「聖なるサルの森保護区」(Sacred Monkey Forest Sanctuary)という英語名に惹かれ、バリ島の「モンキーフォレスト」に行ってみた。正式な名称は「Mandala Wisata Wanara Wana」。所有・管理するのは、地元のパンダンテガル(Pandangtegal)村。
地元の人々が神聖なものとして崇めて来たサルが、今はその数も減り、原始林にひっそり暮らしているのだろう・・・と勝手な想像を巡らす。
私の頭にあったのは、ウガンダのチンパンジー保護区のイメージ。レンジャーに連れられ、小数グループで、昼間も暗い、うっそうとしたジャングルに入る。チンパンジーとの遭遇を期待するが、会えるとは限らない。ラッキーにもチンパンジーに巡り合えたら、声を殺してそっと観察する。野生の邪魔をしてはならないのだ。
しかし・・・、人里から離れたジャングルと思い込んでいたが、ウブドの町のすぐそばじゃん。しかも、立派な駐車場。入口では、おばさんがバナナを売っている。サルにやるためだという。
え・・・? 野生動物にエサをやってはいけないのは、常識じゃないの・・・? 野生動物の生活に介入したり、ジャンクフードを与えることで食生活を乱してしまうことも問題だが、賢いサルの場合、「盗賊ザル」「暴力ザル」を生み出す原因にもなる。宮島のサルでも、ケープ半島のヒヒでも、「餌をやらないでください」とはっきり書いてあるはず・・・。
保護区に足を踏み入れる。「森」(forest)というより、整備しつくされた「公園」(park)。舗装された大きな道路を溢れんばかりの観光客が歩き回り、いたるところで身づくろいをしたり、水を飲んだり、ぼーっとしたりしているサルたちの写真を撮っている。う~ん。私の勝手な想像は、本当に勝手な想像だった。
バナナを買う観光客が期待しているのは、多分、こんな写真を撮ること。
でも、人に慣れきって大胆不敵になっているサルたちは、必ずしもこっちの思い通りには動いてくれない。
サルに飛びつかれて驚く女性。子ザルで良かったですね。 |
危ないなあ。でも、私は食べ物を持っていないから大丈夫!・・・と安心していたら甘かった。
ふと気がつくと、若いサルが腰の辺りへぶら下がっていた! 一体、どこから、いつの間に。。。
「何も持ってないよ~」と追い払おうとしたら、威嚇された。サルの方が私よりずっと小さいものの、あの歯には敵(かな)わない。狂犬病キャリアの恐れもあるので、噛みつかれないようじっとする。おとなしく引き取って頂きたいのは山々だが、サルの注意を引くような、美味しげなものは持っていないし、狙いが何だかわからず困っていると、スルスルと体を登って来て、サルの顔が私の顔にくっつかんばかり。。。うわっ、うわっ、うわっ~。。。
・・・そして、何もせず離れて行った。
??? なんだったんだろう?
理由はすぐにわかった。左耳のイヤリングがなくなっていたのだ! スリ師まがいの巧妙な指使い! 全然、気がつかなかった。
赤い木の実みたいなのがブラブラ揺れていたのに、興味を引かれたらしい。
後に残った右側のイヤリング |
食べ物と勘違いして口の中に入れ、イヤリングの金具が釣り針のようにささっては大変だ。回りの人や係員がイヤリングを落とさせようとしてサルを脅かすと、「いやだもんね!」と木の上に登って行った。イヤリングに噛みついて、なんとか「実」を割ろうとしている。そのうち飽きるかも・・・と期待したが、かなり長い時間楽しんでいた。そのうち降りてきたものの、今度は赤ちゃんサルたちが興味を示す。
20分くらい粘った挙句、あきらめた。誰も怪我をしないことを祈りながら。
ここのサルは「Balinese long-tailed macaque」(「バリ島ナガオマカク」とでも訳そうか)と呼ばれる種。ジェルをつけたパンク少年のように、頭のてっぺんの毛が立っているのが特徴だ。
ホッペの白い毛も愛嬌がある。 |
赤ちゃんもパンク! |
この保護区、1986年の開設時には、サル総数69匹、入園者は月に800人だった(この時点では、まだ「森」の雰囲気だったのかもしれない)。それが、2011年にはサル605匹、入園者月に1万5000人まで増加。今後、サルと人間の接触が一層増え、サルが人間に益々慣れ、それに伴い事故が増えることが予想される。
バリ島では、観光客がサルにエサをやるのは普通とのことで、案内役のクツット君曰く、「ここのサルはまだ可愛げがあるけど、他のところのは凶暴なのが多いよ」。
皆さん、野生動物にエサをやるのはやめましょうね。狂犬病に感染してしまったり、自分の子供が大怪我をしたりしてからでは遅いですよ。
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✤この投稿は2014年5月31日付「ペンと絵筆のなせばなる日記」掲載記事を転載したものです。
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