2011/03/10

サッカーワールドカップ 海賊退治に貢献

世の中、何がどこで役に立つかわからない。

2010年のサッカーワールドカップ時に、不測事態対応策として導入された衛星航行システム(satellite navigation system)が、海賊の取り締まりに大きく貢献しているという。

世界に悪名高いソマリアの海賊が、自国沿岸から活動領域を広げ、南下してきているのである。南アフリカ海軍は最近、モザンビークの海域パトロール支援に「SAS Mendi」号を送った。海賊が世界経済に与える損害は、年間300億ドルと推測されている。

これまでは、水平線の向こうに姿が見えなくなった船の追跡・管理は不可能だった。それが、新しい衛星航行システムのおかげで、1000海里(1850キロ)以内の船舶なら特定・追跡できるようになった。南ア国籍の船舶だと、世界のどこにいても特定・追跡可能だという。

海賊の取り締まりだけではない。これまで南ア海上治安局(South African Maritime Safety Authority: Samsa)に知られることなく南ア海域に自由に出入りしていた、数多くの船の動向が一目瞭然になる。有毒物質、危険物質を運搬する船の取り締まりや、大事故や汚染を引き起こす可能性のある石油タンカーのモニターも期待できる。

実は、ソマリアで海賊がこれほど増えたのも、国が崩壊状態のため、海域管理が出来ていなかったことに一因がある。

国連によると、紅海や地中海からの船がソマリア海域で化学廃棄物を不法投棄した場合にかかる費用は、1トン当たり2.5米ドル。合法的に処理すると1トン当たり250ドルかかるから、100分の1の費用で済む。

取り締まられないことを良いことに、どんどん不当投棄された化学廃棄物のせいで、ソマリア沿岸では魚が死に絶え、漁民の失業が相次いだ。その漁民たちが海賊にキャリアチェンジしているというのである。

自国の海域管理は、防衛や犯罪取り締まりだけでなく、環境保護の面でも非常に重要だと再認識した。

(参考資料:2011年3月10日付「Business Day」など)

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