公式HPより |
1986年11月22日、ヨハネスブルグ生まれの25歳。膝から足首までを構成する脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)のうち、生まれつき腓骨がない。生後11か月で、両膝から下を切断。
根っからの頑張り屋、スポーツ好きなのだろう。障害をもろともせず、健常者と共に、ラグビー、水球、テニス、レスリングを楽しむ。いずれもかなりの腕前だった。
2003年6月、ラグビーで膝をひどく痛め、リハビリ中の2004年1月、ランニングを開始。現在、プレトリア大学商学部で、経営学とスポーツサイエンスを専攻している。
走り始めた2004年には早くも、アテネの夏季パラリンピックに参加。100メートル走で銅メダル(11秒16)、200メートルでは金メダル(21秒97)を獲得。いずれも、ライバルは義肢1本の選手だった。
2005年、健常者を対象とした南アフリカ陸上選手権で、6位という好成績を収める。2006年の障害者世界陸上選手権では、100メートル、200メートル、400メートルで3冠。翌年、100メートル、200メートル、400メートルで世界記録。
ここまで快進撃を続けると、「2008年の北京五輪に、健常者として出場したい」という夢を持つようになったのも当然だろう。
ところが世の常、横槍を入れる者が出て来た。アイスランドのメーカー、オズール(Össur)製のカーボンファイバー(炭素繊維)義肢「チータ・フレックスフット」(Cheetah Flex-Foot)をはくことで、健常者より有利になっている、というのだ。
更に、国際陸上競技連盟(IAAF:International Association of Athletics Federations)は競技規定を変更。「他の選手より有利になるような、スプリング、車輪、その他の要素を取り入れた技術装置の使用を禁じる」と付け加えたのだ。ピストリウスを対象にしたものではない、とIAAFは主張したが、限りなく黒に近い灰色という印象を与えた。
IAAFではピストリウスの試合映像を分析したり、大学教授の元で科学的テストを行ったりした結果、ピストリウスの足は、同じスピードで走る健常者の足より、使用エネルギーが25%少ない、などを理由として、「ピストリウスのカーボン義足は競技規定違反」と結論づけた。
ここであきらめないのが、一般人と違うところ。弁護士を雇って異議申し立てしたのみながらず、アメリカの科学者チームに徹底したテストを依頼する。(誰が費用を払ったのだろうか。)
ついに、2008年5月16日、スポーツ仲裁裁判所(CAS:Court of Arbitration for Sport)が、IAAFのテストは不十分として、IAAFの決定を覆す。IAAFのテストは直線距離をフルスピードで走った場合しか考慮していないが、400メートル走は直線だけではない。また、スタート時や加速時の不利を考慮していない。更に、身体障害者のピストリウスが元々不利であることも、全く考慮に入れていない。
晴れて、競技規定的には、北京五輪に出場できることになった。
だが、残念ながら、記録が足りなかった。400メートルの出場資格は、45秒55。ピストリウスの最高記録は46秒25。0.7秒足りなかったのだ。
涙を呑んだ北京五輪だが、パラリンピックでは100メートル、200メートル、400メートルの全てで金メダルを獲得。
そして、今年3月、400メートルで45秒20を出し、オリンピック出場資格を手にした。後は、南ア五輪委員会の決定を待つばかり。いくら障害者として異例の頑張りを見せたからといって、もっと力のある健常者を差し置いて出場させることは出来ない。
待ちに待った7月4日。南ア五輪委員会がチームを発表。ピストリウスは個人400メートル走とリレーの2種目に選ばれた。
両足が切断されたランナーが、オリンピックに参加するのは史上初めて。勿論、パラリンピックでも活躍が期待される。
(参考資料:2012年7月5日付「The Star」など)
【関連HP】
オスカー・ピストリウス公式HP
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