インシュリンを注射し、特別な食餌療法を行う。その費用、ひと月に約2万円。飼い主のキャロライン・ルール(Caroline Rule)さんにとって、バカにできない出費だ。そんなある日、キャロラインさんと娘のザリア(Zaria)さんは、ラジオで興味深い話を耳にする。
糖尿病にロイボス茶がよいという。
日本ではなぜか「ルイボス」と呼ばれてるが、南アフリカでは「ロイボス」(rooibos)と発音する。アフリカーンス語で「赤い灌木」という意味だ。南アフリカ共和国西ケープ州のシーダーバーグ(Cederberg)山脈のみに自生する植物である。
ロイボスの収穫 |
現地のコイサン族は昔から、乾燥させたロイボスの葉をお茶として飲んでいた。これに目をつけたのが、ヨーロッパからの入植者。ヨーロッパから輸入するしかなかった高価な紅茶の代用品としたのだ。
発芽させるのが難しかったため、商業化は不可能と考えられていたが、1930年、外科医・植物学者のピーター・ノルティエ(Pieter Nortier 1883-1955)が栽培を試み、「種子の表皮に傷をつける」のが鍵ということに気がつく。大量生産されるようになったロイボスは、安いお茶として南ア国民に幅広く愛飲されるようになった。「ロイボスの父」ノルティエ博士は1948年、ステレンボッシュ大学から農学の名誉博士号を授与されている。
ロイボスの父ノルティエ |
現在、ロイボスは「健康茶」として世界中に輸出されている。カフェインを含まず、タンニン濃度がごく低い。また、多数のフェノール系化合物を含んでおり、抗酸化作用があるという。
乾燥したロイボス |
さて、センチュリオン(Centurion)市に住む7年生(日本の中学1年生)のザリアさんは、理科のプロジェクトとして、ジェシーを含めた4匹の糖尿病犬に毎日ロイボス茶を飲ませ、経過を観察することにした。2週間に1度、獣医が血糖値を検査する。
4週間後の結果は・・・?
糖尿病は治っていないもの、著しく変動していた血糖値が安定した。おかげで、必要とするインシュリンの投与量が半減し、インシュリン代が月5千円程度に減った。
キャロラインさん曰く、「ロイボスを与えることで、糖尿病の犬が必要とするインシュリンの量が減れば、飼い主が払う医療費が大幅に軽減されるだけでなく、犬にとっても副作用が減って朗報。ロイボスは健康的な自然の産物であるばかりでなく、値段的にもずっと安いのです」。
ザリアさんとジェシー |
人間の糖尿病に対してロイボスが持つ効能に関しては、研究している科学者がいる。南ア医療研究審議会(SA Medical Research Council)のニレシュニ・チェラン(Nireshni Chellan)さんだ。
ロイボスにしか含まれていないアスパラチン(aspalathin)という抗酸化物質(antioxidant)のおかげで、筋肉細胞がブドウ糖(glucose)を効率よく使うことができるようになり、それが正常な血糖値を維持する助けになるのではないかという。
また、ネズミを使った実験では、酸化的ストレス(oxidative stress)、特に心臓の酸化的ストレスから身を守ることが証明されているという。
一方、ザリアさんは今後も研究を続ける予定。ザリアさんのラジオインタビューはこちらでどうぞ。
【参考資料】
"Rooibos sorts diabetic dog"(2017年7月13日付The Times)
"Schoolgirl tested rooibos on diabetic dogs as part of science project which produced remarkable results"(Rooibos Council)など
【関連ウェブサイト】
Dr Nortier with Rooibos
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