そのツノが媚薬として効果があると信じている人がいる限り、そして、大儲けをするために、サイが地上から消え去っても構わないと思う商売人が存在する限り、サイの未来は暗い。
今年に入って南アフリカでは、既に222頭のサイが殺され、うち少なくとも60頭が、「ハンター」による「合法的」な殺しと推定されている。州レベルの担当者が、シンジケートと組んで、「狩猟許可証」を発行しているのである。
例えば、最近摘発されたタイ人シンジケート。
まず、シンジケートのナンバー2、チェムロン・レムトングタイ(Chemlong Lemtongthai。43歳)がタイ航空のマネージャー、ジョン・オリヴィエ(John Olivier)に注文を出す。オリヴィエは北西州ブリッツ(Brits)で野生動物の取引を商売とするマルナス・ステイル(Marnus Steyl)にコンタクト。ステイルが必要数のサイをオークションで落札したり、農場から購入したりし、自分の農場に移す。
ステイルは次に、レムトングタイの手下、プンピタック・チュンチョム(Punpitak Chunchom)に「ハンターが3人必要」などと伝える。チュンチョムはハウテン州ミッドランド(Midrand)のタイ人女性に、「ハンター」供給を要請。この女性はタイで、人身売買容疑で指名手配されているという。
「ハンター」として登場するのは、タイ人のストリッパーや売春婦たち。「ハンター」料金5000ランド(6万円)。彼女たちの手に、実際いくら渡されるかは不明。
女性たちはステイルの農場で、プロのハンターの手ほどきにより、静かな場所で1、2発ライフルを撃つ。後で問題が起きた場合、女性たちに「発砲した」と「真実の証言」をさせるためだ。女性たちがサイを目にすることは殆どなく、「狩猟」が終わるまで農場でもてなされる。
何故、こんな面倒なことをするのだろうか。
実は、狩猟許可証を得るのと、ワシントン条約に従って輸出入するのに、「ハンター」のパスポートと指紋が必要なのだ。同じ人間を何度も使うと怪しまれるので、その都度違った「ハンター」が要るのである。
「狩猟」は、シンジケートに買収された州の担当職員が「監督」する。職員は更に、殺されたサイのツノを測定し、埋め込まれているマイクロチップをスキャンし、詳細を公的記録書に記入。ツノを切った後、体は近くの町フライバーグ(Vryburg)の肉屋へ。ミンチにされた肉はソーセージやハンバーグとして売られる。
ツノは剥製屋が、あたかも狩猟のトロフィーのように、台に備え付ける。正式の書類と共に、無事南アを出国し、アジアまで持ち込めばこっちのもの。ブラックマーケットで売りさばかれる。
レムトングタイはツノ1キロ当たり6万5000ランド(7万8000円)で購入し、5万5000米ドル(38万ランド)で売る。ツノは1本平均5キロ。オリヴィエを通じて既に40本を獲得しているから、6000万ランド(7億2000万円)の儲けを上げたことになる。これ以外にも、別ルートを通じて、ツノを入手した可能性もある。
今回逮捕されたのは、50頭以上の大量注文を受けたオリヴィエが怖気づき、警察に通報したため。注文主であるサイサヴァン貿易会社(Saysavang Trading Export-Import Company)が、ツノを「収穫」するのが目的で、サイを虐殺しようとしていることに気づいたから、だという。
サイサヴァン社はラオスにあり、オーナーはヴェトナム在住のヴィサイ・ケオヴァン(Vixay Keovang)。別名、ヴィサイ・サイサヴァン(Vixay Saysavang)。逮捕されたレムトングタイのボスだ。
同社は実験用サルをおおっぴらに中国へ輸出している。また、2009年7月には、ケニアで象牙とサイのツノを違法取引した容疑がある。
南ア全国で発行されるサイの狩猟許可証は、年200以上。一体、このうち何頭のサイが、ツノ目当てで殺され、「媚薬」になってしまうのだろうか。
殺されたサイと偽ハンター 『メール&ガーディアン』より |
(参考資料:2011年7月22日付「Mail & Guardian」など)
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