この機会に、2016年8月から2017年2月まで、別ブログに書いたトランプ関連記事を振り返ることにする。
まずは2016年8月7日の記事『ドナルド・トランプの壁』。共和党大統領候補トランプの公約のうち、一番有名なものだったが、大統領になってからいつの間にか立ち消えになってしまった。
この時点では、大金持ちの家に生まれ、詐欺同然の手口を用いて私腹を肥やすことにそれまでの人生を費やし、多くのビジネスで失敗し、世界政治経済にうとく、集中力が3分もなく、発言の大部分が嘘であり、人種差別やセクシャルハラスメントを平気で行う、ナルシストで傲慢なトランプを大統領候補に選んだ共和党員にあきれていた。もっとちゃんとした候補者が複数いたのに。。。
「トランプ=成功」「大富豪の凄腕ビジネスマン」というイメージがリアリティTVで浸透していた。テレビが作り出したイメージを本当の姿と信じる多くの米国民。「バカじゃないの」と思う一方で、デマゴーグに簡単に扇動される民衆が空恐ろしかった。
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トランプは「建設費用はメキシコに負担させる」と断言するが、メキシコ政府は「絶対払わない」。
メキシコに無理やり払わせる妙案でもあるのか。メキシコが払わないとしたら、誰が負担するのか。そもそも、3200キロにわたる国境に壁を建設するのに、一体いくらかかるのか。
(Economist.com) |
米バーンスタイン・リサーチ(Bernstein Research)の最新レポートによると、リオ・グランデ川など天然の国境のおかげで、壁を建設する必要があるのは国境の約半分。そこに高さ12メートルの壁を築くには、7億1100万ドル相当のコンクリートと2億4000万ドル相当のセメントが必要。工賃を含めると、150億ドルから250億ドルの費用がかかるという。
セメントやコンクリートを遠くから輸送するのは高くつくから、材料は建設現場近くで調達するのが妥当だろう。採石場や工場はアメリカの方が充実しているものの、トランプの言うようにメキシコが建設するとなると、国境近くに多くの採石場を持つメキシコのセメックス(Cemex)社が誰よりも儲けることになりそうだ。
(Last Week Tonight) |
「トランプ・ウォール」(トランプ氏の言葉)建設に関しては、コメディアンのジョン・オリバー(John Oliver)が早くも2016年3月に試算している。
トランプ自身の概算は当初40億ドルから、60-70億ドル、80億ドル、100億ドルへと口を開くたびに増加している。また、壁の高さも35フィートから90フィートと一貫しない。材料に関しては、「コンクリート、鉄筋、鋼鉄」(concrete, rebar, steel)と歯切れがよい。
「35フィート(10.67メートル)の壁を1000マイル(1609キロ)築く」ということでジョン・オリバーが専門家から得た見積もりは、材料、人件費、道路建設など含め総額250億ドル。しかも、建設後7年以内に、建設費用を上回るメンテ費用がかかるという。
更に、1600キロくまなく国境警備員を配置するのは現実的でないから、米政府の目が届かないところで、壁を乗り越えたり、壁の下にトンネルを掘る人が後を絶たないだろう。そもそも、アメリカに不法滞在するメキシコ人の半数は合法的に入国している。250億ドルは無駄使いとしか言いようがない。
しかし、トランプの支持者はひるまない。共和党の党大会を取材したBBC特派員が、壁建設に関してトランプ支持者に質問した。
現実的に回答する支持者がいる一方で、この女性は越境するメキシコ人を「私だったら撃ち殺す」と言う。
「それはまた過激な・・・」とあきれる特派員に、「彼らは我が国を侵略しているのだから」。建設費用に関しては、「トランプ氏にはメキシコに負担させる方策があると信じている」。
このような短絡・単純・過激思考をする人は、トランプ支持者に珍しくない。
『ニューヨーク・タイムズ』(The New York Times)紙がトランプ集会の模様をビデオにまとめた。
大統領候補による集会というより、デマゴーグに扇動された、邪悪な感情に支配されたカンガルー裁判。民主党大統領候補のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)を「刑務所にぶちこめ!」(Lock her up!)、「あのメス犬を絞首刑にしろ!」(Hang the bitch!)と罵り叫ぶ人々。人種差別的で過激な白人男性が大部分のトランプ集会に、マイノリティや反対派が下手に足を踏み入れたら、リンチされそうな気配。空恐ろしい。
ドナルド・トランプを大統領に選ぶほど米国民はバカではないと信じたいが、トランプが負けたら負けたで、激怒した支持者の行動が怖い。
(参考資料:"The economics of Donald Trump’s wall", The Economist など)
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