ところが、ついに、ズマの肖像画が! それも、南アフリカの現代アート画廊の最高峰「グッドマン・ギャラリー」(Goodman Gallery)に!
・・・でも、
やっぱりパロディだった。。。
題名は『The Spear』。「槍」である。銃のホルスターのようなものに、ペニスがぶらさがっている。ズマのだらしない女性関係批判? ズマのテーマソング「マシンガンを持って来い」にひっかけた? 与党「アフリカ民族会議」(ANC)が解放組織だった時代の軍事部門「ウムコントウェシズウェ」の英訳「Spear of the Nation」(民族の槍)から? 色々、考えさせる。
オリジナルはこちら。ロシアの革命ポスターだ。颯爽と立つのはレーニン。
ズマの肖像画はケープタンのアーチスト、ブレット・マレー(Brett Murray)の個展『Hail to the Thief II』(盗っ人、万歳 II)の一作品。政権に近い一部エリートの利権拡大を追求し、民衆の期待を裏切った与党ANCに対する批判シリーズである。だから、ズマだけがクローズアップされているわけではない。
また、「II」(2)というからには、「I」(1)もある。つまり、マレーにとっては、これまで取り組んで来たテーマの延長線上にある作品群。目新しいことを始めたわけではない。
しかし、ANCは過剰反応した。この絵が独立した作品ではなく、シリーズの一部であることや、ロシア革命との比較など、より大きな、知的な枠組みを通して見るべきことなど、彼らの思考能力のキャパシティを超えているのか。
「大統領を侮辱した!」「黒人男性はペニスが大きいという、人種差別的偏見の表れ!」と猛反撃。ANCはジョハネスバーグ高等裁判所に、作品の展示停止を求める訴えを起こしたが、却下される。
その数時間後。。。
ズマ支持者は大胆にも、白昼、マレーの作品をペンキで覆った!
表現の自由という基本的人権など、お構いなしである。アーチストは、文章や演説ではなく、作品で自己表現や政治・社会批判をするものなのに。。。
ひとりが赤ペンキで、頭部にバツ印(X)。二人目は頭部と陰部に黒ペンキ。
ふたりが逮捕された後、更に3人目が壁に「respect」(尊敬せよ)と書こうとしたが、「res」まで終えたところで逮捕された。
いつものことながら、ANCとその熱心な支持者は心が狭く、ユーモアのセンスがない。アパルトヘイトという、人権無視の政治体制と長年闘った組織にしては、悲しすぎる。
日常的にズマを風刺し、何度も訴訟されたことのある風刺漫画家「ザピロ」は早速、次の作品を新聞に発表。
「ブレット・マレーに謝罪の心をこめて。ズマ大統領には謝らないよ。尊敬されたいって?・・・されるようなことをやってみろ!」
ズマの頭には、例によってシャワー。HIV陽性の女性と性交し、レイプ容疑で訴訟された際、「エイズ防止策としてシャワーを浴びた」と裁判で発言して以来、ザピロの風刺画に登場するズマは、いつも頭にシャワーをつけている。
今回はペニスまでシャワー型。水の代わりに、「セックススキャンダル」「汚職」「温情主義」「エコヒイキ」が勢いよく噴出している。
ザピロのズマ風刺は続く。
ここは大統領府。吹き出しにはズマのセリフ。「4人の妻、22人の子供、庶子13人(あれ、14人だっけ?)、・・・それに無数の愛人を代弁して申し上げます。私は女たらしとして描写されたことに激怒しています!!」 大統領府の塔がペニス型になっている。
更に、パロディのパロディが続々登場。
ツノの位置に巨大なペニスをつけたサイが、「これで、こっちにも関心を向けてくれるかい?」 密猟が後絶たず、絶滅の危機に瀕しているサイの気持ちを代弁している。
自動車のショックアブソーバ(緩衝器)メーカー「ガブリエル」は、「ショックを与えるべきか、与えないべきか?」という見出しの広告を打ち出した。(見出しはシェークスピア作『ハムレット』の名セリフ「生きるべきか、死ぬべきか」(To be or not to be)のパロディ。)
「最も良く売れている、安全なショックアブソーバを装備するのは、あなたの民主的権利。だから、ガブリエルをお選びください。どのようなニーズ(そして好み)にでも対応できるショックを、誰の気に障ることもないお値段で提供します。」
マレーの絵でペニスが描かれていた位置には、更に大きな同社の製品。
この絵には、肩を張ったズマの傍に相好を崩したマンデラの姿。
「ズマのあそこは、本当はこんなに小さいんだ」と右手で示している。
これは、マンデラの自伝『自由への長い道』のパロディ。
原題『Long Walk to Freedom』の「ロング」が「シュロング」に。シュロングとはペニスを指す隠語。
マレーのズマ像は実物よりカッコよすぎるためか、こんなパロディも。
言われてみると、確かにズマは、ニンジャタートルに似ている。。。
遊び心ゼロ、批判を受け入れる心の大きさゼロの与党ANCだが、南アフリカの人々はそれを笑って受け止めている。
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