2012/11/20

アフリカよ、ノルウェーを救え!

ラッパーの「ブリージーV」(Breezy V)は語る。

アフリカ人を団結させて、困っているノルウェーに救いの手を差し伸べようという運動を行っているんだ。

えっ? アフリカがノルウェーを救う?

「ノルウェーで何が起こっているか気がついていない人が多いけど、僕に言わせれば、寒いというのは貧困と同じくらいひどいことなんだ。日の光は人々に笑顔を与える。人間は飢えている人々を無視したりしない。だから、寒さに震えている人々を無視すべきじゃない。凍傷で死ぬ人だっているんだから。アフリカの皆さん、ノルウェーのためにひと肌脱ごうじゃないか。ストーブを集め、ノルウェーに送り、暖かさ、光、そして微笑みを広めようじゃないか。ラディエイドに協力してください。」

そして、音楽が始まり、複数のアフリカ人シンガーの歌声が重なる。。。

そう、ボブ・ゲルドフ(Bob Geldof)らの「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス」(Do They Know It's Christmas; 1984)やマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)、ライネル・リッチー(Lionel Richie)らの『ウィー・アー・ザ・ワールド』(We Are The World; 1985)などがメガヒットした、超大物ミュージシャンによるアフリカ飢餓救済コラボのパロディーである。(有名ミュージシャンによる慈善コラボプロジェクトの発端は、ジョン・ハリソン(John Harrison)らによるバングラディッシュ救済レコード「バングラディッシュ」(Bangla Desh;1971)。)

アフリカの救済に長年熱心で、地道な援助を一貫して与えて来たのは、北欧諸国。深刻な問題がないことにかけては、世界でもナンバーワンの地域である。それを逆手に取って、問題だらけのアフリカが北欧に手を差し伸べようという趣向。「ラディエイド」(Radi-aid)の「ラディ」は、「ラジエーター」(radiator; 日本語でいう「ストーブ」)の最初の部分。「バンドエイド」(Band Aid)などにひっかけたもの。

とはいっても、「アフリカを援助の対象としか見ない先進国を皮肉っている」とかいう政治的なメッセージではない。そうだったら、「可哀想な」アフリカ援助を声高々に、自己満足的に叫ぶ、アメリカなどをターゲットにするだろう。

遊び心に溢れた、無邪気なビデオ、とみる方が正解だろう。普段は慈善に関心のない人も、古着を寄付したり、募金に協力したりする、このクリスマスの時期に、日光が降り注ぐアフリカから、寒さに震える北欧の人々にストーブを送ろう!というわけだ。単純に笑える。公式HPまである。

では、何故、ノルウェー? 制作にノルウェーの諸機関が参加しているからではないか。つまり、自分を笑えるノルウェー人の遊び心にも溢れているわけですね。

これがその歌『アフリカ・フォー・ノルウェー』。(Africa for Norway)


以下、歌詞の拙訳です。
ノルウェーでは子供たちが凍えている
今度は僕たちが気遣う番だ
ここにはノルウェーを暖めるのに十分な熱がある
アフリカ人が分け与えされすれば。。。
でも、アフリカ人はこう思う
俺たちに貢献なんて出来ないよ
ここにある暖かさを
シェアしたいのはヤマヤマだが
運んで分け与えるなんて、俺たちには無理だ

(コーラス)
さあ、立場が逆になったんだ
さあ、アフリカがノルウェーを救う番だ
見て見ないふりをするなんて
絶対にしてはいけないよ
ノルウェーの人たちが凍えている
アフリカ人が気遣うなら
ノルウェーまでストーブを送ろう
ノルウェーのためにラディエイドを行なおう
南国のそよ風と一緒に

ここアフリカにも
問題はある
貧困や汚職や
エイズや犯罪
ノルウェーは僕たちを助けてくれた
僕たちに、どうすればいいか教えてくれた
今こそ恩返しをする機会だ

(コーラス繰り返し)

ラディエイドに参加しよう
イエス!と言おう
アフリカのストーブをノルウェーに送ろう

ラディエイドに参加しよう
イエス!と言おう
アフリカのストーブをノルウェーに送ろう

ラディエイドに参加しよう
ラディエイドにイエス!と言おう
 
 【関連サイト】
ラディエイドHP
チャリティレコード小史(貴重な写真付き!)

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1 件のコメント:

  1. 「レイドエイド」のHPをじっくり読んでみたら、思ったより奥が深かったので、紹介します。

    *****

    アフリカに住む人が皆、『アフリカ・フォー・ノルウェー』のビデオを見たら、そして、これ以外にノルウェーに関する情報が全くないとしたら、ノルウェーのことをどう思うでしょうか?

    アフリカと聞いて、何を思い浮かべますか? 飢餓、貧困、犯罪、エイズ? それも仕方がないことです。募金運動やメディアで耳にするのは、概してそういうことなのですから。

    募金運動で普通目にするのは、可哀想なアフリカの子供たちの姿です。飢餓や貧困は厄介な問題であり、対応が必要ですし、このような映像は人々の心を一時的に捉えることが出来ます。しかし、私たちが心配しているのは、目に見える改善が一向にないことから、多くの人々が諦めてしまうことです。アフリカは、単に、与える、さもなければ諦める、といったものであってはならないのです。

    実は、アフリカ諸国には数多くの前向きな変化があります。私たちは、これらの前向きな変化を周知させたいと思っています。アフリカが抱える問題を単純に説明してしまう現状を、私たちは変える必要があるのです。複雑な問題について私たち自身を教育し、西洋諸国がアフリカの発展にとって、どのような悪影響を与えているかに、もっと焦点を当てる必要があるのです。世界が直面する問題を提起したいのなら、知識と敬意に則って行う必要があるのです。

    私たちが望むこと。

    1. 募金活動は対象を不当に扱うステレオタイプに基づくべきではない。
      
    世界で起こっていることの本当の変化ではなく、悲しい写真ばかり目にしたら、私たちの殆どはただうんざりしてしまいます。

    2. 学校、テレビ、メディアは、世界の出来事について正しい情報を提供する。

    私たちは細やかなニュアンスを求めます。危機や貧困やエイズだけでなく、アフリカその他の発展途上国における前向きな変化について知りたいのです。西洋諸国が発展途上国に対して、どんな悪影響を与えているかに、もっと注目しなければなりません。

    3. メディアはもっと敬意を払うべきだ。

    メディアは報道に当たって、もっと倫理的に振舞うべきです。飢え死にしかけている白人の赤ちゃんの写真を、許可なしに掲載するでしょうか? ジャーナリストは自国で報道する時に守るのと同じ規則を、世界の他の場所で報道する時にも守らなければなりません。

    4. 援助は「善意」ではなく、真のニーズに基づくべきだ。

    援助は全体像のほんの一部でしかありません。協力し、投資し、また貧しい国の発展の邪魔となっている構造を変える必要があります。援助が唯一の回答ではないのです。

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