「ニワトリや牛や豚は殺して食べてもいいが、野生の動物は駄目」というのは、おかしな理論だろう。命は命である。しかし、「ブッシュミート」の問題は、その多くがゴリラなど絶滅の危機に瀕している動物であること。
ゴリラ(WWF) |
現地の人々には「絶滅しないように保護しなければならない」という意識がない。昔から食べてきたのである。先進国の活動家が「自然保護」「環境保護」を大上段に振りかざしても、現地ではインパクトがない。また、「種の保存」問題はさておいても、野生動物の生息地が人間に押されて少なくなっている上に、人間の人口増に伴いブッシュミートの需要が増えているから、この調子で食べ続けると、ブッシュミート用の動物が絶滅し、結果的に自分たちが困る、ということにも気がついていないようだ。
ゴリラやチンパンジーなどが不必要に人間に食べられるのは、長年、問題視されてきたものの、対策が取られないまま、絶滅の危惧だけが募っていた。
チンパンジー(WWF) |
ところが、最近、ひょんな「助っ人」が現れた。「エボラウィルス」である。
エボラウィルスがもたらす「エボラ出血熱」は
潜伏期間は通常7日程度。発病は突発的で、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、食欲不振などから、嘔吐、下痢、腹痛などを呈する。進行すると口腔、歯肉、結膜、鼻腔、皮膚、消化管など全身に出血、吐血、下血がみられ、死亡する。致死率は50 - 89%と非常に高く、死亡者の殆どに消化管出血が見られる。また、幸いに治癒しても失明などの重い後遺症をのこすことが多い。(「ウィキペディア」)
しかも、体内に数個のウィルスが入っただけでも発病し、治療法なし。
エボラ出血熱が知られるようになってから30年経つのに、死亡総数は1500人以下。2010年の一年だけで、世界中で2億1900万人が発病し、66万人が死亡したマラリヤ(WHOの推定)や、年間300-500万人が感染し、10-13万人が命を落とすと言われるコレラに比べたら、桁はずれに少ない。また、マラリヤやコレラと違って、感染地域が西アフリカに限定されている。しかし、感染すれば死ぬ確率が非常に高く、治療法がないことから、人々の心に大きな恐怖を呼び起す。
現在、流行っているエボラウィルスの変種は、死亡率90%。WHO(世界保健機関)が4月17日に発表したところによると、既にギニアで122人、リベリアで13人が死亡している。シエラレオネやマリでもエボラ出血熱による死亡が疑われてるケースがあるという。
そこで、まだ感染者ゼロのコートジボワールが2014年3月、予防策に踏み切った。エボラウィルスのキャリアとされる、「ブッシュミート」の販売を禁止したのだ。対象となった動物はチンバンジー、アグーチ、ヤマアラシ、カモシカなど。どの動物もコートジボワールでは絶滅の危機に晒されている。
ヤマアラシ(Wikipedia Commons) |
政府が販売を禁止しても、住民は納得せず、一部の市場ではブッシュミートの販売が続けられた。「エボラウィルスはアルコールやお湯に接触すると死ぬ」と信じる人や、エボラの恐ろしさをわかってるのかいないのか、「エボラ肉をくれ」とアグーチの肉を買いに来る酔っ払いもいたとか。
アグーチ(Wikipedia) |
それでも、政府が国中に役人を派遣してパトロールを徹底した結果、一週間後には市場が空になったとのこと。この機会を利用して、国民の教育を徹底させ、ブッシュミートが過去のものになってくれればよいが。。。
その他の西アフリカ諸国も、コートジボアールを見習って欲しいものだ。国民の命が助かり、絶滅の危機にある野生動物も助かる。一石二鳥ではないか。
(参考資料:2014年4月21日付「The Star」など)
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