今週末、南アフリカをこの冬初めての寒波が襲った。ジョハネスバーグでも、3日前までは最高気温が25度くらいあったのに、今日はいきなり最高気温9度、最低気温2度の予報。今朝の『タイムズ』紙の一面トップ見出しは「
Winter of discontent」。
新聞の見出しは、単刀直入に要点を挙げるのが普通。「
不満の冬」って、曖昧過ぎない?
実は、この見出し、シェイクスピアの『
リチャード3世』(Richard III)の有名な出だしなのだ。
Now is the winter of our discontent
Made glorious summer by this sun of York
日本人にとって、「
祇園精舎の鐘の声・・・」とか、「
つれづれなるまゝに、日ぐらし硯に向かひて・・・」とか、「
ゆく河の流れは絶えずして・・・」とか、古典の出だしを学生時代暗記したのが一般教養の元となっているように(皆さん、暗記しませんでした?)、英語圏の国々では、シェイクスピアや聖書の引用が新聞記事や小説や映画などに何の説明もなく現れる。「知っていて当然」なのだ。
南アフリカでは、アパルトヘイトが終わり、黒人政権が樹立してから20年経つが、初等中等教育の質が向上しないどころか、益々ひどくなっているし、
文化のアフリカ化を目指す風潮(ベンツやローレックスは好きなくせに、クラシック音楽やバレーは駄目)と
政府の政策のとばっちりで、イギリスの古典なんか勉強しないだろうなあ。大体、教科書が生徒の手元に届く届かないとか、先生が学校に来る来ないとかが取沙汰されているレベルだもの。
だが、南アフリカでは「
世界レベルの・・・」(world-class)という表現が良く使われる。ジョハネスバーグ市のキャッチフレーズは「世界レベルのアフリカの都市」(a world-class African city)だ。そんなに世界を気にするなら、「英語を話す国際人」の教養として、有名な引用くらい学校で覚えさせればよいのに・・・。
・・・などとひとり感慨にふけっていたところ、南ア教育界の実態はそんなものではないことがわかった。古典なんて、問題外。ずっとずっと深刻なのだ。