残念ながら、先はそれほど長くないだろう。マンデラを敬愛する世界中の人々が、悲しい日の到来を待ち受けながら、心の準備をしている。
ところが、マンデラの身内にとって、マンデラの生死は全く別の意味を持つ。
マンデラは「金のなる木」なのである。そうは思っていない家族も中にはいるかもしれないが、大っぴらにマンデラを金儲けの道具に使っている輩(やから)が存在することも事実だ。
その動きは前々からあった。しかし、「マンデラが生きているうちに、マンデラの名前を可能な限り利用して儲けたい」という焦りからか、最近やり方が派手になってきた。
例えば・・・
「ハウス・オブ・マンデラ・ワイン」(The House of Mandela Wines)。「マンデラ家のワイン」を始めたのは、マンデラの最初の妻エヴェリン(Evelyn)の娘マカジウェ(Makaziwe)と、その娘のツクウィニ(Tukuwini)。ホームページにはご丁寧にもマンデラ家の家系図まで載っているが、マンデラの妻としてはエヴェリンしか記載されていない。勿論、子供や孫も、エヴェリン系だけ。勿論、マンデラ家はワイン作りとは何の関係もないから、マンデラの名前を使った金儲け手段に過ぎないことは一目瞭然。アメリカで今年の2月、大々的に売り出された。
ふたりめの妻、ウィニーの一家も負けてはいない。『ビーイング・マンデラ』(Being Mandela)で逆襲! 「マンデラの名前を背負って」みたいな題名のリアリティテレビ(reality TV)番組だ。ウィニーの娘ゼナニ(Zenani)の娘たち、ザマスワジ・ドラミニ(Zamaswazi Dlamini)とザジウェ・マナウェイ(Zaziwe Manaway)が「主人公」。お婆ちゃんのウィニーも登場し、子育てや家族の会話など、「普段着のマンデラ家」を見せる。ザマスワジとザジウェは、ふたりともアメリカ育ち。この番組も、2月にアメリカで放映が開始されたばかり。南アでも放映されるらしい。
ゼナニの子供たち、ザジウェ(1977年生)、ザマスワティ(1979年生)、ジンフレ(Zinhle。1980年生)、ゾズコ(Zozuko。1992年生)の4人は共同で、洋服のレーベルも始めた。その名も「自由への長い道」(Long Walk to Freedom)。世界的ベストセラーになった、マンデラの自伝の題名だ。マンデラのサイン柄野球帽とか、マンデラの顔写真入りTシャツとかがインターネットで買える。ここまで来ると、恥も外聞も誇りもあったもんじゃない。
そして、ついに、仲が悪いといわれているエヴェリン系とウィニー系が、欲には勝てなかったのか、最近、共同戦線を張った。マカジウェとゼナニがジョージ・ビゾス(George Bizos)、トーキョー・セクワレ(Tokyo Sexwale)、バリー・チュエネ(Bally Chuene)の3人を、マンデラに関係する投資会社2社(Harmonieux Investment HoldingsとMagnifique Investment Holdings)の取締役会から除名するよう、法廷に訴え出たのだ。
ジョージ・ビゾズはアパルトヘイト時代から活躍する高名な人権弁護士。マンデラやウォルター・シスル(Walter Sisulu)をはじめとする、政治活動家の弁護をして来た。「真実と和解委員会」(TRC:Truth and Reconciliation Commission)では、スティーヴ・ビコ(Steve Biko)やクリス・ハーニ(Chris Hani)の家族の代理人を務めた。
トーキョー・セクワレはロベン島に13年収容された経験を持つ、元カリスマ活動家で、現職の大臣。バリー・チュエネはマンデラの元弁護士だ。
3人とも、マンデラ本人に指名され、投資会社の役員になった。
マンデラの娘たちは、何故この3人を除名したいのか? 推測されている理由はふたつある。
ひとつは、マンデラの信託財産に保管されている、2000万ランド(2億円)以上の資金に手をつけたいから。
もうひとつの理由は、マンデラアートを自由に複製したいから。
マンデラによるスケッチを基にした「リトグラフ」に、マンデラ自身がサインし、販売されているのだが、元々は、資金を集めて、世の中のためになることに使おうというもの。
マンデラが死んでしまったら、当然、自筆サインは無理。それでも、リトグラフの版が入手できれば大儲けが出来る。
きっとこの3人は、マンデラの子供たちが好き勝手なことをしようとするのを許さないのだろう。
「まだ生きている人の遺産を巡って争うなんて、愕然とした。」「(マンデラが)着ている服をはぎ取って、売りさばくようなものだ。」とは、マンデラ家の跡取りマンドラ(Mandla)の弁。
しかし、マンドラだって、足腰の立たない、とっくに引退宣言をしたマンデラを、選挙前に与党ANCの集会など公衆の場に引きずり出したりしてANCに貢献し、多分その見返りとして国会議員にしてもらったり、マンデラ家跡取りの地位を利用してビジネスで儲けたり、何年も前のことだが、マンデラ死亡報道権(?)を特定のテレビ局に売ろうとしたり・・・と褒められたものではない。
「95歳の誕生日は、マンデラの最後の誕生日になる」という思いが、マンデラ家の人々には強くあるのだろう。様々な金儲けイベントがマンデラ家の人間によって計画されている。
世界各地でのコンサート、パーティー、未発表資料を含むという限定版マンデラ本の出版、ボクシングの試合、サッカーの試合・・・。
情けないぞ、マンデラ一家!
皆さん、くれぐれも、こんな動きに踊らされないように。
(参考資料:2013年4月14日付「Sunday Times」など)
【関連HP】
Mandela House of Wines
Long Walk to Freedom Clothing
Nelson Mandela Art
Nelson Mandela Foundation
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