カエリチャ(Khayelitsha)はケープタウンから約40キロに位置するタウンシップ。
タウンシップとは、アパルトヘイト政権が都市に隣接して設立した非白人居住区。大部分は黒人用だが、カラード用、インド系用などもあった。(中国人用タウンシップも全国に4か所設立されたが、機能していなかった。)
コサ語で「新しい家」(new home)を意味するカエリチャは、1980年代の初めに作られた。急速に拡大しており、現在では100万人以上が居住。この町に舞台を移した、ビゼーのオペラ「カルメン」の映画版「uCarmen eKhayelitsha」(「カエリチャのカルメン」日本未公開)は、2005年、ベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞を受賞している。
住民の60%が30歳以下。失業率推定30%。フォーマルセクターで働く人は8%に過ぎないとされる。(フォーマルセクターについては、2011年1月25日付「納税者数が73%も増加 それでも終業人数の半数以下」参照)
このタウンシップにヨガクラスを開設したアメリカ人がいる。ショーン・コーン(Seane Corn)さん。マドンナ、スティング、ロバート・ダウニー・ジュニア、ドリュー・バリモアなど、セレブにヨガを教えてきたことで有名。
コーンさんはやはりヨガのインストラクター、スザンヌ・スターリング(Suzanne Sterling)さんと一緒に、OTM(Off the Mat, Into the World)という団体を主宰している。OTMの事業のひとつが、グローバル・セヴァ・チャレンジ(Global Seva Challenge)。ヨガをする人々が資金を募って、世界中の小さいプロジェクトを支援する。「Seva」とは「無償の奉仕」を意味する、ヨガの教えのひとつ。
今回、ケープタウンのアースチャイルド・プロジェクト(Earthchild Project)がグローバル・セヴァ・チャレンジから14万ランド(約170万円)の援助を受け、カエリチャのサクムランデラ小学校(Sakumlandela Primary School)にヨガスタジオを建設したのである。
何故、一見ヨガとは無縁の貧しい黒人居住区に、ヨガクラスを開設したのか?
コーンさんの言い分はこうだ。貧困が絶望感を生み出し、それが暴力、ギャング、麻薬、売春、エイズにつながる。ヨガの教えは犯罪、エイズ、失業に苦しむコミュニティを癒す。
かなり短絡的で大雑把。よく言えば、おおらか。どの程度、現地の現状やニーズを理解・把握してのことなのか疑問だ。
しかし、これがきっかけになって、南アフリカ、ひいてはアフリカに世界の目が向けば喜ばしい。
マドンナが「心の平和」を見つけるのを助けたコーンさん。ヨガの力で、カエリチャを犯罪のない平和な町に変えることができるか。
(参考資料:2011年2月11日付「The Times」など)
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