2013/10/09

ボツワナでライオンを追う(1) ライオンに脅される日々

今年の2月、ボツワナで一か月バッファローを追ったが、今回はライオン。

究極の目標は、ライオンとバッファローの格闘を撮影すること。場所はボツワナのチョベ。前回、やっとみつけたバッファローを撮影したところだ。
ボツワナでバッファローを追う(1) 第一の難関
ボツワナでバッファローを追う(2) 第二の難関
ボツワナでバッファローを追う(3) ツノの生え方、群れの種類
ボツワナでバッファローを追う(4) 夕暮れ時の動物たち
2月は雨期。増水した川はまるで湖のようだった。森林は厚く生い茂り、うっそうとしていた。それが、今回は・・・。


乾季の真っ只中! 

川も随分小ぶりになった。雨季に水につかっていた部分が姿を現し、動物たちに食料となる草を提供している。一方、木の葉に頼る動物たちにとっては、とても辛い季節だ。

川に急ぐ、痩せて疲れ果てたゾウの群れ。
森に水がなくなったバッファローたちは、川に出て来ていた。もう数か月、車を見慣れてきたせいか、それとも暑さで疲れているせいか、警戒心ゼロに近い。バッファローの群れの中を、「すみません、すみません」とゆっくり進む。前回のように、ガンをつけられることもなく、人間に飼われた牛の群れと同じ程度の反応。


前回、行く先々で「バオー、バオー」と怒られ、「すみません、すみません」と謝りっぱなしだった象たちは気勢がない。水がない、食べ物が少ない、暑い、の3重苦のせいだろう。少しでも日陰を提供する大きな木の根元に、家族がぎゅうぎゅう詰めになって佇んでいる。


「カブラブラという場所をテリトリーにするライオンの群れが、バッフォローの狩りを得意としてする」と聞いた。メスばかりの群れだったが、オスが入り、赤ちゃんも生まれたという。バッファロー対ライオンの対決、赤ちゃんライオンの成長ぶり、もしかしたら、赤ちゃんライオン対バッファローの構図も・・・と夢は膨らむ。

ところが、気のいい連中・・・という話だったのに、会ってみると全然違う。とにかく怒りっぽい。何度も襲われそうになった。

3メートルの距離で、メスライオン3頭に正面から脅されるのは、単なる脅しとわかっていてもゾクっとする。こっちはオープンカーである。屋根もドアも窓もない。フロントガラスすらない。暫く脅しをかけた後、向きを変えて次々と立ち去った姿に、胸を撫でおろす。

2日後、姿は見えないものの、空気が「憎悪」に溢れているのを感じた。突然、砂がもわっと立つ。砂ほこりの中に浮かび上がるのは、メスライオン。目が殺気立っている。マンガだったら、燃えさかる炎を背負っているところ。ふと気がつくと、他のメスたちがオープンカーを取り囲んでいる。やばい! これって、攻撃態勢。。。

写真を撮ろうかと思ったが、光がカメラのレンズに反射するのに反応して、襲われるのは嫌だ・・・と諦める。最近、太極拳のクラスで時々考えるのだが、ライフルを持った殺気立った人間がいきなり教室に入って来た場合、誰を真っ先に撃つだろうか、と。自分が犯人だったら、急な動きをする人間に反射的に銃を向けるのではないか。ライオンは違うかもしれないけど、やっぱり目立たないのが一番かも。。。

危機一髪! この状況を救ってくれたのは、メスたちに嫌われていたオスライオンだった。近づいてきたオスをメスが追いかけ始めたのである。やれやれ。。。

ところが、探しているわけでもないのに、何故かこの暴力ライオン一家にやたら遭遇する。どうやら、彼らのテリトリーの真ん中に、私たちはキャンプを設営したようだ。夜中だって、真っ暗闇の中、ライオンの声が聞こえる。穴を掘っただけの簡易トイレに行くのも、命がけである。

とかいっているうちに、別の群れに遭遇した。メス4頭。「カブラブラ」のライオンを推薦したスティーブが「ごめ~ん。こっちこそ探していた群れだった」という。確かにリラックスしている。1メートルの距離に車で寄っても、まるで猫状態。どてーっとして、愛情深くお互いを舐めあっている。そして、狩りになると、一致団結、「殺しのマシーン」に早変わりするのだ。


チョベのベテランガイドによると、最初に出会った攻撃的な群れも、以前は落ち着いていたという。ところが、攻撃的なヨソモノのオス3頭がやってきてから、群れの性格が変わってしまった。

ジンバブエの村に徘徊していたオス3頭を、誰かが麻酔銃で打ち、チョベに置き去りにしてしまったのだ。元々、人間の里付近に住み、人間嫌いで気の荒い連中が、目が覚めたら、見たこともないところにいたのである。何が何だかわからない中、新しい、とてつもなく危険かもしれない環境に適応しなければならない。(実は、野生動物にとって、ジンバブエの村よりチョベの方がずっと安全だろうが、本人たちはそれを知らない。)ますます気が荒くなっても仕方がない。

そういえば、前回、私たちの姿を認めるやいなや、100メートルも離れているところから、わざわざ走って脅しに来たオスがいたっけ。走る姿が野生番組のスローモーションのように美しく、しばらく見とれていたが、スローモーションどころか、あっという間にすぐ傍までやって来て、ぐおー!!とうなられ、ギョッとしたあのオスも、ジンバブエの「捨てライオン」の1頭だった。

その3頭のうちの1頭が、この群れを乗っ取ったのだ。残りの2頭がなんとか入り込もうとしているらしい。メス2頭が連れている子供たちの父親は誰なのだろう。かなり複雑で流動的な力関係の中、全員が殺気立っている。。。

2つのライオンの群れを追うことになった撮影隊を残して、私は南アに戻った。4姉妹の群れはその後、ヒヒやキリンを殺したという。

さて、11月上旬の撮影終了までに、ライオン対バッファローの対決をカメラに収めることができるだろうか。そして、撮影隊は無事、日本に戻ることができるだろうか。

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1 件のコメント:

  1. 撮影隊は無事帰国。ライオン対バッファローの対決を、なんと3回もカメラに収めることに成功! 放送日が決まりましたのでお知らせします。「ワイルドライフ ~激突!ライオンVS猛牛バッファロー~」 2014年1月20日(月) BSプレミアム 20:00、そして「ダーウィンが来た!生きもの新伝説 ~ライオンVSバッファロー~」2014年3月9日(日) NHK総合 19:30。見てくださいね~。:)

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