2013/01/13

2020年にクルーガー公園からサイがいなくなる可能性。最新報告書が予測する絶望的な未来。

ントンビ(Ntombi)ちゃんの目の前で、母親が惨殺された。犯人たちは母親を取り囲んで、なにか作業をしている。まだ乳飲み子のントンビちゃんに、難しいことはわからない。恐らく母親が殺されたことも。。。とても怖くて、ただ、お母さんの傍に行きたいだけ。。。

うるさがった男たちは、ントンビちゃんを追い払おうと、斧やナタで切りかかった! ントンビちゃんは顔などに18か所も深い傷を負ってしまう。だが、頭蓋骨を切り裂くほどの重傷にも関わらず、奇跡的に命を取りとめる。。。

この事件は今年早々、首都プレトリアから北に250キロ、リンポポ州のマコパネ(Makopane)近くで起こった。ントンビちゃんは生後2か月のシロサイの赤ちゃん。

2時間おきにミルクを飲むントンビちゃん。「Sunday Times」より。

かつて聞いたことのなかったサイの密猟が、ここ数年急増している。昨年一年間で、南アフリカでは668頭ものサイがツノ目当てに殺された。うち420頭以上がクルーガー国立公園(Kruger National Park)でのことだ。

クルーガー国立公園では、ツノを付け根から切り取られたサイのむごたらしい死体が、2010年には146頭、2011年には252頭発見されている。2012年には420頭以上だから、加速度的に増加していることになる。

2012年9月、クルーガー国立公園で働く大型哺乳類生態学者(large mammal ecologist)、サム・フェレイラ(Sam Ferreira)博士らが、サイの絶望的な未来を予測する報告書を提出した。密猟が現在のペースで進めば、クルーガー国立公園では2015年にサイの死亡数が誕生数を上回り、5年後の2020年には一頭もいなくなるというのだ。

アフリカのサイには、シロサイとクロサイがいる。(どちらも灰色。)世界中の総数は、シロサイ約2万頭、クロサイに至っては、僅か4000頭。

シロサイは北部シロサイ(Northern White Rhinoceros)と南部シロサイ(Southern White Rhinoceros)に分かれるが、北部シロサイは動物園にほんの数頭いるだけ。野生のは全滅してしまった。

クロサイは4種のうち、かつてアフリカのサバンナ、特にカメルーンに数多く見られた西部クロサイ(Western Black Rhinoceros)が、2011年に絶滅した。

世界のサイの73%が南アフリカに生息する。従って、南アフリカでの密猟が世界のサイ人口に与える影響は計り知れない。

ジンバブエのフワンゲ国立公園(Hwange National Park)には、かつて数百頭のサイが暮らしていた。それが今や、僅か4頭を残すのみ。ゼロになるのは時間の問題である。

ジンバブエ自然保護対策委員会(Zimbabwe Conservation Task Force)のジョニー・ロドリゲス(Johnny Rodrigues)氏によると、ジンバブエの場合、中国企業への鉱山採掘権割当てとサイの密猟の間に、緊密な相関関係があるという。

「なんの管理もされないまま、採掘権が分け与えられており、環境にとって大きな脅威を生み出している。」「フワンゲ近郊には、公園内の炭鉱など、10もの鉱山採掘権が存在する。」

ジンバブエ政府に近い中国人が地元の犯罪組織「クロコダイルギャング」(The Crocodile Gang)と結託して、象牙やサイのツノを密猟・密輸しているというのだ。

目を覆いたくなるような惨状の中、唯一頑張っているのがボツワナ。南アフリカも含め、政治のトップは汚職にまみれまくっているというのが一般的なアフリカにおいて、「真面目過ぎるため国民の人気がイマイチ」という毛色の変わった大統領を持つ。

その大統領、イアン・カマ(Ian Khama)の音頭取りで、ボツワナはサイの保護に力を入れている。

実は、1980年代、ボツワナのサイは絶滅の一歩手前だった。そこで、カマ大統領は「2020年までに500頭以上に増やす」という目標を掲げる。最近の調査では、100頭以上にまで増えていたそうだ。

カマ大統領は昨年末、「2014年から国内での狩猟を一切禁止する」と発表。エコツーリズムに全力を注ぐという。

ザンビアも後に続き、「トロフィーハンティング」(trophy hunting)の禁止計画を明らかにした。

冒頭のントンビちゃんは、サイ孤児院に引き取られた。命は助かったものの、心の傷は深く、過敏で情緒不安定。寝ていると思ったら、突然目を覚まし、取り乱す。ひとりになるのを嫌がるので、いつも誰かが傍にいるようにしているとのこと。

2013年に入って、まだ2週間。既に数頭のサイが殺された。南アからサイが一頭もいなくなるまで、殺戮は続くのだろうか。

(参考資料:2013年1月6日付「Sunday Independent」、1月13日付「Sunday Times」、「Sunday Independent」)

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