2013/12/14

でたらめだったマンデラ追悼式の手話通訳、実は暴力的な総合失調症 世界の要人を危険にさらした責任は?

12月10日、マンデラの追悼式をテレビで見ていた全世界の聴覚障害者は目を疑った。手話通訳者の「訳」が全くわからないのだ。「あのサインは『揺り木馬』? でも、何故オバマ大統領が揺り木馬の話なんか・・・? えっ、『タバコ』? 『エビ』?・・・なんだ、全然文になってないじゃん!」

(「DESTINY.com」より)
それもそのはず。ソウェト在住、34歳の「手話通訳」、タムサンカ・ヤンキー(Thamsanqa Jantjie)による、全くのでたらめ、行き当たりばったりの創作手話だったのである。

一体、誰が南ア史上最大級の大舞台に「偽通訳」を雇ったのか?

与党ANC(アフリカ民族会議)の報道官ジャクソン・ムテンブ(Jackson Mthembu)は「追悼式は政府の行事」、「政府がどうやってこの通訳を雇ったか、ANCの知るところではない」。常日頃、党と政府を同一視するANCらしくない発言。ANCはここ数年、何度もヤンキーを大きな行事や記者会見に使ってきたが、一度も苦情が来たことはない、と強気。(じゃあ、やっぱりヤンキーのコネはANCじゃないかな。)

政府の広報担当組織GCIS(Government Communication and Informatin System)は、「うちでは手話通訳を独自に用意していたが、使ってもらえなかった」。

世界が怒り、あきれる中、政府は釈明を迫られた。記者会見を行ったのは、「女性子供障害者省」(Department of Women, Children and People with Disabilities)の副大臣ヘンドリエッタ・ボゴパネ=ズル(Hendrietta Bogopane-Zullu)と広報担当官エミリー・オリファント(Emilie Olifant)。ヤンキーを雇ったのは同省ではない、と断りながらも、

「あの通訳を雇ったのは間違いだった。」(そりゃそうだろう。)

色々な省が追悼式の計画・運営にあたったので、どの省がヤンキーを雇ったか不明。」(そんなことあり得るのか?)

「ヤンキーの雇用主、南ア通訳社(SA Interpreters)に連絡を取ろうとしたところ、存在していなかった。」(誰かがこの会社にオーダーを出したはず。)

「南アフリカはこの件で恥ずかしく思うことはない。」
「それどころか、聴覚障害者へのサービス向上に努力していることを誇りに思うべき。」
「期待されていたレベルの通訳ではなかったが、犯罪を犯したわけではない。」
「通訳を非難する前に、南アフリカの手話には100以上の方言があることを考慮に入れるべき。」
「第一言語がコサ語なのに、英語から手話への通訳だったので戸惑っていた。」
「(大きな場に出て)ちょっと圧倒され、焦点を失っただけ。」
(・・・ですむ話か?)

ヤンキー自身は地元ラジオの取材で、かなり強気の発言をしている。

「僕は手話のチャンピオン。これまで数々の大イベントで通訳を務めた。」「僕の通訳が間違っているというなら、何故今まで問題にならなかったんだ? 何故今になって問題視されるんだ?」
(実は、これまでANCに苦情を申し立てた団体があるが、無視されたとのこと。)

また、国内外の多くのメディアインタビューでは、このように答えている。

通訳している最中、「会場に天使が降りて来るのが見えた。そんなことがあり得るわけがないので、自分の具合が悪いことに気がついた。」天使などが自分を追い払おうとした、という。

幻覚が見え、頭の中で声がした。「僕に出来ることはなにもなかった。たったひとりで、とても危険な状況にいた。

通訳の内容が間違っていることを知っていたかという質問に対して、「勿論!」。しかし、「悪いことはなにひとつしていない。」そして、「(幻覚が見える時)暴力的に反応することが時々ある」と認めた。

南アの「タイムズ」紙の取材は断った。理由は「稲妻がある・・・。雨が降っている・・・。危険だ・・・。」

ヤンキーは総合失調症(昔でいう「精神分裂症」)。マンデラの追悼式の日は半年に一度、病院に検査に行く日だったらしい。暴力を振るう傾向があり、レンガを武器にして、同僚を人質に取ったこともあるという。

つまり、神経の病気のため、幻覚を見るばかりか、自己を抑制できず、暴力を振るってしまう人間が、アメリカ合衆国大統領や国連事務総長など世界的要人のすぐ傍に、それも南ア政府に依頼されて居たわけである。

安全保障問題研究所(ISS: Institute of Security Studies)の研究員ヨハン・バーガー(Johan Burger)は、「ヤンキーを世界の指導者たちの近くに置いたのは、安全保障上の大チョンボ」と言い切る。普通だったら、精神状態、過激派との関係、犯罪歴などを含んだ詳しい身元調査をしているはず。担当者がなすべきことをしていなかった、というのだ。

因みに、手話通訳の料金は通常、1時間1300-1800ランド(1万3千円-1万8千円)。ところが、ヤンキーの料金は1日で800ランド(8千円)。安いから、と担当者がケチったか、それとも、やっぱり誰かにコネがあったのか。

ともあれ、追悼式は無事に終わった。その後、マンデラの遺体は3日間、プレトリアの大統領府で国民7万人以上のお別れを受けた。あと残るは15日の国葬だけ。4000人収容の簡易ホールはほぼ完成したらしい。

ところが、ここでまた新たな問題が浮上。葬儀を司るテンブ(Thembu)族のブイェレカヤ・ダリンディエボ(Buyelekhaya Dalindyebo)王が「ズマ大統領が出席するのなら、自分は出席しない」とごねているらしい。また、葬儀の出席者を招待するのは王の役目なのに、いくらマンデラ家の跡取りとはいっても、王族でもない若僧のマンドラが王や首長を招待していることにも不満らしい。「葬儀についてマンドラの指図は受けない」と家族に漏らしたとか。

現在、関係各省の大臣やマンデラの娘などがダリンディエボ王を説得中。

チャールズ英皇太子なども出席する予定の「国葬」。また馬鹿げたスキャンダルで、世界の笑い者にならなければ良いけれど。とんだ茶番劇続きで、マンデラが可哀想である。

【関連記事】
マンデラの遺体、金曜日まで大統領府 直接お別れを告げる最後のチャンス (2013年12月11日)
今日、マンデラの追悼式 (2013年12月10日)
ネルソン・マンデラ、逝く 弔問客であふれるジョハネスバーグの自宅前 (2013年12月7日)

0 件のコメント:

コメントを投稿