2010/09/21

大統領と食事 お値段は600万円

権力のあるところに金は集まるもの。元解放運動組織のANC(アフリカ民族会議)も例外ではない。アパルトヘイト下で虐げられていた貧しい黒人のチャンピオンだったはずなのに、政権を取ってからはしっかり財界と癒着している。

現在ダーバンで開催中の与党ANCの党大会。開幕前日の夕食会には、利権のおこぼれを狙って、ビジネスマンが群がった。

選挙で他党を圧倒するANCは、中央政府を完全掌握しているだけではない。9つの州のうち、8つまでを掌中に収める。中央政府各省の大臣、副大臣は勿論ANCからだが、次官クラスにも党員が多い。政治家や官僚と親しくなって、入札などで便宜をはかってもらおうとする企業家にとって、ANCの有力党員が一堂に集まる党大会は、絶好のチャンスである。政治家側も多額の袖の下を期待する。

ANCは「これを党の資金集めに活用しないはずはない」と席に値段をつけた。大統領と同じテーブルに座る代金は、なんと50万ランド(600万円)。閣僚クラスで、10万ランド(120万円)以上。見返りの大きさを考えると高くはないという。

ズマ大統領と同席したひとりは、パトリス・モツェペ。1962年1月28日生まれの48歳。鉱業界の大物。総資産が100億ランド(1200億円)を超えると推定されている(2009年)。「フォーブス」誌の金持ちランキングでは、世界で503番目(2008年)。10年前には既に、南アで屈指の超大金持ちとしてマスコミを賑わしていた。

モツェペ自身の能力や才覚もさることながら、短期間にここまでのし上がった陰には強力なコネの力がある。姉ツェピソの夫は、シリル・ラマポザ。マンデラを次いで大統領になるとまで言われたANCの有力者で、その後財界へ移った大富豪。もうひとりの姉ブリジットは、やはりANCの重鎮のジェフ・ハデベ現法相と結婚している。

ターボ・ムベキ元大統領の弟で政治学者のモエレツィ・ムベキは、黒人がコネでのし上がる現状を「縁故資本主義」(crony capitalism)と呼び、競争を阻害するシステムと批判的だが、モエレツィがビジネスマンとしても成功したのは、失脚前の兄が政界の大物だったオカゲが大きいから、偉そうなことも言えない。

一方、ズマ大統領は小学校にも行っておらず、解放運動に身を投じ、政治家になるまでは働いて給料をもらった経験がない。経済観念が欠如しており、賄賂や縁故に甘いと見られている。

モツェペとズマが仲良く座ったテーブルは、失業率25%、黒人労働者の年平均所得が約1万2000ランド(14万4000円)、貧富の差の拡大が懸念される南アで、なにやら象徴的である。

(参考資料:2010年9月20日付「The Times」など)

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