ファーストフードレストランというと、薄利多売。売り上げの量で勝負するためには、出来るだけ多くの人に来てもらう必要がある。そのため、ファーストフードレストランの広告は、家族層を狙った毒にも薬にもならないものになりがち。勿論、話題になるに越したことはないが、せいぜい登場人物のセリフとか、テーマソングに工夫を凝らす程度。政治批判なんてもってのほか。
ところが、ナンドーズは次から次へとやるのである。タイムリーで、ユーモラスで、ウィットの効いた政治批判を。大統領だろうと、有力政治家だろうと、怖いものなし!
今回槍玉に上がったのは、ジンバブエのロバート・ムガベ(Robert Mugabe)大統領。題して、「最後の独裁者」(The Last Dictator Standing)。
晩餐会用に準備されたテーブルの傍で、ムガベらしい人物が誰をどこに座らせるべきか、席順を考えている。ふと脳裏をよぎるのは、長年の友人たちと過ごした楽しい日々。。。
豪邸の庭で、カダフィと水鉄砲で遊んだ。(カダフィが手にしているのは、黄金のカラシニコフ。)
毛沢東とカラオケで歌いまくった。
浜辺でサダム・フセインと、大の字になって砂遊びをした。
PWブアタ(1980年代の南ア大統領)とブランコに乗った。
イディ・アミンとは、戦車の上で「タイタニックごっこ」をした。。。
流れるのはメリー・ホプキン(Mary Hopkin)のヒット曲「悲しき天使」(Those Were the Days, My Friend)。
Those were the days, my friend回想場面が終わり、招待客が誰も来なかったテーブルにひとり寂しく座るムガベ。かつての「独裁者仲間」たちは、もうこの世にいない。。。
We thought they'd never end
We'd sing and dance forever and a day
We'd live the life we choose
We'd fight and never lose
For we were young and sure to have our way
友よ。
いつまでも続くと思っていたあの頃。
朝から晩まで、歌って踊れると思っていた。
好きなように生きることができると思っていた。
闘いに決して負けることがないと思っていた。
若くて、なんでも思い通りになると信じていたから。
そこで、ナレーション。
「一年のこの時期、ひとりで食事なんてだめ。
ナンドーズの6人用パックをお買い求めください。」
(This time of year, no one should have to eat alone. So get Nando's 6-pack meal for six.)
南アフリカは12月初旬から1月初旬まで、夏の休暇シーズン。クリスマス、お正月など、家族や友人と時間を過ごす時。それにひっかけたコマーシャルだった。
人名は一切出てこないし、モデルとなった独裁者たちに俳優が似ているわけでもないが、髭とか、髪型とか、服装などから大方の想像がつくようになっている。
狙い通り、ムガベ支持者はカンカン。法的にも、ムガベ大統領を「侮辱」するのは「犯罪」であるお国柄。ナンドーズでは抗議を受けて、コマーシャルの放映中止を決定したが、それはこれまでもやってきたこと。
既に、YouTubeでは100万回以上クリックされた。世界のメディアに取り上げられ、フェイスブックでのシェアも続いている。宣伝の目的は十分達しているのである。
ナンドーズにまたもや脱帽!
関連記事:
南アフリカ民主主義の死 (2011年11月23日)
お土産に 100兆ドル札はいかが? ジンバブエ (2011年1月5日)
快進撃 もう止まらないkulula.com (2010年6月17日)
0 件のコメント:
コメントを投稿