南ア支社のセールスマネージャー、マイク・シャープ(Mike Sharp)さんは、似たようなことが南アでもできないかと考えた。とはいっても、オフィスがあるのは、ジョハネスバーグのサントン地区。高層ビルや住宅が立ち並び、広い道路を所狭しと走る車が、排気ガスをまき散らす。とても、本物の羊なんて無理・・・。
そこで思いついたのが、針金製の羊。道路脇で針金とビーズを使い、器用に羊や馬やライオンなどを作っている職人が、市内の交差点に結構いるのだ。300ランド(3600円)程度の羊を7頭買い求め、会社の芝生に「群れ」を置いた。通りを歩く人や車で通り過ぎる人にも良く見える。
毎朝、羊たちを芝生に出したところ、市民から予想以上の嬉しい反響が起こり、バング&オルフセン社には多くのメールが寄せられた。
例年にない寒冬のジョハネスバーグで、外に出ている羊たちが「寒そうだ」。羊たちの首にスカーフを巻いたら、「よくやった」。近くにいた羊たちを離れ離れにしたら、「何故仲が悪くなったのか」。元に戻すと、「仲直りして嬉しい」。シャープさんの娘が一頭自宅に連れて帰った日は、「あの子羊はどうしたのか」。結構よく見ているのである。
羊たちのおかげで、大都会でせわしい生活を送る人々の心が少し明るくなった。ささやかながらも、まさに都会のオアシス。
ジョハネスバーグ市の条例では、「公園または庭または公共の場で、商売をしてはいけない」ことになっているから、というのだ。「違法取引」容疑で、罰金500ランド(6000円)が課せられた。
羊たちは「装飾」というバング&オルフセン社の抗議に対し、条例担当者のシポ・ドレプ(Sipho Dlepu)氏曰く、「装飾品を屋外に置くはずがない。一般市民に売っているのに違いない」。市警察のスポークスマン、ウェイン・ミナール(Wayne Minnaar)主任警視も、「店主は店の外で商品を売ってはならない」。
何故、世界的な音響メーカーが針金製の羊を、それもオフィスの敷地内の芝生で売らなければならないんだ~!?!
羊たちが入っているのは、押収物保管所(pound)。(「pound」には 、「迷った羊・牛などを収容する公設の獣柵」という意味もあるので、なんだか笑える。) 「釈放」するには、2000ランド(2万4000円)払わなければならない。
羊たちを取り戻しても、「会社の芝生に置けば、また押収する」と警察は強気。シャープさんは、せっかく針金の牧羊犬を特注したのに出番がなさそう、と残念がっている。
しかし、遊び心のあるなしはさておいても、警察には針金の羊を「逮捕」するより、もっと重要且つ緊急な仕事が沢山あると思うのだが。。。
(この続きは「B&O社の羊たち 無事帰宅」で。)
(参考資料:2011年7月13日付「The Times」、「The Star」など)
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