日本で殺し屋を雇うと、一体いくらくらいかかるのだろう。
そんなことを思ったのは他でもない。南アフリカにおける研究結果が、世界的に権威のある学術誌に発表されたからだ。
論文の題は「The Commercialisation of Assassination: Hits and Contract Killing in South Africa 2000-2015」(暗殺の商業化:2000年ー2015年の南アフリカにおける暗殺と契約殺人)。掲載された学術誌は「African Affairs」。ロンドンに本部がある「
ロイヤル・アフリカン・アカデミー」(Royal African Academy)の季刊誌で、
オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)が発行している。
ケープタウン大学(University of Cape Town)の
マーク・ショー(Mark Shaw)教授と博士課程の学生
キム・トーマス(Kim Thomas)が分析に使ったのは「
メディア」。
2000年から2015年までの16年間に報道された、暗殺や暗殺未遂1000件以上のデータベースを作成したのだ。もちろん、誰にも知られず殺され、報道されなかったケースも数多くあるだろう。
アパルトヘイト時代の南アでは、暗殺や契約殺人は珍しいものではなかった。アパルトヘイト政府が解放運動の活動家を殺害しただけでなく、解放運動内部でも、「問題」と見なされたり、政府のスパイと疑われたりして殺された人がたくさんいる。いずれにせよ、
アパルトヘイト時代の暗殺の多くは、政治を動機とした、組織によるものだった。
それが変わったのは1994年。アパルトヘイトが終わり、民主総選挙が行われ、アフリカ民族会議(ANC)が政権を取ってからのことだ。イデオロギーの違いを原因とした政治組織による暗殺から、
個人が政治的経済的利益を得るために殺し屋を雇うことに変化したのだ。そして、
人を使って殺することで問題を解決しようとする事例が、近年増えているという。