2017/06/22

ナショナルシアターライブ 『ウォーホース~戦火の馬~』(War Horse)

METライブビューイング」(Metropolitan Opera Live in HD)のおかげで、ニューヨークのメトロポリタンオペラの公演がアフリカにいながら観れるようになったが(「オペラも容姿の時代? METライブビューイング 」)、「ナショナルシアターライブ」(National Theatre Live)のおかげで、ロンドンの国立劇場の公演もアフリカにいながら観れるようになった。現在上映されているのは『ウォーホース~戦火の馬~』(War Horse)。

National Theatre Liveから)

原作はイギリス人作家マイケル・モーパーゴ(Michael Morpurgo)による同名の児童文学(1982年)。第1次世界大戦で離れ離れになったアルバート少年と馬のジョーイの物語を軸に、戦争の悲惨さと平和の大切さを描く。

第1次世界大戦では、英軍だけでなんと100万頭もの馬が「戦死」した。戦場はヨーロッパだから、海を越えて行ったわけである。多くはマシンガンや鉄条網に向かって突撃させられ命を失った。重労働の挙句、疲労困憊して死んだ馬もあった。幸運にも生き残った馬の殆どが肉屋に売られた。

劇場バージョンは南アフリカにとって特別の意味を持つ。主人公のジョーイをはじめとする馬たちを作り出したのは、ケープタウンの操り人形グループ「ハンドスプリング・パペット・カンパニー」(Handspring Puppet Company)なのだ。(「ケープタウンの操り人形グループ ブロードウェイで大成功 「トニー賞」受賞」)


「ナショナルシアターライブ」は録画された劇場公演を映画館で観るわけだから、本物より迫力に欠けるかもしれないが、それはそれで良い点もある。アフリカなど本物の公演がやって来ることがまずない地域でも見れるばかりでなく、劇場では見逃しがちな細部がクロースアップで映されたり、監督、俳優などのインタビューや「メーキングオブ」の映像が登場する。

『ウォーホース』では監督と原作者がインタビューに応えていた。原作者曰く、「小説は全然売れなかったが、出版社が絶版にせず、出版し続けてくれた」。数々の賞を取った舞台版とスピルバーグによる映画版の成功のおかげで、(多分)沢山本が売れて良かったですね。

監督のマリアンヌ・エリオット(Marianne Elliott)によると、この劇は変わった生まれ方をした。ストーリーがまずあって、それをどうやって演出しようかと考えたのではなく、「ハンドスプリング・パペット・カンパニー」と一緒に何か作り上げたくて、題材を探したというのだ。

原作の語り手は「馬」。さすがに舞台で馬が口をきくのは余りにシュールだから、馬たちにセリフはない。しかし、馬の動きが信じられないほど自然で繊細で力強いために、馬の感情が手に取るようにわかる。操り人形である等身大の馬たちを何人もの人間が動かしているのに、人間の存在が全く気にならない。スケルトンだけの馬たちがまるで生きているかのようだ。(泣けました。。。)

ナショナルシアターライブは、日本では18の劇場で上映されている。(リストはこちら

そして、劇場版『ウォーホース』が今年、日本と南アフリカにやってくる! 南アフリカ公演は10月22日から11月30日までジョハネスバーグの「シアター・アットモンテカシノ」(Theatre at Montecasino)、12月5日から来年1月4日までケープタウンの「アートスペース・オペラハウス」(Artscape Opera House)で。

日本公演は7月30日から8月24日まで、東京の「東急シアターオーブ」で。

チケットぴあ
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✤この投稿は2014年4月20日付「ペンと絵筆のなせばなる日記」掲載記事を転載したものです。
ハンドスプリング・パペット・カンパニーのメンバー、ンカディレ・ダキ(Ncedile Daki)さんが、2017年3月、ハイジャックの被害に遭い、犯人に銃殺されてしまいました。1990年9月1日生まれ。享年26歳。合掌。
✤「ウォーホース」は2011年、スティーブン・スピルバーグ監督により映画化されています。邦題は「戦火の馬」。
 
 
【関連ウェブサイト】
National Theatre Live
Handspring Puppet Company

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