2010/07/22

本:ロベン島のサッカーリーグ

More Than Just A Game: Soccer v Apartheid
Chuch Korr, Marvin Close著(Collins, 2008)

単なるスポーツを超えたサッカーの素晴らしさを称える一例として、サッカーワールドカップ(W杯)中、Fifaが盛んに取り上げたロベン島のサッカーリーグ、マカナサッカー協会(Makana Football Association)。その種本がこれ。Fifa会長ブラッターが序文を寄せている。この本に基づき、ドキュメンタリーも制作された。

1960年代初頭、ケープタウンの沖の監獄島ロベン島に送られた政治犯を待っていたのは、栄養価の低いひどい食事と過酷な労働と看守の執拗ないじめ。殴る蹴るのみならず、炎天下、頭だけ出して地中に埋められ、小便をかけられた者もいた。リクリエーションなどもってのほか。

それを当局との忍耐強い交渉により、サッカーリーグを設立するのに成功。それに伴い、食事内容や看守との関係が向上。サッカー以外のリクリエーションも出来るようになったり、囚人の向上心が生まれ通信教育で高校や大学を卒業する者も続出する。

「黒人のスポーツ=サッカー」という通説に反し、地域によっては黒人もラグビーを楽しんでいたことや、マンデラなどの解放運動指導者とそれ以外の政治犯は、ロベン島で殆どコンタクトがなかったことなど、あまり知られられていない事実にも触れている。

気になるのは、ジェイコブ・ズマ現大統領をANC(アフリカ民族会議)のChairmanと紹介したり(正しくはPresident。Chairmanという職はない)、アパルトヘイト下の人種分類が事実と違っていたりするのなど、つまらない間違いが多いこと。内容が面白いだけに、文章が下手なのも残念だ。「Invictus」(邦題:インビクタス/負けざる者たち)の著者ジョン・カーリンが書いていたら、ずっと読み応えのあるものになっていただろう。

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