「メール&ガーディアン」紙の年末恒例「内閣通信簿」(Cabinet report cards)が今年も発表された。大統領と大臣がこの一年どれほどよくやったか、またはやらなかったを評価するもの。
成績はAからGの7段階。
A…優。頭が下がる。
B…良。改善の余地あり。
C…可。
D…しっかりしろ。
E…自分と国のために辞職せよ。
F…もうクビだ。
G…さようなら。
それぞれに詳しいコメントがつく。
今回「採点」の対象になったのは、大統領1人、副大統領1人、大臣33人の計35名。以前は副大臣も採点されていたが、今回はなし。大臣の数が大幅に増えて紙面が足らなくなったのか、副大臣は影が薄すぎて評価の意味がないためか。
1994年、新政権が誕生した当時は、解放運動の指導者、英雄たちが内閣に名前を連ねていた。ところが次第に、よほどの政治通でない限り聞いたことのない名前が増えてくる。南アフリカの選挙は完全比例代表制。つまり政治家にとって「地元」は存在せず、党内部での力関係、人間関係が全てなのだ。また、大臣職、副大臣職は政治家の椅子取り合戦だから、適材適所の配慮はごく一部に限られる。
ジェイコブ・ズマ(Jacob Zuma)大統領の成績は「D」。女性問題にだらしがないという評判(?)を裏切らない、一年の出だしだった。サッカー界の大物アービン・コザ(Irvin Khoza)の娘が、大統領の子供を出産したのである。ズマには正妻が3人、離婚した妻1人、自殺した妻1人、それに婚約者までいる。友人が愛娘に子供を産ませたことで、コザはカンカンだと報道された。尤もズマが強姦容疑で起訴された際、被害者は解放運動の同士の娘だったから、「友人の娘」というのはズマにとって「手をつけて構わない範囲」なのだろう。
サッカーワールドカップという大仕事はツツガナク済ませたものの、国内では相次ぐ停電、基本的社会サービス供給の遅れに対する激しいデモ、公務員の史上最悪ストやその他各業界でのスト・・・と、責任を問われる大統領にとってあまり楽しくないことが続く。そのせいか、ズマはこれまで大して関心のなかった外国公式訪問に急に意欲を燃やした。中国、ブラジル、イギリス、フランス、スエーデン、メキシコ、エジプト、リピア、ベルギーなどなど。一度に連れて来るのは一人とは言え、ファーストレディが何人もいるのは、迎える国にとってさぞかし混乱することだろう。
ハレマ・モトランテ(Kgalema Motlanthe)副大統領は「B」。アメリカでもそうだが、副大統領というのはわかりにくい職だし、モトランテ自身、目立たないことを信条としているから、彼の評価は難しい。ただ、どう見ても無能だったり、汚職にまみれていたりする政治家が多い中、注目の集まりやすい職について話題に上らないというのは、それなりにちゃんとしているのだろう。
33人の大臣中、「A」がついたのはプラヴィン・ゴーダン(Pravin Gordhan)財務相とアーロン・モツォアレディ(Aaron Motsoaledi)保健相の2人だけ。以下、B4人、C10人、D7人、E2人と続く。「クビ」を宣告されたのは、公共サービスを担当するリチャード・バロイ(Richard Baloyi)と、地方政府・伝統的指導者を担当するシケロ・シケカ(Sicelo Shiceka)の2人。
珍しく、Gをもらった閣僚はゼロ。しかし、まだ就任したばかりで評価を控えた大臣が8人もいるから、来年に期待できるかも。
国民には顔の見えない政治家が増える中、「メール&ガーディアン」紙による「内閣通信簿」は「政治家のおさらい」として今後も注目したい。
「通信簿」はこちらで。
「Cabinet report cards 2010: Reshuffling the deckchairs」2010年12月23日付「Mail & Guardian」
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