車の傍にはジーンズ姿の男がふたり。身だしなみがよく、顔を隠す風もない。ところが、ふたりはいきなり銃を取り出した。
パレサさんは車の中に押し込まれた拍子に、車のキーを座席の間に落としてしまった。男たちは銃を頭に突きつけたまま、姉妹をこづいたり、なぐったり。そうこうしているうちに、ボントレさんが手に持っていた、買ったばかりの酒がこぼれ、ひとりの男のジーンズにかかったてしまった。
ようやくキーを見つけたパレサさん。男たちはカローラに飛び乗って姿を消した。
姉妹はすぐさま、家族と共に最寄りのモロカ警察署に向かった。警察署の駐車場で、身だしなみの良い、ジーンズをはいた二人組が近づいてきた。ひとりのジーンズは濡れている。なんと、走り去ったばかりのハイジャック犯人! 男たちは警官だと名乗った。
ボントレさんが男たちに対処している隙に、パレサさんは警察署に駆け込み、職員に通報。ふたりは直ちに逮捕された。
しかし、男たちが言ったことは本当だった。二人とも、現職の警察官だったのである!(つまり、犯罪者を捉えるために支給された銃を使って、犯罪を行っていたわけだ。)
迅速に逮捕されたふたりだが、週末には保釈されたという。事実は小説より奇なり、というが、こんな話、小説とか映画にしたら、あまりに嘘っぽいよな~。
昨日の夕方、『スター』紙でこの記事を目にし、「開いた口がふさがらない」とあきれていたら、今朝、『タイムズ』紙を広げて更にびっくり。
リチャード・ムドルリ |
そのムドルリが、自ら犯した殺人(1999年に元愛人の夫を殺害した容疑)の共犯とされているふたりの警察官を大抜擢していた、というのである。
ひとりはンコサナ・キンバ(Nkosana Ximba)。無認可武器所持、税法違反、拷問、脅迫など様々な容疑で、有罪が確定していたり、取り調べ中だったにも拘わらず、「巡査」から「大佐」へ1日で7階級(!)という、通常ではありえない昇進をさせた。(警察で「大佐」とは変に感じられるかもしれないが、南ア警察はケレが警察長官になってから、軍隊の階級を使うようになった。)
もうひとりはオムフレ・ムツンジ(Omhle Mtunzi)。警察が証拠として押収していた車両を売り飛ばすなどの犯罪歴があったにも拘らず、2010年5月に「警視」(現在の軍隊式呼称では「中佐」)に昇格させていた。
コネさえあれば、殺人、恐喝、詐欺、窃盗・・・どんな過去を持っていようと、今どんな犯罪に手を染めていようと関係ない。正式の警察職員として犯罪捜査に関わり、しっかり給料がもらえるのだ。
南ア警察に関しては、当分、口が開きっ放しのままになりそうだ。
(参考資料:2012年4月11日付「The Star」、4月12日付「The Times」など)
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