働者のことだった。彼らが作業ヘルメットを持って故郷に戻ったことから、マカラパ(単数形はレカラパ)は、堅い帽子を指すようになった。
 
サッカーグッズ「マカラパ」の発明者は、アルフレッド・バロイ氏。興奮したファンが投げるビール瓶などから身を守るため、1979年、ヘルメットをスタジアムに持って行ったのが最初。現在では、ファンによるクリエイティブな手製のものから工場生産品まで、様々な色やデザインの「マカラパ」が目を楽しませる。200ランドから400ランド程度。
 
オフィシャルスポンサーである携帯電話サービスプロバイダーのMTNは、「アヨーバ!」(Ayoba)をW杯用広告スローガンに使用。流行らせようと一大キャンペーンを繰り広げている。「カッコイイ」「万事OK」を意味するスラングだが、サッカー場では「頑張れ!」「よくやった!」といった声援となる。

19日のオランダ戦で日本チームが得点したら、声を揃えて「アヨーバ!!」

 (2009年12月4日、「ジャブラニ」お披露目会でのベッカム)