2018/02/27

世界で3人しか話せない超マイナー言語「バデシ語」 パキスタン

BBCニュースでバデシ(Badeshi)語の存在を知った。

世界中でバデシ語を話せるのは、パキスタン北部山岳地帯のビシグラム(Bishigram)谷に住む3人の老人だけ。この3人も、日常的にバデシ語を話すことがあまりないため、単語をしょっちゅう忘れるという。

バデシ語を話す最後の3人

バデシ語はインド・イラン語派に属する。2000年には約2800人の話し手がいた。

ビシグラム村でも、1世代前は村中がバデシ語を話していた。といっても、10家族くらいしかいなかったらしい。ビシグラム谷は過疎の村。嫁不足のためトルワル(Torwali)人を妻として迎え入れたことから、バデシ語が話されなくなったという。子供たちは母親の言語トルワル語を覚えて育つ。また、この辺りでは、トルワル語を話す人の方がバデシ語を話す人よりずっと多い。


ビジグラム谷の村

更に、ビシグラム谷にはこれといった産業がないことから、住民たちは観光産業で栄える近くの町で働く。そこで話される言語はパシュトー(Pashto)語。

かつてバデシ語を話していたビシグラム谷の住民にとって、トルワル語やパシュトー語が第一言語や共通語になってしまった。ビジグラム谷以外でも同様のことが起こったのだろう。今では、バデシ語を話すのはビジグラム谷に住む3人の老人しかいないのだから。

この3人が亡くなったとき、「ミーン・バデシ・ジベ・アーサ」(Meen Badeshi jibe aasa)=「私はバデシ語を話せます」と言える人がいなくなる。バデシ語は死に絶えてしまうのである。それとともに、バデシ語でしか表現できなかった感情が、地球上から消え失せてしまうのだろう。

ビジグラム谷の若い世代

バデシ語はこの番組の中で聞くことができます。



【参考資料】
"Badeshi: Only three people speak this 'extinct' language", BBC News(2018年2月26日)
"The Badeshi People in Bishigram and Tirat valley,Swat"

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