2017/12/12

あなたの世界観を変える200人の女性たち

2017年2月、ニュージーランドの出版社から長いメールが入った。

「男女不平等をテーマにしたプロジェクトを企画している。世界中の女性200人を取材し、400ページの本として出版する予定。また、写真とオーディオの展覧会を世界中で開催する。更に、収益の少なくとも10%を女性の保護や人権拡大に貢献している団体に寄付する。何百万人もの女性の生活を向上させ、世界中の男たちを啓蒙し、心を開かせる可能性があるプロジェクトだ。ついては、200人のひとりになってくれないか。OKなら、3月9日か10日にジョハネスバーグでインタビューしたい」という内容。

あまり表に出るのは好きではないので、テレビ出演(こんなところに日本人がいた、みたいな)などは全部断ってきたが、人権問題に長年関わってきた良心的な出版社であるし、世の中のためになりそうなプロジェクトなので、あまり深く考えず承諾する。普段まったく世の中に貢献していない身としては、せめてこのくらいのことでもしないとバチがあたろう。

メールに添付されていたPDFの説明書によると、「世界中の様々なバックグラウンドを持つ女性200人へのインタビューを基にした、画期的な本と国際的な展覧会」。

「様々なバックグラウンドを持つ女性」って・・・?

「有名な女性、無名な女性。華々しくもてはやされている女性、社会の周縁にいる女性。裕福な女性、貧乏な女性。黒、茶、赤、黄、白。逆境に打ち勝った女性、先頭に立つ女性。被害者と英雄。聖人と罪びと。あまりにも多くの女性たち、少女たちが基本的な自由や平等を求めていまだに戦っている今このときに、私たちを啓発し、鼓舞し、ポジティブな変化をもたらしてくれる女性たち。」

なぜ私なんぞに話が来たか不明だが、それなりの理由があるのだろう。「多様性」(diversity)に花を添えるくらいか。(「無名」の「黄色人種」代表?)

ジョハネスバーグのブティックホテルで行われたインタビューは、しどろもどろで散々。やっぱ苦手&慣れないことは気軽に引き受けない方が・・・とひたすら自戒。

次にインタビューされる女性が控室で待っていた。

あれっ? どこかで見た顔。

両足義足のオリンピック短距離走者、オスカー・ピストリアス(Oscar Pistorius)に愛娘を殺されたジューン・スティアンカンプ(June Steenkamp)さん! ちょうど手記を読んだばかりで、痛みと感動が胸に残っていたとき。しどろもどろに挨拶する。

ジューン・スティアンカンプさん

半年以上経ってインタビューのことをすっかり忘れたころ、南アの出版社から出来上がった本が送られてきた。

南ア版の表紙はアフリカの女性が多い

 200人のうち有名なのは、作家のイザベル・アエンデ(Isabel Allende)、環境活動家のヴァンダナ・シヴァ(Vandana Shiva)、女優のジリアン・アンダーソン(Gillian Anderson)、JFケネディの姪でアーニーの元妻のマリア・シュライヴァー(Maria Shrive)、米最高裁裁判官のルース・ギンスバーグ(Ruth Ginsburg)、化粧品メーカーのボビー・ブラウン(Bobbi Brown)、チンバンジー研究のジェーン・グダール(Jane Goodall)など。

ヴァンダナ・シヴァさんは2002年の世界環境サミット時、NHKドキュメンタリー制作のため1週間ずっと一緒に過ごした。懐かしい!

ヴァンダナ・シヴァさん

有名ではないものの、それぞれの分野で地道に活躍している女性たち。更に、苦労だけの人生を送って来たネパールのおばあさんなど、無名の女性たちもたくさん。

前書きによると、200人の選択にあたって最も重視したのは「authenticity」(ホンモノさ)と「diversity」(多様性)という。

また、故意か偶然か、ネルソン・マンデラゆかりの女性が多い。

2番目の夫人のウィニー・マディキゼラ=マンデラ(Winnie Madikizala-Mandela)、3番目の夫人のグラサ・マシェル(Graça Machel)、ウィニーの娘ゼナニ(Zenani)の娘ザマスワジ・ドラミニ=マンデラ(Zamaswazi Dlamini-Mandela)、やはりウィニーの娘ジンジ(Zindzi)の娘ゾレカ・マンデラ(Zoleka Mandela)、ネルソン・マンデラ財団のサーム・フェンター(Sahm Venter)、秘書のゼルダ・ラフランシ(Zelda la Grange。拙訳では著者の意向で英語読みの「ラグレインジ」と表記したが、訳者とは言いながらも違和感がある。しっくりくるのは「ラフランシ」)、盟友ジョー・スローボ(Joe Slovo)とルース・ファースト(Ruth First)の娘ジリアン・スローボ(Gillian Slovo)、親友デズモンド・ツツ(Desmond Tutu)の娘ムポ・ツツ・ファンフルト(Mpho Tutu van Furth)、それにマディバやゼルダの著作を邦訳した私・・・。気がついただけで9人も!

グラサ・マシェル夫人

10月後半、シドニーのオペラハウスで展覧会が始まった。展覧会はこの後、オークランド、ミュンヘン、ニューヨーク、スウェーデンなどを巡回する。

本の方は、ドイツ語とスウェーデン語の翻訳がすでに決まっているとのこと。

いきなり「動いてくれ」と言われ、困って太極拳の動きを始めた。琉球古武術保存振興会の衣装姿。

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