4月27日、ローレン・ビアカス(Lauren Beukes)はロンドンにいた。第25回アーサー・C・クラーク賞(Arthur C Clarke Award)の授賞式に出席するためだ。ローレンのSF長編第2作目『ズー・シティ』(Zoo City)が最終候補6作品のひとつに選ばれたのだ。
受賞するとは思っていなかった。3日前、やはり最終選考まで残った英国SF協会賞(British Science Fiction Association Award)で、イアン・マクドナルド(Ian McDonald)の『The Dervish House』に敗れたばかり。今回もマクドナルドが受賞すると思い、受賞スピーチは用意していなかった。出版社に、「万が一」のことがあるから、と言われ、そういうものかしら、とホテルを出る直前に書きかけたものの、途中まで。
大体、幸先(さいさき)が悪かった。発表前のパーティーで、クリーム色のドレスに赤ワインをぶちまけてしまったのだ。このドレス、実はローレンのウェディングドレスだった。。。
受賞作に『ズー・シティ』の名前が呼ばれた時、全然頭の中に入って来なかった。一緒にいた弟が「わおー!!」と叫ぶ。何が何だかわからないまま、弟に押され檀上に上がった。書きかけのスピーチを椅子の上に忘れたまま。。。
ジョハネバーグでの出版記念会に行ってきた。
『ズー・シティ』を一言で表現すると、「ムーティ・ノワール」(Muti Noir)だという。アフリカの伝統的祈祷師が調合・処方する薬「ムーティ」と、虚無的退廃的暴力的な1940年代~50年代の犯罪映画やハードボイルド小説を表すのに使われる「ノワール」(フランス語で「黒」の意)を一緒にした造語だ。
舞台はジョハネスバーグ。麻薬、犯罪、売春婦の巣窟、ヒルブラウ(Hillbrow)地区。主人公は元ジャーナリスト、殺人の前科を持つジンジ・ディッセンバー(Zinzi December)。音楽プロデューサーの依頼で、失踪したポップスターの行方を探すことから事件は始まる。
・・・って、どこがSFなの? という疑問も、ごもっとも。
実は、あまりに面白そうなので、一部買ってしまいました。読み終わったらこのブログでご紹介します。
ローレンは1976年6月5日、ジョハネバーグ生まれ。元フリーランスジャーナリスト。夫、2歳半の娘とケープタウンに住む。イギリス人やアメリカ人なら「ビュークス」と英語読みしそうな苗字だが、アフリカーンス語で「ビアカス」と読む。SF長編第1作の『Moxyland』(2008)は未来のケープタウンが舞台。
第一世界と第三世界が同時に存在する南アフリカは、SFの舞台としてぴったりだという。アフリカ経済の中心として、アフリカ中から人々が集まる南アには、アフリカが凝縮している。「魔術」(magic)と「技術」(technology)の混在。それが南アフリカというローレン。
次の作品は、1992年の南アを舞台とした「アパルトヘイトスリラー」(apartheid thriller)とのこと。
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『シャイニング・ガールズ』(The Shining Girls) アーサー・C・クラーク賞受賞作家ローレン・ビアカスの新作 (2013年5月28日)
やっと邦訳が出るそうです。著者名が英語読みになっていました。
返信削除『Zoo City』
ローレン・ビュークス著/和爾桃子訳
早川書房
ISBN:9784150119065
2013年6月23日発売
本当はビアカスなんですね。でも著者本人は自己HPのFAQで英語読み推奨みたいです。
返信削除ttp://laurenbeukes.com/faq/
返信削除ありがとうございます! とすると、南ア人も本人の意向を尊重して、「ビューカス」と呼ぶべきかも。。。
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