2011/12/17

南ア人「麻薬運び屋」、中国で処刑 最後まで無罪を主張

死刑になったジャニス・リンデン
「近いうちにまた会いに来てね。」

ジャニス・ブロンウィン・リンデン(Janice Bronwyn Linden)は南アフリカから訪ねてきた姉妹、ノマリズウィ・ムフロペ(Nomalizwi Mhlophe)さんとプリシラ・ムタラネ(Priscilla Mthalane)さんに懇願した。愛する家族との面会がやっと許され、喜びにふるえるジャニスが翌日処刑されることを知っていながらも、真実を伝えることが許されていなかったふたりは、心で泣きながら別れを告げた。

3年ぶりに会ったジャニスは中国の刑務所に入っていた。車椅子に座らせられ、手足を縛られていた。ガラス窓の向こうにいるため、体に触れることすらできなかった。10人以上の警察官が会話を一言も逃すまいと聞き耳をたてていた。第一言語であるズールー語ではなく、英語で喋ることを強要された。

一家はカソリック教徒なので、ジャニスに聖水をふりかけたかったが、許可されなかった。最後に一緒に写真を撮りたかったが、その願いも聞き入れられなかった。母親や叔父が前年亡くなったことを告げることすら許されなかった。

45分の面会時間に、一体どういうわけでジャニスが中国に行くことになったのか、聞くこともできなかった。

ジャニスが「ジョハネスバーグに働きに行く」と、故郷クワズールーナタール州を去ったのは2008年。

2009年9月、南ア政府から連絡を受ける。ジャニスが中国で逮捕されたというのである。

ジャニスが広州白雲国際空港で逮捕されたのは、その1年も前のことだった。荷物から3キロの覚醒剤が見つかったのだ。

罪を認めれば終身刑と言われたが、ジャニスは一貫して無罪を主張した。

明るく社交的で、人助けが好きな女性だったという。

ジャニスの甥ンタンド・ムタラネ(Ntando Mthalane)さんは「終身刑ならともかく、3キロで死刑とは受け入れがたい」「選挙直前だったら、南ア政府は本腰を入れて干渉しただろう」、兄のラモン・ハンター(Ramon Hunter)さんは「南アフリカは中国の新たな植民地になってしまった」と、いずれも怒りと失望を隠せない。

一方、ジャニスが処刑された12月12日、バンコクの空港でノルババロ・ノバンダ(Nolubabalo Nobanda)が逮捕された。偽のドレッドロックス(ボブ・マーレーやラッキー・ドゥベの髪型ですね)に隠していた、1.5キロのコカインが見つかったのだ。まだ23歳。有罪になれば、この先20~30年、タイの刑務所で過ごすことになる。

国際関係協力省によると、運び屋容疑で外国の刑務所に収容されている南ア人は現在619人。これは自己申告に基づいた数字で、実際は1500人以上と推定されている。

空港の係官がノルババロ・ノバンダのドレッドロックスを取り外している映像から

(参考資料:2011年12月12日、13日、14日付「The Star」など)

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