2014/04/10

犯罪は外国人が引き起こす「神話」

「犯罪者の多くは近隣諸国の国民」という見方は「神話」であることが、4月8日発表の報告書で明らかになった。報告書を作成したのは「the National Institute for Crime Prevention and the Reintegration of Offenders」という長い名前の機関。「犯罪防止と犯罪者の社会復帰のための国立研究所」とでも訳そうか。

2011年の国勢調査によると、南アフリカに居住する人のうち、外国人は3.1%。そして、受刑中の11万2467人のうち、外国人は4%。誤差を考えると、似たような数字である。「逮捕されない、または逮捕されても有罪にならない犯罪者は、南ア人より外国人の方がずっと多い」というありそうにない事態でもない限り、「犯罪は外国人が犯すもの」とは言えないわけだ。

そういえば日本でも、関東大震災(1923年)の時、朝鮮人が暴徒化したとか、井戸に毒を入れたとか、放火して回っているとかいったデマが飛び交った。パニックに陥った日本人が朝鮮人を襲い、数千人が殺害されたという。朝鮮人と間違われて殺された日本人もいた。外国人、とくに日頃から差別の対象になって、胡散(うさん)臭いと思われている外国人は「スケープゴート」にされやすいのだろう。(無理やり朝鮮半島から日本に連れて来られた人にとっては、踏んだり蹴ったりの大迷惑である。)

意外だったのは、受刑者の男女比。98%もの受刑者が男性なのだ。「殺人、強盗、強姦などの犯罪が多い南アでは、男性の受刑者方が多いだろう」とは思っていたが、まさかこれほど差があるとは・・・。

更に驚いたのは、18歳以下の未成年の犯罪のうち、23%もが性犯罪であること。因みに、18-25歳では13%、25歳以上では16%。成長すると、別の犯罪を犯す人が増えるのだろうか? それにしても、子供に性犯罪が多いのは心配だ。

人種別受刑者内訳は黒人79%、カラード18%、白人2%、アジア系1%となっている。総人口に占める人種の割合は黒人79.2%、カラード8.9%、白人8.9%、アジア系2.5%、その他0.5%。総人口に占める割合が同じカラードと白人の、刑務所内での差が際立つ。これは「社会的経済的環境の違い」と分析されている。

刑期に目を移そう。半数ちょっとの受刑者が10年以下。9%もの受刑者が終身刑。南アに死刑はないため、終身刑が一番重い刑罰である。終身刑の受刑者数は1995年の433人から、2010年には9947人と急増している。

では、受刑者を養うのに、いくら税金が使われているのだろうか。

受刑者ひとり1日329.20ランド。一か月で1万ランド弱。1年で約12万ランド。25年の刑だと約300万ランド、約3億円! これにインフレを考慮に入れると、莫大な金額になってしまう。

2011年の国勢調査によると、一世帯の平均年収は10万3204ランド。一世帯が一か月8600ランド、10万円以下で暮らしていることになる。家族4人(5人、6人・・・)が食費や光熱費や教育費や医療費を払って生活するより、囚人ひとりを養う方がお金がかかるのである。

今、刑務所に入っている人々が、もし刑務所に入らず堅気の仕事を持っていれば、収入を得、消費し、税金を払うことになるばかりでなく、受刑者一人当たり年120万円の国家支出が節約できる。犯罪者が社会復帰に成功すること、そして、犯罪そのものを減らすことは、市民の安全な生活に直結するばかりでなく、国の財政と経済に大きく貢献することになる。国の財政が潤えば、社会福祉やインフラや教育・医療に使う予算が増え、市民の生活水準向上につながる・・・。

政府が犯罪撲滅に本気で取り組まないのが残念至極である。

(参考資料:2014年4月9日付「Business Day」など)

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