2010/12/23

ゲイカップルの子作り作戦 代理母にお願い

国民の大多数の人権を無視したアパルトヘイト。そんな歴史を持つ南アフリカの法律は、マイノリティや弱者の保護に手厚い。

例えば、同性愛者の権利。ゲイカップルには異性間夫婦と同じ権利が保証されている。また社会的にも、特に都会の白人社会では偏見があまりなく、ゲイであることをオープンにしている人が多い。

ただ、法律が整っていても、社会的に受け入れられていても、悩みはある。ゲイカップルの多くにとって頭が痛いのがふたりの子供を持つこと。愛する人と家庭を築きたいのはやまやまだが、オス同士、メス同士では生物学的に不可能だからだ。

一般的な解決策は二通り。ひとつは養子を貰うこと。もうひとつは、カップルのうち、ひとりの卵子または精子を使うこと。女性の場合は精子銀行を利用したり、家族・友人に精子を提供してもらい自分で子供を産むことが可能だ。

友人のレズビアンカップルはこの手を使って、ふたりがひとりずつ子供を産んだ。精子の提供者は人種が違う男性ふたり。つまり、母親ふたり、父親なし、肌の色が違い、血がつながっていない子供2人という家族構成になる。

「ゲイは社会風紀・秩序を乱す!」と目くじらを立てる人々などは、「家族」とも認めないかもしれない。しかし、親がそれを当然のように自然に振舞っているし、また、家族・親類、友人、近所の人、学校の先生、クラスメート、クラスメートの親など、この家族を取り巻く人々が皆、ごく普通の家族として受け止め、受け入れているから、子供たち自身も屈託がなく、伸び伸び育っている。

男性カップルの場合はもっと面倒だ。まず、赤ちゃんを産んでくれる女性を見つけないといけない。その女性の子供として産んでもらい、出産後、養子手続きをする。代理母は探しは大抵、専門業者を使う。料金は5万ランド(60万円)程度。

ところが、2005年に子供法(Children's Act)が改正、今年4月に施行された。その38条19項は、代理母になることで収入を得ることを禁じている。

妊娠・出産は女性にとって大仕事である。重い悪阻、妊娠中毒症、難産などの可能性に加えて、産後の肥立ちが悪いとか、体の線が崩れるという心配もある。コミットする期間も長い。妊娠期間9か月半、その前の人工授精から考えると、場合によっては1年を超える。良いお金になるならまだしも、喜んでしかも無料で、他人の子供をお腹にかかえてくれる女性はザラにはいない。よっぽど妊娠好きか奇特な人であろう。

子供を切に欲しがるカップルから巨額の料金をむしりとる悪徳業者をなくすことが主眼だろうが、お蔭で代理母になってくれる人を見つけるのがむずかしくなった。

新しい子供法にはその他、代理母に関する次のような規定がある。
  • 代理母には生存する自分自身の子供が最低ひとりいないといけない。
  • 代理母が結婚している場合は夫の同意書が必要。
  • 依頼するカップルには、ふたりとも出産することができず、その状態は恒久的であり、戻すことができないという医学的理由が必要。
  • 依頼カップル両方の生殖体を用いる。妥当な生物学的または医学的理由がある場合は、ひとりの生殖体でも構わない。
  • 関係者全員が合意書に署名し、裁判所がそれを認可しなければならない。
  • 胎芽が母体に移される以前に、裁判所が代理母に対して、親としての権利・義務を放棄するよう命令を出さなければならない。
  • 代理母は出産時に子供を引き渡す。子供は生まれた瞬間から依頼カップルの子供となり、養子手続きは不要。
  • 代理母及び依頼カップルの少なくともひとりは南ア国籍。
ジョハネスバーグ在住の某男性カップルはラッキーにも代理母を見つけることができ、この度、高等裁判所で代理母契約の認可を受けた。卵子は精子を提供しないパートナーの姉妹から提供してもらうため、遺伝的には双方の血を引いている。

子供を持とうと決めてから、代理母と契約を交わすまでに7年かかったという。同じことをまた繰り返すのは大変なので、三つ子が欲しいとのこと。代理母には妊娠中、「脳の働きを高める」モーツァルトを聞いてもらう予定。既にそのためのiPodを用意しているとか。

(参考資料:2010年12月22日付「The Star」など)

0 件のコメント:

コメントを投稿