2010/06/06

過熱するW杯商戦

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サッカーワールドカップ(W杯)開幕を目前にして、南アフリカではW杯商戦が熱く繰り広げられている。
 
世界不況の影響をモロに受けていたジュエリー業界は、W杯景気にホクホク顔。総重量900カ ラットのダイヤをちりばめた実物大サッカーボールには、既にヨーロッパのサッカーチームから購入のオファーがあるという。お値段は2000万ランド(約2億6千万円)。そこまでは手が出ないファンのために、1個8000ランド(10万4千円)のクリスタル製もある。 南アの国旗が刻まれた6角形の時計も人気アイテム。24カ ラットゴールド製が、195千ランド(253万円)。

「バファナバファナ」という名前のワインを見つけた。ナショナルチームの名前を勝手に使っていいの?とラベルを吟味したところ、しっかり南 アサッカー協会のロゴがついていた。さすが、商魂たくましい。    

W杯景気にあやかりたいのは、大企業も同じこと。オフィシャルスポンサーでなくても、Fifaの 機嫌を損ねない範囲で、なんとかサッカー熱を商売に利用しようと躍起だ。

携帯電話業界のオフィシャルスポンサーはMTN。ライバルのVodacomは、ファンがバファナバファナに携帯メッセージを送る「Join the Voice」キャンペーンを実施中。目標は1000万メッセージ。成功の暁には、ギネスブックに申請する予定。クリエイティブなメッセージには、一等の賞金100万ランドをはじめ、数々の豪華賞品が用意されている。ノーベル平和賞受賞の3人組、マンデラ元大統領、ツツ元大司教、FWデクラーク元大統領も既に激励メッセージを送ったとか。
 
ファーストフード業界とビール業界のオフィシャルスポンサー、マクドナルドとバドワイザーがファンパークに出店しないことを受けて、南ア企業のナンドーズとSABが名乗りを上げた。Fifaの条件は、ブランド名を出さないこと。それでも、800万から1000万本のビールが余分に売れるとSABでは見込んでいる。   

「ワールドカップ」という言葉も疑似ブランドも使わなかったのに、Fifaの怒りを買ってしまった企業もある。

 ケープタウンのグラント・アブラハムズ氏は2004年、キーリングのデザインを通産省に登録した。2010という数字、ブブゼラの絵、南アの国旗がついたものだ。最近、商標・知的所有権侵害を理由にFifaに訴えられたアブラハムズ氏、「いじめっ子の巨人」相手に戦い抜くと鼻息荒い。

格安航空会社kulula.comといえば、オチャラケたコマーシャルで有名。その広告「Unofficial National Carrier of the 'You-Know-What'」も、Fifaの逆鱗に触れた。「『例のアレ』のオフィシャルじゃない航空会社」とやったわけだが、「例のアレ」がW杯を指すというのである。それだけではない。ケープタウンのスタジアム、サッカーボール、ブブゼラ、南アの国旗などの図柄や「南アフリカ」という言葉も使うなという脅しまでかけてきたのだ。
  
W杯を連想させる可能性のあるもの全てを知的所有権の対象としてしまう横暴さとユーモアのセンスのなさに、Fifaの株が下がる結果となったばかりか、Fifaの圧力で取りやめになった広告はインターネットで広まり、却って宣伝効果が高まった。 
 
優勝チームが決まる711日まで、W杯とFifaを巡るこもごもの悲喜劇に、南アフリカ中が振り回されそうである。

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