2013/03/29

ボツワナでバッファローを追う(3)ツノの生え方、群れの種類

コンセッションを離れ、チョべ川に着いたところで、400頭の群れに出会った。(これまでの話は、「ボツワナでバッファローを追う(1)第一の難関」、「ボツワナでバッファローを追う(2)第二の難関」で。)

(こんなに沢山。。。あの苦労は一体何だったんだろう。。。)

バッファローはオスにもメスにも、ツノが生えている。でも、よく見ると生え方が微妙に違う。

オスのツノは左右が頭の真ん中でくっついているが、メスのツノは左右が離れているのだ。生後一か月位で、ツノが生える位置に小さい突起が現れ、2歳くらいまで上に向かって真っすぐ伸び、それから次第にカーブを描くようになる。ツノが伸びるのは6歳くらいまで。その後は太く、ゴツくなっていく。成人男子は頭の中央がふたつの山のように盛り上がり、太くてゴツゴツした立派なツノを持つ。成年女子の頭部は平たく見える。

(オスとメス。違いがわかりますか? 耳が可愛い。。。)

ツノの違いに気がつくと、群れに2種類あることがわかる。

オスだけの小さな群れ(2-15頭程度)と、オス、メス、子供の混ざった大きな群れ(30頭位から数百頭まで)だ。前者は「バッチェラーハード」(bachelor herd=独身男の群れ)、後者は「ブリーディングハード」(breeding herd=繁殖の群れ)と呼ばれる。

ブリーディングハードはいくつかの小さい群れ(30-50頭)から構成される。小さい群れは今所属している大きな群れから離れ、別の大きい群れに加わったりする。逆に、大きい群れがいくつかに分散してしまうこともある。しかし、ひとつひとつの小さい群れはいつも一緒にいて、何かに驚いて逃げたり、大きな群れからはぐれてしまっても、バラバラになることはまずない。

ブリーディングハードはよく動く。平均して一日5キロ程度。水や食料の条件によっては、数10キロ移動することもあるという。

ブリーディングハードの先頭に立つのは、オスと、道を良く知っている年増のメス。真ん中は女ざかりのメスと子供たち。後陣を司るのは、オスとその他の年増メス。左右はオスが守る。つまり、繁殖に重要なメスと弱い子供たちを中心にし、その他が回りを囲んでいるわけだ。

特定の個体が「ボス」として群れを支配することはないものの、ブリーディングハードでは上下関係を確立するための絶え間ない行為が行なわれる。「全体で一番偉い」というのではなく、「お前より俺の方が偉い」という相対的な上下関係だ。絶え間ない小競り合いだから、結構ストレスが溜まる。また、移動が多いので、ゆっくり食べる暇もない。そこで、体力が落ちたオスは群れを離れる。

群れを離れたオスが形成するのが、バッチェラーハードである。だが、「群れ」という言葉から連想されるより、ずっと緩い関係を保つ。ひとりでは危険だから数頭一緒にいるだけで、数日間とか、場合によっては数時間しか行動を共にしないこともある。

ブリーディングハードを離れたオスは、一日の大半を食べることと泥にまみれることに費やす。泥遊びには体を冷やすことと寄生虫を落とすことの二つの意味があるという。

体力を回復したオスはブリーディングハードに戻る。

以上はオカバンゴのバッファロー研究者、エミリー・ベニット(Emily Bennitt)博士による説明。同じボツワナでも、チョベ川周辺の群れは決まったテリトリーを持ち、もっと安定しているという。

エミリーさんのアドバイスを聞きながら群れを観察すると、確かにストレスが多そうである。優位を確立するための微妙なジェスチャーが、ここかしこで絶え間なく行なわれている。優位を確立するには、自分は動かず、相手を動かすのがコツ。ちょっと声で合図する、首で軽く撫でる程度に相手を押す、肩でぐいっと押す・・・など程度は様々だが、素人が期待するような、ツノとツノがぶつかり合う、激しい戦いはまずない。群れの「ボス」になれるわけでもないのに、命をかけた戦いを行うのは意味がない、とエミリーさん。それもそうだ。

夕方、群れを離れて別方向へ向かう一頭のオスの姿があった。バッチェラーハードでしばらく充電生活を送るのだろう。食べて、遊んで、寝て・・・と、そのままバッチェラーハードにいた方が気が楽そうだけど、子孫の繁栄を思うとそうも言っていられない。十分、体力を養って戻って来てください。

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