2011/08/05

当世南ア事情 届かぬ郵便物

「Inspired by Japan」という国際版画展を企画している。作品を売って、震災義援金を募るのが目的だ。

アメリカ合衆国オレゴン州に本部がある、版画家の交流団体「ばれんフォーラム」(Baren Forum)の発案。「ばれん」って、小学校などで版画を摺るのに使った、あの懐かしい、丸いやつです。

このプロジェクトには世界9か国から約60人の版画家が参加し、浮世絵のふるさと、日本のためにひと肌脱ごう!とオリジナル作品を制作した。(詳細はこちら。)

ジョハネスバーグでは、8月6日に大々的にオープニング!・・・の予定だったが、9月に延期になった。なにしろ肝心の版画が届かないのである。

郵便局員による盗難がひどいし、たとえ盗まれなくても、無能のためいつ到着するかわからないので、DHLやFedexなどの宅配便を使い、且つ日本研究センターへ送るようしつこくお願いしておいたのにも拘わらず、アメリカのオーガナイザーが、オレゴン州の田舎の郵便局で、「速達だから3日で着くし、追跡できる」と言われたのをウノミにして、つい安い郵便局経由で、しかも南アの郵便局の私書箱に送ってしまったのだ。

アパルトヘイトが終わって、良くなったことも悪くなったこともあるが、これは後者の一例。海外からの小包、銀行明細書、クレジットカードなど、書留扱いにしないと、まず届かなくなった。国内便で盗難が少ないのは、苦情が出やすいためだろう。

もう10年くらい前だろうか、NHK『クローズアップ現代』南ア版のような番組で、某郵便局の郵便物仕分け室に隠しカメラを設置したことがあった。クリスマス直前の、海外からプレゼントが沢山届く時期である。

のんきに夕食を頬張っていた国民の目の前に映し出されたのは、はしゃぎながら次から次へと小包を開けていく郵便局職員数名の姿。包装をバリバリ破り、気に入ったものは自分のものに。気に入らなかったものはゴミ扱い。。。

日本でこんなことがあったら、当の職員は逮捕され、上司のクビがとび、総務大臣が記者会見で頭を下げる・・・くらいは期待できそうだが、南アフリカでは翌日の新聞ダネになっただけで終わった。

また数年前、アマゾンUKが「盗難があまりに多いため、南アへの発送は郵便局を使わない」ことを決定した。消費者が注文してお金を払ったのに商品が届かなければ、再発送はアマゾンの責任だからだ。高い宅配便を使えば、送料を払うのは消費者である。

さすがにこれには非難ゴウゴウ。アマゾンUKは間もなく決定撤回。大騒ぎの功があってか、アマゾンからの注文品は概ね届くようになった。しかし、航空便なのに、イギリスで発送されてから手元に届くまで、一か月くらいかかる。

私は海外から、書留扱いでない小包が届くことをほぼあきらめている。自分から出す時は、国内でも書留にする。小切手が入っていることを疑われて、盗まれることがあるからだ。

郵便で送った小切手を盗まれた友人がいる。翌月、その小切手が銀行経由で戻って来たら、「受取人」も「支払額」も変更してあったのだ。どんなワザを使うのか、ボールペンでの記載が見事に改ざんされていた。あまりの出来栄えに、思わずうなった。勿論、友人の銀行口座からは、多額の引き落とし。

しかし、書留でも油断は出来ない。

例えば、「南部アフリカ外国特派員協会」(FCA: Foreign Correspondents' Association of Southern Africa)では、去年、プレスカード(記者証)を紙からプラスチック製に変更。クレジットカードと間違われて盗まれることを懸念し、発送は書留で行った。

それでも、受け取らなかった人がかなりいたらしい。私もそのひとり。

届かなかったので再送してもらったところ、今度は書留到着の連絡が来た。喜んで郵便局の窓口へ行ったら、「ない」という。それどころか、職員のひとりが「あなた自身が先週取りに来た。僕ははっきりと覚えている。」(!?!)

・・・絶句。私には一卵性双生児の姉妹も、クローン人間もいない!。。。(と思う。)

南ア郵便局は、90%の郵便物が目的地に届いていると、広告で大々的に自慢している。裏を返せば、1割は届いていないということ。しかも、これは「届いていない」と苦情を申し立てた人の統計だろうから、小包や封書が送られたのに届かなかったことを知らない人や、知っていても届けなかった人は数に入らない。実際届いていない郵便物は、1割どころではないのではないか。

南ア郵便局のスローガンは、「We deliver, whatever it takes」。「どんなことをしても配達する」って、どこに配達していることやら。。。



さて、冒頭の版画。書留扱いなのでそのうち届くかもしれないが、そのうち、では大いに困る。そこで、アメリカに連絡し、宅急便で再送してもらった。「300ドルもかかった」とオーガナイザーはブツブツ言っていたけど。うまくいけば来週届くだろう。

展覧会は9月13日から30日の予定。9月17日に、小沢駐南ア大使を招いてのオープニングパーティーを行います。

0 件のコメント:

コメントを投稿