美しいヒロインが背が高くてハンサムな男性と恋に落ち、紆余曲折の末ハッピーエンド・・・と水戸黄門並にワンパターンなロマンス小説。全世界で20億ドル規模(推定)の、出版業界では大きな市場。北米で販売されるペーパーバックの半数以上が、ロマンス小説である。不況に強く、過去2年で売り上げが急増した。
南アフリカでロマンス小説と言えば、ミルズ&ブーン。1912年に創業されたイギリスの老舗で、1971年カナダのハーレクイン社に買収された。「ミルズ&ブーンが愛読書」と公言する人は殆どいないが(知性のなさを疑われる後ろめたさがある)、英系の若い女性に圧倒的な人気がある。
とは言え、主人公は概ねイギリス人女性。南アフリカ人、特に黒人には感情移入がしにくい。そこで、新市場開拓を狙った南アフリカの出版社クエラブックスが、ロマンス小説シリーズ発行に踏み切った。その名も、サファイヤプレス。伝統を重んじ、黒人であることに誇りを持つ、若い女性がターゲット。執筆者は7人。
著者のひとり、フェゼキレ・コキレ君は、東ケープ出身の19歳。第1作は「Wish Upon a Star」(星に願いを)。少女に結婚を強制する「ウクトゥワラ」(ukuthwala)というコサ族の風習がテーマ。強制結婚から逃げ出し、ケープタウンで編集者として成功したヒロインに過去がつきまとう、というストーリーらしい。「男女関係なんて経験したこともないくせに・・・」と姉妹たちにからかわれたものの、リサーチゼロで書いた小説の原稿料は1万2千ランド(約15万円)。授業料が払えず大学を中退したコキレ君は嬉しそうだ。
(参考資料:2010年8月22日付「Sunday Times」など)
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