2015/07/22

最後に笑うものは? ピカソと鉱夫

1973年5月、ジョハネスバーグ美術館(Johannesburg Art Gallery)の館長ネル・エラスムス(Nel Erasmus)は1枚の絵に心惹かれた。パブロ・ピカソ(Pablo Picasso, 1881-1973)の「Tête d'Arlequin II」(1971)である。

Tête d'Arlequin II (The Times

エラスムスはクレヨンとパステルで描かれた道化師に、間近に迫った死に対するピカソの不安を感じ取ったという。(これは2015年の談。)

1973年10月、ジョハネスバーグ美術館は2万8000ランド(現在の為替レートで約28万円)でこの絵を購入する。しかし、「名画」を入手したと意気揚々のエラスムスを待ち受けていたのは、マスコミと市民の嘲笑、困惑、怒りだった。

風刺漫画家たちは格好の材料を得たと大喜び。ピカソの道化師を取り囲む医者たちが次々に診断を下すマンガ(「動脈硬化」「肝硬変」「二日酔い」「敗血症」「悪臭呼気」)や、いたずらした子供を母親が「お行儀よくしないと、あのピカソの絵を見に連れて行くわよ!」と脅すひとこまマンガなどが新聞紙面を飾った。

2015/07/12

ネットで暇つぶしする、今どきの囚人 刑務所の通貨は「エアタイム」

「あなたのせいで笑い過ぎて、お腹の皮が痛いわ。」

アヤンダ・テンゴ(Ayanda Tengo)がこんなコメントを残したのは、シズウェザケ・ヴマゾンケ(Sizwezakhe Vumazonke)のフェイスブックのウォール。これに対して、ヴマゾンケは「あまり笑うなよ。お腹が落っこちるぜ。」

ヴマゾンケはまた、フェイスブックにこんな写真を投稿している。

news24

この賑やかな服は、南アフリカの囚人服。そう、ヴマゾンケは殺人容疑で勾留され、刑務所に収容されているのだ。

『タイムズ』紙の取材を受けた別の囚人曰く、

刑務所に入っていると、時間は有り余っているのに、することがない。だから、皆ネットで時間を潰すのさ。僕はツイッター、フェイスブック、インスタグラム、それにワッツアップをやってるよ。」

ネットにアクセスするにはスマホを使う。

囚人が携帯電話を持つことは許可されていないものの、様々な手を使って持ち込んでいる。

2015/07/01

逃走ライオン、捕まる 国立公園を抜け出して24日ぶり

人間は誰も、自分を中心とした「普通」の世界に住んでいる。「普通」「当然」「常識」と思っていることが、習慣や価値観の違うよその国の人から見ると、全然「普通」でも「当然」でも「常識」でもないことがよくある。同じ日本人だって、育った環境の違いによって、異なった「常識」を持っていることがあるかもしれない。

カルー国立公園(Karoo National Park)のオスライオンが公園外に逃げ出したと聞いた時、「そうか」くらいしか思わなかった。そして、狩猟大好き人間や、家畜が襲われることを懸念する農家に殺されることなく、無事に保護され、国立公園に戻って欲しいと願った。

南アフリカはアフリカ大陸屈指の先進国だ。「アフリカ」とはいっても、ライオンを目にすることが出来るのは動物園か保護区のみ。それでも、ライオンが保護区の外に出たと聞いて、全然違和感がなかった。数年前、ペットのトラが輸送中に行方不明になり、数日間捜索が行われた時の方がずっと大々的に報道されたから、メディアも一般の人たちも、逃走ライオンが「普通」でないこととはそれほど感じていないに違いない。

「シルベスター」(Sylvester)というニックネームを与えられた3歳のオスライオンが2週間くらい経ってもまだ捕まらないというニュースに、「これが日本だったら大騒ぎだろうな」とようやく思い当たった。「猛獣」とされるライオンが2週間も野放し状態なのだから。日本で育ち、日本に住む日本人にとって、野生のライオンが動物園の外を勝手に歩いているのは、かなりシュールな出来事だろうな。(まあ、日本では熊やイノシシが里に出てくることがあるから、動物の種類が違うだけで、コンセプトとしてはそれほど異様ではないかも。。。)