2013/01/11

貧乏国の作品は、アカデミー賞候補になれない? 南アの監督、落選に驚かず。


2006年、ギャヴィン・フッド(Gavin Hood)監督の『ツォツィ』(Tsotsi)が、南アフリカ映画として初めて、米アカデミー賞最優秀外国語映画に選ばれた。それ以来、南ア映画は候補にも挙がっていない。

トライしていないわけではない。今年は、ダリル・ルート(Darrel Roodt)監督の『リトルワン』(Little One)が南アを代表したが、最終候補作5作に選ばれなかった。

ルート監督は「意外ではない」という。「もっと資金があったら、選ばれる可能性はあった」というのだ。「アメリカで上映会を行うのには一回約8000ドルかかり、何度も上映する資金がなかった。しかし、第71位から13位くらいには上昇したから。。。」と自分を慰めている。

宣伝に25万ランドかけることができたら、最終候補になっていた。しかし、この映画を製作するのに、有り金全部ハタイタので、家賃を払うのにも苦労したほどだ。」

アカデミー賞最優秀外国語映画賞(Academy Award for Best Foreign Language Film)は、各国が選んだ自国の代表作品(英語以外)から選ばれる。とすると、『リトルワン』は南アを代表しているのだから、上映代など必要なプロモーション費用は、家賃の工面に苦労する監督任せにせず、この作品を選んだ団体が負担するべきではないか。

とは言っても、発展途上国が裕福な先進国に対抗するのは難しい。1947年以来、これまで64の作品が選ばれているが、うち 51作品がヨーロッパ映画。5作品がアジアから。アフリカ大陸とアメリカ大陸は3作品ずつ。

当初は、ヨーロッパ以外からの出品数は少なかっただろう。アフリカなど、エチオピア以外、独立国もなかった。しかし、近年、ヨーロッパ以外でも良い映画が作られている。同じくらいの質だったら、上映回数が多く、宣伝に力を入れた作品の方が有利だろう。当然のことながら、資力がモノをいう。。。(『リトルワン』の質に関しては、まだ見ていないので、なんとも言えませんが。。。)

『リトルワン』の舞台はジョハネスバーグのタウンシップ(旧黒人居住区)。6歳の少女ヴイェルワが強姦・暴行の挙句、原っぱに置き去りにされる。中年の女性ポーリーンが発見し、病院に連れて行ってくれなかったら、そのまま死んでいただろう。引き取り手がないヴイェルワをポーリーンは家に連れて帰る。。。

ダリル・ルートは、ソウェト蜂起を題材にしたミュージカル『サラフィナ!』(Sarafina)の映画化(1992)で注目を浴びた。ウーピー・ゴールドバーグ(Whoopi Goldberg )とレレティ・クマロ(Leleti Khumalo)が主演だった。

エイズ問題を扱った『イエスタデイ』(Yesterday)は、2004年のアカデミー賞最優秀外国語映画賞にノミネートされている。(その時は、お金があったのかなあ。。。)



(参考資料:2013年1月11日付「The Times」など)

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2 件のコメント:

  1. 南アフリカの映画を集中的に観ています。賞を採るにはやはり多額のお金が必要なんですね。良い映画に出会うためには、授賞暦などに惑わされずに、自ら感性のアンテナを長く伸ばしておくことが大切なようですね。『リトルワン』『イエスタデイ』は、いつか見てみたいです。ご紹介に感謝です。

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    1. 機会があったら、このブログでもご紹介した『ファニー・フリーのロボラ』や『イナンバー・ナンバー』もご覧になってください。

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