2011/01/05

お土産に100兆ドル札はいかが? ジンバブエ

100兆ドル札。1のあとにゼロが14ついたお札だ。全世界の人間に1000ドルずつ配っても、まだおつりが来る額である。このお札が最近、観光客のお土産として人気があるという。

ドルと言っても米ドルではなく、ジンバブエのお話。ムガベ大統領の悪政がたたって、経済が崩壊していた頃の名残り。とにかくものすごいインフレで、新しい紙幣を刷っても刷っても追いつかなかったのである。

初めてジンバブエを訪問したのは1993年。車で2週間国中をまわったが、どこに行っても活気があり良い国だった。国民の教育レベルが高く、南アフリカの通貨1ランドが1.5ジンバブエドル程度だった。

2001年に行った時は通貨の闇市場が出来ていた。政府の定める為替レートが現実を反映していないためだ。1ランドが50~60ドル。その直前に「外国人の身の安全は保証しない」と大統領自ら公言していた。

2004年には国内でガソリンが入手できないということで、南アからガソリンを積んで出かけた。1ランドが1200~1300ドル。インフレが急速に進み、刷りかけの50ドル札が2万ドル札として転用されていた。隅に「50」と印刷してある紙の上に「20000」を印刷したものだ。かつて紙幣を飾った動物も風景もなくがっかりしていたら、表の真ん中になんと!

「2004年12月31日まで有効」

の文字。生まれて初めて、有効期限付きの紙幣を手にした。発効日は2003年12月1日。

経済が完全に破綻し、南アに難民がなだれ込んだ2008年。世界最高を誇るインフレ率は数十億%。毎時間のように物価が上昇する。7億ドルで買えるのはパン一斤。商店の棚はからっぽ。ジンバブエ国民は「世界で最も貧しい億万長者」と自嘲した。

ジョハネスバーグの難民キャンプで出会った女性は、「大統領は国民にとって父親のようなもの。私たちのお父さんは子供のことを気にかけてくれない」と嘆いた。

発行された最高額の紙幣は「100禾予」(のぎへんに予。「ジョ」)。つまり、
100,000,000,000,000,000,000,000,000。
10の25乗。ゼロが26個。

その後、ゼロをいくつか取り去って通貨の切り下げをおこなったが、焼け石に水。ついにムガベ大統領は反対勢力の弾圧を緩め、野党との連立政権に踏み切る。

経済が安定し、活気が蘇りつつあるジンバブエ。観光客も戻って来た。そこで人気が出てきたのが冒頭のお札である。100兆ドル紙幣の相場は5ドルとのこと。余りの人気に、残り少なくなっているらしい。入手したい方はお早めに。

説経済が安定していた時代の20ドル札(表)

裏にはゾウとビクトリアの滝の図柄

有効期限付きの2万ドル札(表) 右下に50の文字


殺風景な裏側
(参考資料:2011年1月3日付「Mail & Guardian Online」など。写真は筆者による)

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