2013/05/28

『シャイニング・ガールズ』(The Shining Girls) アーサー・C・クラーク賞受賞作家ローレン・ビアカスの新作


うら若い女性を時間をかけて殺害し、内臓を取り出して殺害現場を飾り立てる(!?!)連続殺人犯。キラキラ輝く少女(題名の「シャイニング・ガールズ」の由来)の「輝きを止める」のが動機。(そんな訳のわからない理由で殺されるなんて、被害者は浮かばれないが。)

少女がまだ幼い頃に近づき、「また戻って来るから」と予告。20歳過ぎに再び姿を現し殺害。現場には以前の被害者から奪った小物(ライターとかベースボールカードとか)を置き去り、新たな被害者の小物を持ち去る。

そんな悠長な手順を踏んでいては、時間がかかって仕方がない。「連続殺人犯」と呼ばれるまでに、数十年かかってしまう!

心配ご無用。

犯人はなんと、タイムトラベラーなのである!

その犯人ハーパー・カーティス(Harper Curtis)を、襲われて瀕死の重傷を負いながら、奇跡的に生き永らえた被害者、カービー・マズラチ(Kirby Mazrachi)が追う。。。

一章一章は短い。「ハーパー 1931年11月20日」「カービー 1974年7月18日」「ゾラ 1943年1月28日」・・・という風に、様々な人々がひとつひとつの章の主人公となっている。ハーパー、カービー、そして殺されていく女性たち。。。それぞれの人生を見事に描き上げる。

特に、被害者が主人公の章はやるせない。自分が狙われていることなど露知らず、それぞれの人生を一生懸命生きている。夫を戦争でなくし、女手一つで4人の子供を育てるゾラ、望まぬ妊娠をして困っている貧しい女性を助けるマーゴ、建築家のウィリー、麻薬中毒のキャサリン・・・。白人、黒人、韓国系など人種も様々。

それが、ある日、ある時、突然、幼い頃一度だけ会ったことのある男に、言葉に尽くせないほど残酷な方法で殺されてしまうのである。殺される側の立場から書かれているから、怖さひとしお。

とにかく、読ませる。

著者は2011年、前作『Zoo City』でアーサー・C・クラーク賞を受賞したローレン・ビアカス(Lauren Beukes)。1976年6月5日生まれの36歳。『Zoo City』の出版記念会に行った時の話は、以前このブログで紹介した。(ローレン・ビアカス、『ズー・シティ』でアーサー・C・クラーク賞受賞

その時、次の作品は「1992年の南アを舞台としたアパルトヘイトスリラー(apartheid thriller)」と言っていたのに、フタを開けてみたら舞台は1930年代から1990年代のシカゴ。???

メディアインタビューで、その理由を見つけた。

その時代の南アフリカを舞台にした場合、アパルトヘイトが避けて通れない。異なる時代に生きる様々な女性の様々な人生を描きたいのに、南アフリカではアパルトヘイトのインパクトが余りに強すぎて、他のことがかすんでしまう。だから、以前住んだことがあり、土地勘もあるシカゴを舞台にしたというのだ。

納得。

因みに、第1作の『Moxyland』はケープタウン、第2作の『Zoo City』はジョハネスバーグが舞台だった。

ところで、『Zoo City』の邦訳が、早川書房からやっと出るらしい。(邦訳は、著者名が英語読みになっています。)

『Zoo City』ローレン・ビュークス著/和爾桃子訳(ハヤカワ文庫)
ISBN:9784150119065

『The Shining Girls』は世界的ベストセラーになりそうな気配。既に、映画化の権利が売れてしまったとのこと。

お薦めです。

【関連記事】
ローレン・ビアカス、『ズー・シティ』でアーサー・C・クラーク賞受賞 (2011年6月1日)

【関連HP】
著者のHP Lauren Beukes @Books LIVE

2 件のコメント:

  1. アメリカでの発売が6月4日というのに、もう彼の地で大評判になっているらしい。レオナルド・ディカプリオの会社Appian WayとMRCの2社が共同で映画化の権利を獲得したそうな。
    http://www.hollywoodreporter.com/heat-vision/hot-book-shining-girls-acquired-561252
    テレビシリーズにすることを考えているとのこと。

    返信削除
  2. 匿名さんから「著者本人は自己HPのFAQで英語読み推奨」というご指摘をいただきました。http://pen.osada.co.za/2011/06/blog-post.html

    返信削除