2011/03/02

アフリカの子鬼「トコロシ」 殺人容疑者の手下?

南アフリカに住む醍醐味は、奇想天外な出来事が日常的に起こること。欧米や日本と変わりない生活を送っていてつい油断すると、いきなりアフリカに鋭いパンチを食らわされる。

今日の『スター』紙で見つけた小さな記事。殺人事件の裁判にやってきた地域住民が、ピーターマリッツバーグ下級裁判所の外でデモ。裁判所に請願書を提出するため、村から45キロも歩いてやってきた。

嘆願書の内容は、「被告が保釈されると、トコロシを操って裁判書類を盗ませるから、保釈しないでくれ」というもの。これだけでは、何のことかチンプンカンプンだろう。

トコロシ(Tokoloshe、Tokolosh、Tokoloshi、Thokolosi、Tikalosheと綴りは様々)は南部アフリカ各地で耳にする、いたずら好きの子鬼みたいなもの。ベッドの下に潜んで眠っている夢を聞き出す才能があり、それを使って悪事を働いたりする。トコロシ予防には、ベッドの下にレンガを置いておく。

1994年の南アフリカ第1回民主総選挙の折には、「投票用紙を記入するテーブルの下にトコロシが潜んでいて、どの党に投票したか探り出す。無記名投票しても無駄」という噂が飛び交った。自分の党に投票させようとする政党の苦肉の策とされるが、多くの人が信じたらしい。

トコロシの役割や働く悪事には色々な説がある。トコロシ自体も、子鬼のように元々そういう存在だったという説や、死人の目と舌を除去してから作られた一種のゾンビーという説などある。大きさがコビトサイズということでは、どの説も一致してる。また、独自で悪さをするとも、サンゴマ(伝統的祈祷師)の使い走りとも言われる。

この事件の被告は、48歳の裕福なサンゴマ、ムドゥドゥジ・マンケレ(Mduduzi Manqule)と30歳のロジャー・トゥシ(Roger Tsusi)。トゥシ被告のガールフレンドの冷凍庫から、ロイサ・ジョクウェニ(Loyisa Jokweni)さん(18)の頭が見つかったことに端を発する。

金持ちになりたかったトゥシ被告がマンケレ被告に相談に行ったところ、ジョクウェニさんの頭をはねて、蛇を巻きつけ、冷凍庫に入れるよう指示されたという。凍った蛇が巻きついた凍った頭を見つけて怒り狂った隣人たちは、マンケレ被告の家とトゥシ被告のガールフレンドの家に火を放った。

ふたりは逮捕されたものの、住民たちはマンケレ被告が手下のトコロシを使って、裁判書類を盗ませるのではないかと心配。そこで、裁判所にマンケレ被告を保釈しないよう訴え出たわけである。

ベッシー・ドゥトイ(Bessie du Toit)裁判長(名前からすると、アフリカーナかカラード)は、住民の言い分には根拠がないとしてマンケレ被告を保釈。トゥシ被告の保釈願いは却下された。

裁判は3月30日まで延期。さて、裁判書類はそれまで無事だろうか。

(参考資料:2011年3月1日付「The Star」など)

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