2018/04/01

今週末はイースターウィークエンド ウサギ、タマゴ、ホットクロスバン・・・

今週末はイースターウィークエンド。イースターは「春分の日の後の、最初の満月の次の日曜日」。それを挟んだ金曜日と月曜日が南アフリカでは祝日なので、毎年イースターは4連休になる。夏休みのど真ん中にあたるクリスマスに次ぎ、家族で祝うキリスト教関係行事ナンバーツーである。

クリスマス同様、普通の家庭では宗教色は薄く、もっぱら子供を中心とした家庭行事になっている。クリスマスではクリスマスツリーを飾り、サンタクロース(南アではファーザー・クリスマス)が持って来たことになっているクリスマスプレゼントを交換するが、イースターではウサギ(イースターバニー)がタマゴ(イースターエッグ)を持って来る。色とりどりに彩色したタマゴを大人が事前に庭や家の中に隠し、子供たちが探すのが定番。また、イースター直前、店にはウサギやタマゴをかたどったチョコレートが並ぶ。

ゴディバのイースターバニー&イースターエッグセット

連休を利用して旅行に出かける家庭も多い。子供がいない勤め人にとっては、4連休というだけでありがたい。

日本語では「復活祭」という。金曜日にキリストが十字架にかけられ、3日後の日曜日に復活したことを祝うお祭りである。

英語の「イースター」(Easter)の語源は、ドイツの夜明けの女神「オスタラ」(Ôstara)に因む。古い英語では「アーアストラ」(Ēastre)または「エーアストラ」(Ēostre)。

1884年制作のオスタラ像

イギリスの僧侶・歴史家ビード(Bede)は8世紀に、「かつて4月にアーアストラのためのお祭りが盛大に開かれていたが、今ではすたれ、キリストの復活を祝う祭りに取って代わられてしまった」と著書に記している。

1902年の描かれた聖ビード像

ウサギはドイツのルター教徒の風習から。復活祭のころ、彩色された卵やキャンディやオモチャなどをかごに入れ、子供がいる家にやって来て、1年間行儀が良かったとか悪かったとか判決を下したことになっている。サンタクロースの初春版みたいだ。(しかし、なぜウサギがそんな大役を・・・?)

イースター絵はがき。ウサギが絵筆を握るのは難しいので、お絵描きは小人の仕事?

「ウサギはオスタラ信仰において聖なる動物だった」という説もあるが、根拠はまったくないとのこと。「ウサギは多産なので豊穣の象徴」という説もある。

イースター絵はがき(1907年)

タマゴはキリストが復活した後の空っぽの棺桶を象徴しているという。ただ、復活祭の前の40日間食事制限があり(今ではよっぽど信心深い人でもない限り遵守していないけれど)、タマゴを食べることが許されないので、たまってしまったタマゴをゆで卵にして食べたのでは?という説もある。個人的には、こっちの方が納得がいく。
各地のイースターエッグ(左からウクライナ、リトアニア、フランス)

南アの白人にはユダヤ系が多い。キリスト教のイースターとユダヤ教の「パスオーバー」(Passover)、または「ペサッシュ」(Pesach)は大抵の場合重なる。(パスオーバーはユダヤ暦ニサン月の15日目。「ペサッシュ」は英語読み。ヘブライ語読みでは「ペサハ」。日本語では「過越し祭」。)

ユダヤ人のエジプト脱出を祝うパスオーバーと、キリストの復活を祝うイースターが重なるのは偶然ではない。キリストはユダヤ人。有名な「最後の晩餐」はパスオーバーをお祝いする晩餐会だった。晩餐が木曜の夜。翌金曜日に十字架にかけられたわけだ。

ダヴィンチ『最後の晩餐』

イースター料理は国や地域によって異なる。南アではピクルス漬けにした魚、羊肉(ローストラム)、ホットクロスバンが一般的。

サンデー・タイムズ』(Sunday Times)紙によると、イースターにピクルス漬け魚を食べるのは世界でも南アフリカだけ。元々西ケープ州で始まり全国に広がった。なぜイースターにピクルス漬け魚を食べるのか、理由は不明。イースターウィークエンドに漁をしなかったため、冷蔵庫や冷凍庫がない時代、イースターの数日前に保存食として作ったのではないかという説がある。

イースター期間中、スーパーマーケットチェーン「チェッカーズ」(Checkers)では、普段の10倍のピクルス漬け魚が売れるという。また、食料・生活雑貨店「ウールワース」(Woolworths)では今年のイースター期間中、ピクルス漬け魚6万6千瓶を売るのが目標。1個ずつ積み重ねると10キロメートル弱の高さになるそうな。

ウィキペディアの「イースター料理」(Easter Food)リストに、「塩漬けニシン」(salted herring)が入っているから、ピクルス漬け魚を食べる地域が南ア以外にもあるのかもしれないが、どこで食べられているのかという説明はない。

イースターに羊を食べるのはユダヤ教の影響。旧約聖書の『出エジプト記』にこんな話が出てくる。イスラエル人奴隷解放を拒否したエジプトのファラオに腹を立てた神が、罰の1つとして各家庭の長男を殺すことにした。しかし、イスラエル人は羊を殺して、その血をドアに塗って印をつけたため、「死の天使」がイスラエル人の家を通り越し(パスオーバー)、息子たちの命が救われた。それを記念して、ユダヤ人たちはパスオーバーに羊肉を食べるようになった。そして、キリスト教に改宗したユダヤ人たちがその伝統を守り続け、ユダヤ人以外にも広まったという。

最後に、ホットクロスバン(hot cross bun)。上に十字架(クロス)が描かれた、暖かい(ホット)小型パン(バン)のこと。12世紀にイギリスの僧院で作られ始めたという説が有力。イギリス生まれだけあって、イースターにホットクロスバンを食べるのはイギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、南アフリカ、それにアメリカの一部。イギリスと旧大英帝国の植民地である。

大手スーパーマーケット姉妹チェーン「チェッカーズ」と「ショップライト」(Shoprite)では2017年、ホットクロスバンを作るのに300トン以上の小麦粉と180トン以上の果物(レーズンなど)を使ったという。「ウールワース」ではイースターの週、360万個のホットクロスバンを生産する。1列に並べると490キロメートルになる。

ホットクロスバン

そういえば、我が家ではこのイースター、ピクルス漬け魚もローストラムもホットクロスバンも食べてない。もう1日あるから、明日ホットクロスバンでも買って来よう。

【参考資料】
"What the heck do pickled fish, lamb & hot cross buns have to do with Easter?" Sunday Times(2018年3月28日)など多数

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