11月5日の午前中、皇居で秋の大綬章親授式が行われ、16人が天皇陛下から勲章を手渡された。受章者は、桐花大綬章が扇千景(本名・林寛子)元参院議長の一人だけ。残りは旭日大綬章と瑞宝大綬章だ。
この16人の中には、外国人が3人いる。そのひとりが旭日大綬章(きょくじつだいじゅしょう)を受章したボールドウィン・シポ・ングバネ(Baldwin Sipho Ngubane)元駐日南ア大使(愛称ベン)。旭日大綬章というのは、外国人に与えられる最高の勲章であるらしい。では、ングバネ大使の受賞理由は何だったのだろうか。
総理府のHPによると、日本の勲章の最高位は大勲位菊花章(だいくんいきっかしょう)。菊花章頸飾(きっかしょうけいしょく)と菊花大綬章(きっかだいじゅしょう)の2種類がある。
その次に来るのが、桐花大綬章(とうかだいじゅしょう)。受賞対象は「旭日大綬章又は瑞宝大綬章(ずいほうだいじゅしょう)を授与されるべき功労より優れた功労のある方」。
いずれも舌を噛みそうな名前だが、いまいちよくわからない。
旭日大綬章は「功績の内容に着目し、顕著な功績を挙げた方」に与えられる旭日章の最高位、瑞宝大綬章は「公務等に長年にわたり従事し、成績を挙げた方」に与えられる瑞宝章の最高位。旭日、瑞宝とも「大綬章」の後、「重光章」(じゅうこうしょう)、「中綬章」(ちゅうじゅしょう)、「小綬章」(しょうじゅしょう)、「双光章」(そうこうしょう)、「単光章」(たんこうしょう)と続く。旭日、瑞宝以外に文化勲章とか宝冠章とかある。
では、瑞宝章が公務員や政治家で、旭日章がそれ以外ということなのだろうか。
受賞者の顔ぶれ、経歴を見るとそうも言えない。今回、旭日大綬章を受賞したのは、元国家公安委員長、元最高裁判所判事、元防災担当大臣、元農林水産大臣、元法務大臣、元環境庁長官、元通産大臣・自治大臣、元科学技術担当大臣、元郵政大臣、公明党元委員長、それに日本テレビ会長、NTT元社長。公務員と政治家が殆どなのだ。
平成15年5月20日に閣議了解を得た「褒章受章者の選考手続について」という文書によると、「衆議院議長、参議院議長、国立国会図書館長、最高裁判所長官、内閣総理大臣、各省大臣、会計検査院長、人事院総裁、宮内庁長官及び内閣府に置かれる外局の長は、春秋褒章候補者を内閣総理大臣に推薦するものとする。」とある。
とすると、ングバネ大使の場合、外務省の推薦なのだろう。
ングバネ大使は、1941年10月22日生まれ。ラテン語の教師を2年務めた後、1971年に医師の資格を取る。1977年にインカタ自由党(IFP)の中央委員会メンバーとなり、第1回1994年の民主総選挙後、芸術文化科学技術相、クワズールーナタール州知事、駐日大使などを歴任し、現南ア国営放送(SABC)会長。
駐日大使時代の功績が認められての叙勲だろう。今年4月27日に緒方貞子元国連難民高等弁務官、現JICA会長が南アへの支援活動に功績のあった外国人に贈られるO.R.タンボ勲章を受章したことへのお返し、という見方もある。南アが地上デジタル放送日本方式を採用していれば、そのロビー活動の評価も考慮されたに違いないが。(ングバネ氏がこの件に関し総務省高官に会ったことは「メール&ガーディアン」紙などで叩かれており、「私は腐敗していない」と反論している。)
ともあれ、5日夜、ANAインターコンチネンタルホテルで、南ア大使館主催の祝賀レセプションが開催され、約120人の来客が受勲を祝った。
ところで、平成15年から叙勲の「一般推薦制度」が開始されたそうだ。「人目につきにくい分野において真に功労のある人や多数の分野で活躍し功労のある人などを春秋叙勲の候補者として把握するため」とのこと。対象となるのは、「国家又は公共に対し功労のある人(おおむね20年以上活動)で次の(1)又は(2)に該当する人」。
(1)70歳以上の人
(2)55歳以上の人で「精神的肉体的に著しく労苦の多い環境において業務に精励した人」又は「人目につきにくい分野で多年にわたり業務に精励した人」。
「国家又は公共に対し功労のある人」とは、極端に曖昧な表現。70歳以上で、政界とか財界とか官僚にコネがある人は誰でも対象になりそう。但し、「自分自身や二親等内の親族を推薦することはできません」と明記してあるので、勲章が欲しい一般人は知り合いに頼む必要がありそう。2010年秋の褒章受章者だけで、703人と32団体計4173人もいるのだから、その気がある方はロビーする価値あり?
0 件のコメント:
コメントを投稿