「ブラック・イズ・ビューティフル」(Black is beautiful)と声高々に叫ばれたのは、アメリカ合衆国でのこと。南アフリカの黒人たちは、アジア人同様、白い肌に憧れるらしい。
知り合いのロバート君はシャンガーン族。黒人にしては色白で鼻の小さいP嬢と、色黒のN嬢に二股をかけていた。ふたりとも、ズールー族。P嬢は怠け者で、頭も悪そう。一方、N嬢は見るからに聡明で、優しく面倒見の良い性格。私から見ると、どちらも普通の顔。内面からにじみ出る知性のせいか、外見もN嬢の方が魅力的だと思った。
しかし、ロバート君が選んだのはP嬢。「Nはブスだから、友だちに笑われる。Pはバカだけど自慢でき、一緒に歩くと皆が振り返る」というのがその理由。全く男って・・・。
当然のことながら、美白クリームが人気だ。世界保健機関(WHO: World Health Organisation)によると、南アフリカ女性の35%、つまり3人に1人が、肌の色を白くするクリームを使っているという。それも、名のある化粧品会社の製品は安全性を気にするから、効果についても「本当に白くなっているのかしら? 気休めじゃあないの?」と思えるほどだが、南ア女性が使用するクリームは、目に見えて色が変わるものが多い。
勿論、危ない。白血病、肝臓ガン、腎臓ガン、腎臓病、不可逆的色素障害などを引き起こす、と問題になっている。目に見えて白くなり、且つ安全な成分があったら、日本の化粧品メーカーはこぞって売り出していることであろう。
危ない美白クリームの研究をしているのは、ケープタウン大学のレスター・デイヴィッズ(Lester Davids)博士。
問題を引き起こしている物質はハイドロキノン(hydroquinone)、水銀(mercury)、モノベンゾン(monobenzone)など。
例えば、ハイドロキノン。写真の現像液、染料、ゴムの酸化防止剤、農薬などの原料だが、メラニン色素の形成を阻止することから、肌の漂白剤としても使用される。
ところが、ハイドロキノンは不可逆的な皮膚障害「外因性組織褐変症」(exogenous ochronosis)を引き起こす。肌の色が青や紫になってしまうのだ。1966年から2007年の間の発生件数を見ると、アフリカがダントツ多く、756件。うち、82.4%が南アフリカという。同じ期間、アメリカ合衆国では22件、イギリスで8件、インドで1件が報告されている。
更に、ハイロドキノンは発ガン性物質! ヨーロッパ諸国では1976年頃から人体への使用が禁止されている。アメリカでは、2006年に漸く店頭販売禁止が提案され、現在では濃度4%以上は処方箋が必要。
南アフリカでは1986年に、ハイロドキノンを2%以上含んだ製品が違法となった。しかし、違法といっても、「入手できない」わけではない。こっそり使ったり、2%ぎりぎり含む製品もある。
黒人女性が白い肌に憧れるのは、今に始まったことではない。例えば、1974年には、モノベンゾンを2%含んだ美白クリームを使用して、肌がまだらになった女性347人が、ソエトのバラグワナ病院で治療を受けている。ハイロドキノンが規制された1986年には、既に、58種類もの美白クリームが市場に出回っていた。
アパルトヘイトが廃止された1990年代、国際的な化粧品メーカーが南ア市場に続々進出。美白製品の数も一挙に増えた。インターネットの普及により、ネットで海外から注文も出来るようになった。更に、市場、乗合タクシー乗車場、鉄道の駅などで、怪しい商品を売る行商人も多い。
最近では、南アフリカで生まれたヒップポップ「クワイト」(Kwaito)のスター、ムショザ(Mshoza)、本名ノマソント・ムニシ(Nomasonto Mnisi)が、肌を漂泊して現れ、ファンにショックを与えた。トリートメント完了後は、「頭てっぺんからつま先まで白くなる」と昨年のインタビューで語っていたが、どうなったことやら。(左の写真が「漂白前」、右が「漂白後」。)
美白クリームの原料としては、他にメラニン色素を分解する植物成分「アルブチン」(arbutin)や「コウジ酸」(kojic acid)などが使われている。
ところで、白い肌に憧れるのは、インドでも同様らしい。2010年、スキンケア業界の大手「ヴァセリン」(Vaseline)が、インドのフェイスブックで、プロフィール写真の肌の色を白く変えるアプリを発表した。同社の男性用美白製品の宣伝だという。
(参考資料:2012年9月15日付「Saturday Star」など)
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日本でも、カネボウの美白化粧品が自主回収、集団提訴になりましたね。成分の「ロドデノール」が白斑症状を引き起こしたとのこと。8ブランド54製品累計出荷数436万個!
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