2013/05/04

法廷通訳が見つからなくて、起訴取り下げ

2010年11月、ケープタウン行のバスから、サイのツノ12本が見つかった。西ケープ州での道路検問で引っかかったのだ。そのうちの一本は大きすぎてスーツケースに収まらず、半分に切られていた。サイのツノの押収量としては、史上最大である。

逮捕されたのは25歳と32歳のベトナム人男性。

サイのツノは伝統的には媚薬、最近はガン二日酔いの特効薬などとして、中国ベトナムで重宝されている。主な成分は爪や髪と同じケラチン。勿論、医学的効用はない。しかし、迷信のために乱獲が進み、サイは絶滅の危機にある。ワシントン条約で、サイのツノの取り引きは禁止されているから、殆どが密猟・密輸である。

南アフリカは他のアフリカ諸国よりサイの保護に力を入れてきたせいで、世界のサイの73%が南アフリカに生息している。しかし、近隣諸国で取りつくされた感があるせいか、それとも南アフリカで密猟がしやすくなったのか、またはその両方の理由からか、近年、南アフリカでのサイの密猟が増加している。

昨年一年間で、全国で668頭のサイが密猟により命を落とした。今年に入って4か月で、既に70頭以上が殺されている。

サイが殺されるのは、密猟だけではない。「猛獣狩り」ファン相手の合法的狩猟枠を、ツノ獲得に悪用するケースも多い。タイ人の売春婦などを「ハンター」として申請し、合法枠を使って狩猟許可を取り、ツノを取るために殺すのである(サイを「合法的」に「密猟」する方法)。絶滅の危機にある動物に、何故狩猟枠が割り当てられるのか、南ア政府の行動は不可解だ。

そこまでして、こぞってサイ殺害に乗り出すのは、需要があることに加え、逮捕される確立が低く、儲けが莫大だから。

サイの未来に関して暗いニュースが続く中、このベトナム人逮捕は珍しい朗報だった。

ところが、4月29日のことだ。30か月の拘留後、ふたりは釈放された。それも、法廷通訳が見つからない、という理由で。

2013/04/27

重大犯罪の犯人検挙率目標56.5% 相変わらず情けない南ア警察

南アフリカ警察(SAPS: South African Police Service)が今後3年間の「crime detection target」を発表した。「crime detection」というのは、「犯罪捜査」のこと。その「ターゲット」(目標)というのだから、「犯罪解決目標」つまり「犯人検挙率目標」。

3年後に「重大犯罪」(serious crime)の56.5%を解決することを目指すという。えっ? つまり、4割以上は最初から解決する気がないってこと? 基づく数字は当然のことながら、警察が把握しているものだけ(日本の警察庁風にいえば「認知件数」)。例えば、レイプなどの性犯罪は、被害者が泣き寝入りして届けないケースもしばしば。だから、捕まらない犯人の数は統計に表れるよりずっと多いはずだ。

南ア警察のいう「重大犯罪」は、5つに分けられる。

2013/04/15

金儲けに恥も外聞もなし マンデラ家の醜態

ネルソン・マンデラは今年の7月18日、95歳の誕生日を迎える。10年前くらいから認知症気味と言われており、今では人前に出ることはない。国民が最後に肉声を聞いてから、もう何年にもなる。

残念ながら、先はそれほど長くないだろう。マンデラを敬愛する世界中の人々が、悲しい日の到来を待ち受けながら、心の準備をしている。

ところが、マンデラの身内にとって、マンデラの生死は全く別の意味を持つ。

マンデラは「金のなる木」なのである。そうは思っていない家族も中にはいるかもしれないが、大っぴらにマンデラを金儲けの道具に使っている輩(やから)が存在することも事実だ。

その動きは前々からあった。しかし、「マンデラが生きているうちに、マンデラの名前を可能な限り利用して儲けたい」という焦りからか、最近やり方が派手になってきた。

2013/04/10

映画『ファニー・フリーのロボラ』(Fanie Fourie's Lobola)

『ファニー・フリーのロボラ』(Fanie Fourie' Lobola)

監督
ヘンク・プレトリウス(Henk Pretorius)

主演
エドゥアン・ファンヤースフェルト(Eduan van Jaarsveldt)
ゼツ・ドロモ(Zethu Dlomo)

2013年 南アフリカ作品







ファニー・フリー(Fanie Fourie)はさえないアフリカーナ男性。30代前半だろうか。いい人っぽいが、小太りで、ハンサムでもなく、世間がマトモと認める職もない。プレトリアの高級住宅街に、寡婦の母親とふたり暮らし。優男の兄はアフリカーナ社会の人気歌手。

ファニーは自称「パネル・アーチスト」。ボンコツ車を改造して、アフリカの動物に似せた自動車を、自宅の仕事場で一台一台手作りしている。「パネル・ビーター」=「自動車の板金工(ばんきんこう)」、つまり「職人」ではなく「芸術家」だという自負がある。

とはいっても、ファニーの夢や情熱を理解してくれる人は周りにいない。クラブで知り合った女の子はファニーのキンキラ車「ライオン」を見て、尻込みしてしまう。別の女の子を仕事場に案内し、「わかって欲しい」とオリジナルカー作りの夢を語るが、「私はベンツのスポーツカーが好き」とニベもない。ファニーのお母さんは、愛する息子が「マトモ」な仕事に就き、アフリカーナの女性と結婚して欲しい、と心に願っている。親しい友達もいないようだ。

ファニーを笑わないのは、住込みの庭師で、車作りの助手ペトルス(Petrus)だけ。

ファニー自身、車作りの情熱を持ちつつも、周囲の反応に長年気を削がれてきたせいか、イマイチ自信がない。せっかく作った車を売る気配もない。尤も、ファニーの「作品」は巨大でド派手。個性的過ぎて、ファニーが属する保守的なアフリカーナ社会にウケルような車ではない。。。

一方のディンキー・マグバネ(Dinky Magubane)。プレトリア近くの貧しい黒人居住地に、父親とふたりで住む。子供時代の友だちの中で、たったひとりの大学出。起業家になるのが夢で、カジノに勤めながら起業資金を貯める日々。家でブラブラしている父親は、美人の愛娘が裕福な夫を見つけてくれることを願っている。

候補者はいる。金融業を営む、幼馴染のマンドラ(Mandla)だ。高いスーツを着込み、高級車を乗り回し、ディンキーのことは誰よりも理解していると自負しているが、「女を喜ばすには欲しいものを買い与えるのが一番」と信じている伝統的な考え方の持ち主で、経済的自立を目指すディンキーのことを実は全然わかっていない。

それぞれの生まれ育った環境で「はみ出し感」を持っていた、そんなファニーとディンキーが巡り合い、恋に落ちる。。。

2013/04/03

ボツワナでバッファローを追う(4)夕暮れ時の動物たち

草食動物が一日のうちで一番のんびりしているのが、夕暮れ時。日中、アフリカの強い日差しの中で、 草や葉を食べ、お昼寝し、ゴロゴロし、また草を食べ、お昼寝し、ゴロゴロし・・・を繰り返す。そして、心身の休まり度が絶頂に達するのが、暑さも弱まり、過ごしやすい夕暮れ時なのだろう。もう少し暗くなり、ライオンなどに襲われる危険が出てくるまでの、安らぎのヒトトキ。

サブティのライオン