一軒一軒のドアを叩いて物を売って歩いたセールスマンや、零細企業の町工場から始めたエンジニアが一代で財をなし、世界的大企業に発展するという「成功譚」をアフリカで耳にすることはまずない。白人やインド人が才覚で億万長者になる例はあるが、アフリカ黒人版ヘンリー・フォードやジョン・ロックフェラーや本田宗一郎は皆無と言って良い。
南アフリカでは当然のことながら、アパルトヘイトが終わるまで新聞の社交欄で取り上げられるような黒人の超大金持ちは存在しなかった。アパルトヘイト後、ここ20年で一代でリッチになったのは、いきなりビジネス界で大成功した元解放運動の闘士や、黒人優遇策と人脈を駆使して、入札で政府関係の仕事を得た人が殆どである。いずれも、キーワードは「コネ」。
何故アフリカ黒人の大起業家が育たないのか?
一橋大学イノベーション研究センターの米倉誠一郎教授は「アメリカでは黒人だけコミュニティがない」という。つまり、コミュニティで助け合うことが出来ないのが原因ではないか、というのだ。しかし、これはアフリカにはあてはまらない。
アメリカの黒人は元々、奴隷としてアフリカから連れて来られた。家族がバラバラにされ、出身地も話す言葉も違う人々が、肌の色が同じというだけで一緒くたにされてしまったのだ。逆に言えば、アメリカの黒人を繋ぐものは肌の色だけ。
しかし、アフリカの黒人は伝統も言葉も宗教もしっかり地元に根付いている。助け合いの精神(南アフリカでは「ウブンツ」(ubuntu)と呼ばれる)は、少なくとも南部アフリカと東アフリカでは社会生活の根本である。
スタートトゥデイの前澤友作氏は「ベンチマークとなる人がいないからではないか」という。大起業家第1号が生まれれば、それを見習って「自分もやってみよう!」という人が後に続くはず、というわけだ。
では、何故「ベンチマークとなる人」が生まれないのだろうか。人種による優越はないから、原因は別のところにあるはず。。。
アフリカには、大起業家が生まれにくい土壌があるのだろうか。また、大起業家が生まれる社会的政治的経済的要因・条件とは何なのだろうか。コインの表裏となる質問かもしれない。
世界のアントレプレナーシップについて研究・分析するNPO、グローバル・アントレプレナーシップ・モニター(GEM:Global Entrepreneurship Monitor)は2010年版報告書の中で世界59か国の実情を分析し、イノベーションの発達を「要因主導」(factor-driven)、「効率主導」(efficiency-driven)、「イノベーション主導」(innovation-driven)という3段階で説明している。
次回はGEMの分析を検討してみよう。
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何故アフリカで大起業家が生まれないのか(1) 前澤友作氏の話を聞いて考える(2011年10月27日)
何故アフリカで大起業家が生まれないのか(3) 2010年度GEM報告書を検討する(2011年12月13日)
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