2015/03/21

絶滅まで秒読み段階 全世界に僅か5頭のキタシロサイ

全世界に僅か5頭。キタシロサイの生息数だ。ケニアの保護区で厳しい監視の元に生きているオス1頭とメス2頭、チェコ共和国の動物園にメス1頭、アメリカ合衆国の動物園にメス1頭。野生では既に絶滅してしまった。

世界に1頭しかいないオスの名前はスーダン(Sudan)。43歳。シロサイの寿命が40-50歳ということを考慮すると、かなりの高齢。元々キタシロサイは動物園など囚われの身状態で殆ど繁殖しない。人工授精という手も考えられるが、高齢のスーダンの精子は質が良くないらしい。5頭が一匹ずつ死んでいき、数年後にはキタシロサイがこの世界から姿を消してしまうことはほぼ確実だという。

サンディエゴのアンガリフ(Wikipedia
シロサイにはキタシロサイ(northrn white rhinoceros;学名Ceratotherium simum cottoni)の他にミナミシロサイ(southern white rhinoceros;学名Ceratotherium simum simum)がいる。ミナミシロサイは南部アフリカに約1万7500頭、うち93%が南アフリカに生息する。キタシロサイが絶滅しても、ミナミシロサイが生き残ればシロサイ自体は安泰…というわけでは必ずしもない。キタシロサイとミナミシロサイは100万年以上前に分かれたとされ、シロサイの亜種ではなく全く別の種という学説もある。また、ミナミシロサイの密猟も進んでおり、絶滅が危惧されている。

キタシロサイはかつてウガンダ、スーダン、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国に生息していた。チャドやカメルーンにも生息していたといわれる。それが狩猟により1970年初頭には総数500頭程度まで減少。1980年代の終わりには5頭しか生存していなかった。その後、保護努力が実って多少数が増え、2000年には30頭を超えた。しかし、2003年から密猟が増加。WWF(世界自然保護基金)によると、2006年に野生に生きるキタシロサイはコンゴ民主共和国のガランバ国立公園(Garamba National Park)の4頭のみ。そして、その全員が密猟の犠牲になってしまった。

キタシロサイの繁殖に成功した動物園はチェコ共和国のDvůr Králové Zooだけだ。2009年、同動物園のキタシロサイ6頭のうちオス2頭とメス2頭の4頭が、野生の状態での繁殖を目指して、ケニアのオルパジェタ保護区(Ol Pejeta Conservancy)にやってきた。チェコに残った2頭のうち1頭は2011年に死亡。現在メスのナビレ(Nabire)1頭しかいない。

ケニアのオスは1974年頃生まれたスーダンと1980年生まれのスニ(Suni)、メスは1989年生まれのナジン(Najin)とその娘で2000年に生まれたファツ(Fatu)。3歳頃スーダン共和国で捕獲されたスーダン以外の3頭は、動物園で生まれた。スニは2014年10月17日に死亡。

アメリカのサンディエゴ・ズー・サファリ・パーク(San Diego Zoo Safari Park)には野生で捕獲された2頭がいたが、スーダンのハルツーム動物園(Khartoum Zoo)から借りていたオスのアンガリフ(Angalifu)が2014年12月14日に死亡。残っているのはDvůr Králové Zooから借りているメスのノラ(Nola)だけ。

チェコのキタシロサイ。動物園のサイのツノは、柵にこすりつけて曲がったものが多い。(Wikipedia

世界3か国に残るメス4頭のうち、チェコのナビレとケニアのナジンは高齢、アメリカのノラは不妊症、ケニアのファツは膝の具合が悪い。キタシロサイの絶滅を防ぐには精子と卵子を取り出して、試験管ベイビーを作るしかない、と科学者たち。だが、現在の体外受精技術では無理。たとえ将来的にサイの試験管ベイビーを作り出すのに成功しても、現在生存している5頭が死んでしまった後になるだろうとのこと。

そして、たとえ試験管ベイビーが誕生しても、サイの密猟の悲惨な現状を考えると、ベイビーたちに明るい未来はないような気がする。

(参考資料:2015年3月17日付「The Times」など)

【関連ウェブサイト】
Dvůr Králové Zoo(英語)
Ol Pejeta Conservancy(英語)
San Diego Zoo Safari Park(英語)
WWF(英語)


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