2011/03/06

南アの一等地を所有するカダフィ大佐 資産凍結の行方は?

資産凍結の仕組みはどうなっているのだろう。銀行口座なら簡単だが、資産の持ち主が自国民でなく、その上、凍結対象資産を共有する第3者がいる場合は。。。

こんな疑問を持つきっかけとなったのは、リビアのカダフィ大佐だ。

国連安全保障理事会は2月26日、自国民に対する人権侵害を理由に、カダフィ大佐、4人の息子、一人娘の資産凍結と渡航受入れ禁止を15対0で決議採択した。国際法並の規制力を持ち、国連全加盟国が従わなければならなという。

米財務省は直ちに、300億ドル相当の資産を凍結。外国人所有の資産凍結としては、米史上最大。対象となったのは、リビア中央銀行とリビア投資管理局(Libyan Investment Authority:LIA)の資産。いずれもカダフィ大佐が直接コントロールしていると見做したため。

カナダ、イギリス、オーストラリアも、リビア政府及びカダフィ家資産の凍結を開始した。

では、南アフリカの場合はどうか?

リビア政府の資金は、LIAから世界中の投資会社に流れている。そのひとつがリビア・アフリカ投資ポートフォリオ(Lybia Africa Investment Portfolio:LAIP)。LAIPは石油会社、航空会社、ハイテク企業の他、リビア・アラブ・アフリカ投資会社(Lybia Arab African Investment Company:Laaico)を傘下に持っている。

Laaicoは南アフリカで、アンサンブル・ホテル・ホールディングズ(Ensemble Hotel Holdings)社の株を100%所有。同社はアフリカ大陸の経済・金融の中心ジョハネスバーグ、中でもアフリカで最も地価の高いサントン地区で、不動産を数多く共同所有している。

南ア全国でのリビア資産の主なものを見てみよう。いずれもホテルやロッジである。

ハオテン州ではサントンのミケランジェロタワーズ(Michelangelo Towers)、ダビンチホテル(Da Vinci Hotel)、ラファエルスイーツ(Raphael Suites)。サントン以外ではサニーサイドパークホテル(Sunnyside Park Hotel)、エアポートグランド(Airport Grand)、センチュリオンレークホテル(Centurion Lake Hotel)。

西ケープ州ではケープタウンの5つ星ホテル、コモドア(Commodore)とPortswood(ポーツウッド)、ジョージのワイルダネスデューンズ(Wilderness Dunes)。

北西州ではサンシティ近くのバクブン(Bakubung)とクワマリタネ(Kwa Maritane)。リンポポ州のチクドゥ(Tshikudu)とエレメンツ・プライベードゴルフリザーブ(Elements Private Gold Reserve)。更に、東ケープ州のクズコロッジ(Kuzuko Lodge)、ムプマランガ州のクルーガーパークロッジ(Kruger Park Lodge)、クワズールーナタール州のカースルバーン(Castleburn)と全国にわたっている。

国際関係協力省のスポークスマン、クレイトン・モニェラ(Clayton Monyela)によると、「ホテルは現状通り操業するが、カダフィ一家への配当は差し止められるだろう」。しかし、具体的な政策となると、南ア政府の歯切れはいまいち悪い。

カダフィ大佐は、南ア与党アフリカ民族会議(African National Congress:ANC)が解放運動組織であった頃からのよいお友達。未だにANC内で人気が高い。2009年、ズマ大統領の就任式に世界各国の元首や政府高官や王室メンバーが到着した際、スタンディング・オベーション(立ち上がっての拍手喝采)があったのは、ジンバブエのムベキ大統領とカダフィ大佐のふたりだけだった。

人権に敏感な(はずの)南アフリカ政府は、国連決議に従ってカダフィ大佐の資産を凍結するだろうか、それとも長年の友情と今でも変わらぬ人気を優先させるのだろうか。

(参考資料:2011年3月4日付「Mail & Guardian」など)

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