2016/11/28

南アで余生を送るブラジル生まれのみなしご猫ネルソン、波乱万丈の人生が本に

ネルソンは気難しい猫だ。冷淡で攻撃的。撫でられたり、抱かれてたりするのが大嫌い。飼い主のノーラ・ミッチェル(Nola Mitchell)さんにも平気で噛みつく。17歳という高齢ながら、他の猫と大喧嘩する。

飼い猫、それも老猫にしては超硬派。可愛げがないこと、この上ない。しかし、ネルソンの半生を知れば、そんなタフガイになってしまったのも頷ける。

ネルソン(Get It Durban

生まれはブラジルの港町、カベデロ(Cabedelo)。トラックの荷台で生まれたらしい。母親が生後数日の子供たちを安全な場所に移そうしたとき、一家は犬の群れに襲われる。騒ぎを聞きつけ駆けつけたのは、ケープタウン出身のヨットマン、ボブ・ヘイワード(Bob Hayward)さん。猫一家は皆殺しに殺されてしまった。溝に身を潜め、九死に一生を得た子猫を除いて。。。

2016/11/20

お値段7万7千円から 南アの契約殺人

日本で殺し屋を雇うと、一体いくらくらいかかるのだろう。

そんなことを思ったのは他でもない。南アフリカにおける研究結果が、世界的に権威のある学術誌に発表されたからだ。


論文の題は「The Commercialisation of Assassination: Hits and Contract Killing in South Africa 2000-2015」(暗殺の商業化:2000年ー2015年の南アフリカにおける暗殺と契約殺人)。掲載された学術誌は「African Affairs」。ロンドンに本部がある「ロイヤル・アフリカン・アカデミー」(Royal African Academy)の季刊誌で、オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)が発行している。

ケープタウン大学(University of Cape Town)のマーク・ショー(Mark Shaw)教授と博士課程の学生キム・トーマス(Kim Thomas)が分析に使ったのは「メディア」。2000年から2015年までの16年間に報道された、暗殺や暗殺未遂1000件以上のデータベースを作成したのだ。もちろん、誰にも知られず殺され、報道されなかったケースも数多くあるだろう。

マーク・ショー
キム・トーマス

アパルトヘイト時代の南アでは、暗殺や契約殺人は珍しいものではなかった。アパルトヘイト政府が解放運動の活動家を殺害しただけでなく、解放運動内部でも、「問題」と見なされたり、政府のスパイと疑われたりして殺された人がたくさんいる。いずれにせよ、アパルトヘイト時代の暗殺の多くは、政治を動機とした、組織によるものだった。

それが変わったのは1994年。アパルトヘイトが終わり、民主総選挙が行われ、アフリカ民族会議(ANC)が政権を取ってからのことだ。イデオロギーの違いを原因とした政治組織による暗殺から、個人が政治的経済的利益を得るために殺し屋を雇うことに変化したのだ。そして、人を使って殺することで問題を解決しようとする事例が、近年増えているという。

2016/11/11

トランプ大統領はアフリカにどう影響するか

ドナルド・トランプがアメリカ合衆国の次期大統領に選ばれてしまった。

実はこの半年以上、毎日、米大統領選の動向を追っていた。そして、知れば知るほど、トランプという人間のひどさに唖然とした。

2004年に始まったリアリティ番組「アプレンティス」(The Apprentice)により、有能で容赦なく、素晴らしいリーダーシップを発揮する大物ビジネスマンのイメージを米国民に植え付け、「トランプ」は「成功」の代名詞となった。だが、現実は違う。詐欺まがいの、あくどい事業のやり方。数えきれない事業の失敗。過去30年間に抱えた訴訟は3500件以上! 

自分の利益のためなら何でもする超利己的人間。財力と知名度をフルに使って、好き勝手にやり放題。しかも、人間としては超未熟。「自伝」のゴーストライターによると、3分も注意を集中できない。自由時間の大半を、テレビを見ることとツイッターに費やす。自分をコントロールできず、些細な挑発に乗ってしまう。異常な虚言癖、超ナルシスト、人種差別、女性蔑視、セクハラ・・・。未成年女子のレイプ容疑まである。

しかし、どんなスキャンダルも、多くの国民の頭をスッと通過してしまう。ウォーターゲート事件を暴き出し、また計47ものピュリッツァー賞を受賞している、あの『ワシントンポスト』紙の記者がコツコツ調べ上げ、「ピュリッツァー賞受賞間違いなし!」と絶賛された報道をしても、すぐに忘れられてしまった。ジャーナリストとしてさぞかし悔しかったことだろう。

生まれた時から大金持ちで、他人を踏み台にして70年間生きてきて、ベルサイユ宮殿を模したキンキラキンのマンションに住み、自家用ジェット機で移動するドナルド・トランプ。そんな人間が自分の利益を代表してくれると、多くのアメリカ人がなぜ信じることができるのか摩訶不思議だ。