2018/03/18

ヒロイン役は南ア人ソプラノ! METライブビューイング

ガエターノ・ドニゼッティ(Gaetano Donizetti)のコメディ・オペラ『愛の妙薬』(L'elisir d'amore)が最高に楽しかった。主な歌手全員、歌がうまいだけでなく、かなりの役者である上に、息がぴったり合っている。人を笑わせるのはむずかしいと思うのだが、抜群の演技とタイミングに喝采した。


主役の単純で間抜けな貧農、ネモリーノ(Nemorino)を演じるのは、アメリカ人テノールのマシュー・ポレンザーニ(Matthew Polenzani)。



いい人なんだけど、一生の伴侶にするにはお人好しすぎて多少の不安がある(と私は思う)ネモリーノは、美人で聡明で、根は優しいがちょっと高慢な富農の娘アディーナ(Adina)に一途な恋をしている。動画はネモリーノが歌う有名なアリア『人知れぬ涙』(Una furtiva lagrima)。


アディーナ役は南ア人ソプラノのプリティ・イェンデ(Pretty Yende)。1985年3月6日、南アフリカの田舎町に生まれた。生まれて初めてオペラに触れたのは16歳の時。ブリティッシュエアウェイズ(British Airways)のコマーシャルで、レオ・ドリーブ(Léo Delibes)のアリアを耳にし、オペラの虜になった。



南アの音楽学校を優等で卒業後、ミラノのスカラ座付属学校で学ぶ。ヨーロッパで数々の賞を勝ち取り、2012年スカラ座デビュー、2013年ニューヨークのメトロポリタンオペラデビュー。もちろん才能と努力の賜物だろうが、現代のシンデレラ物語である。

かつては白人以外がオペラのヒロイン役なんて考えられなかった。まして、アフリカ大陸の田舎町で生まれ育った黒人の少女がオペラ歌手になり、スカラ座やメットで主役を務めるようになるとは!

カーテンコールでプリディ・イェンデが登場したとき、舞台に花束が投げ込まれ、切符が花吹雪のように舞い、観客が総立ちで大喝采! 思わず涙ぐんでしまった。

これはアディーナとドゥルカマーラのデュエット、Quanto è bella。

 
ネモリーノのライバルは、若くて野心満々の軍曹ベルコーレ(Belcore)。演じるのはイタリア人バリトンのダヴィッド・ルチアーノ(Davide Luciano)。


これにイタリア人バスのイルデブランド・ダルカンジェロ(Ildebrando D'Arcangelo)が口の達者なインチキ薬売り、ドゥルカマーラ(Dulcamara)として加わる。


とにかく楽しい。おススメです。

【関連ウェブサイト】
'L'elisir d'amore', The Metropolitan Opera
Pretty Yende オフィシャルサイト

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