その理由は、アメリカ人ハンターがアフリカに出向き、絶滅危惧種を含む大型動物を殺すために大金を払うことで、地元のコミュニティが経済的に潤い、動物保護資金が増える。つまり、これまで欧米のハンティング愛好者が主張してきた「野生動物を殺すことが野生動物の保護につながる」という変な理屈の受け売りである。
その一環として、ジンバブエとザンビアで「合法的」に狩猟したゾウの牙をアメリカに輸入することを許可した。(絶滅危惧種を「合法的」に殺せるアフリカ諸国の政策は絶対おかしいと思う。しかし、大統領が率先して狩猟全面禁止に踏み切ったボツワナ以外の国では、政治家や役人の多くが欧米ハンターやロビー団体がもたらす大金に目が眩んでしまっている。)
トランプの息子、ドナルド・ジュニアとエリックは狩猟が大好き。アフリカに来ては野生動物を殺している。
長男のドナルド・ジュニアはこんな写真をソーシャルメディアにアップしている。
ゾウは絶滅危惧種 |
殺したゾウの尻尾をナイフで切り取ったもの。
生まれてから何一つ不自由なく生きてきたお金持ちのボンボンが、完璧に安全な環境の中、何百万円も払って払ってゾウを射殺し、その尻尾をナイフで切り取り、自慢げにソーシャルメディアにアップしている。そんなこと、なんの自慢にもならないことに全然気がついていない。
バッファローを殺して嬉しそうなドナルド・ジュニア |
弟のエリックもバッファローを殺して得意そう |
絶滅危惧種ヒョウを殺したドン・ジュニアとエリック |
絶滅危惧種ナイルワニを殺したドン・ジュニアとエリック |
これまでは、象牙やサイのツノなど、殺した動物の「トロフィー」をアメリカに持ち帰り、家に飾ったり、友だちに見せて自慢したりできなかったが、親父の政策変更により、堂々と象牙を持って帰ることができるようなったのだ。
この発表がされたのは、タンザニアで開催された「African Wildlife Consultative Forum」でのこと。「アフリカの野生動物に関する協議討論会」という、一見自然保護会議っぽい名称だが、主催者は「サファリ・クラブ・インターナショナル」(Safari Club International:SCI)。ハンターのロビー団体である。
政府の新政策をロビー団体の会合で発表するのはおかしい。大きな資金を持つロビー団体に、政府が「買われた」と受け止められても仕方がない。
「狩猟が野生動物保護につながるという主張には全く根拠がない」と、チンパンジー研究の第一人者ジェーン・グダール(Jane Goodall)は言う。
「大変大きなショックを受けています。これが、この政権が選んだ道なのです。」「(トランプ政権は)先人たちが確立した環境保護政策をひとつひとつ撤回しています。」「象牙やサイのツノを合法的に取引することで得られた資金が動物保護につながることは非常に稀です。」「サファリオペレーターや腐敗した役人の手に落ちるだけです。」
マイクロソフト創業者ポール・アレン(Paul Allen)をスポンサーとするプロジェクト「グレート・エレファント・センサス」(the Great Elephant Census)によると、絶滅の危機に瀕し、保護の重要さが叫ばれているアフリカゾウは、2007年から2014年の7年間に、30%近くもその数が減ったという。その間ゾウの狩猟は続いているが、保護に結びついていないことは明らか。
俳優で自然保護活動家としても知られるレオナルド・ディカプリオ(Leonardo DiCaprio)は、「この政策変更により、アメリカは象牙取引禁止運動における指導的立場を失いました」。
世界中の活動家のみならず、普段ならトランプの味方をするアメリカの保守派からも非難の声が高まり、11月17日(金)、トランプは象牙輸入許可の実施延期を発表した。
取りあえず、ほっと一息。
しかし、エネルギーとしての石炭使用を促進し、北極圏内の自然保護地で石油探鉱を許可し、石油業界に近い地球温暖化否定論者を環境保護庁長官に任命したトランプである。金に弱いトランプである。狩猟大好き人間を息子に持つトランプである。まだまだ安心できない。
ネットに出回っているジョーク画像 |
【参考資料】
"Trump postpones decision on allowing import of elephant parts", The Guardian (2017年11月18日)
"For Now, Trump to Keep Ban on Importing Elephant Trophies", The New York Times (2017年11月17日)
"Trump puts hold on this week's decision to again allow trophies from elephant hunts in Zimbabwe", The Washington Post (2017年11月17日)
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