2013/11/11

まだまだ捨てたもんじゃないヴィッツ大学。各種世界ランキングに食い込む


かつて南アフリカの最高学府だった「ヴィットヴァータースランド大学」(University of the Witwatersrand)、通称「ヴィッツ」(Wits)。

アパルトヘイト時代はリベラルな学生が集まり、アパルトヘイト政権に反対したデモが繰り広げられ、警察の手入れが日常的だった時期もある。反アパルトヘイト運動に身を投じた在学生、卒業生も多かった。(安保反対で揺れた東大の拡大版みたいなものか。)一方で、経済界のエリートも多数生み出した。

ところが、アパルトヘイト後、どうも冴えないのである。昔からヴィッツと何かと比較され、東大に対する京大の観があったケープタウン大学は、花形学長を次々にゲットし、美しい土地の利も大いに利用し、「反アパのリベラル大学ナンバーツー」から、自他とも認める「南ア一の大学」として見事に生まれ変わった。

一方のヴィッツは、昔のプライドが邪魔をして世の中の動きについて行けなかったのか、冴えない学長が続出したためか、イメージダウンの一途を辿った。ジョハネスバーグという町のイメージも悪すぎる。優秀な学生がケープタウンに行きたいと思っても仕方ない。ヴィッツの卒業生としては、目に余る凋落ぶりが寂しい限りだ。

プレトリア大学の学長が昨年、「高校3年生の行きたい大学調査でも、企業が雇いたい学生の出身大学調査でも、プレトリア大学は2位だった」と自慢していた。(1位はいずれもケープタウン大学。)

長年南アで一番といわれたヴィッツ大学のビジネススクールは、同じジョハネスバーグに2000年に設立されたプレトリア大学のビジネススクールGIBSに学生を奪われた。GIBSが厳選した200以上の学生を擁するのに、ヴィッツビジネススクールの学生数はその10分の1にも満たない。応募者が激減したのだ。情けない。。。。。

雑誌の表紙になったアダム・ハビブ学長
ところが、昨年、メディアにもよく登場するアダム・ハビブ(Adam Habib)教授が学長になって、多少雰囲気が明るくなってきた。イスラム教徒の家庭に生まれたインド系南アフリカ人。学生時代は反アパルトヘイト運動に身を投じ、現在も民主主義について論評を続ける。

そして、このところ、大学のランキング発表で明るい話題が続いている。

まず、9月発表の、世界の大学を格付けする「世界の大学学術ランキング」(Academic Ranking of World Universities: ARWU)2013年版で313位。昨年の363位から50位も上がった。

2003年に始まったARUWは、教育の質(10点)、講師陣の質(40点)、発表論文数(40点)、常任講師1人当たりの発表論文数(10点)を採点する。

上位500校のうち、アメリカの大学が149校と約3割を占める。中国の大学が42校も入っているのは、格付けを行っているのが、上海交通大学(Shanghai Jiao Tong Univeristy)であるためかもしれない。

アフリカでは4大学が上位500校に選ばれた。ヴィッツ大学以外では、ケープタウン大学が201‐300位以内、カイロ大学とクワズルナタール大学が401-500位内に入っている。

因みに、日本の大学は20校が上位500位に。ベスト100に入ったのは東大(21位)、京大(26位)、阪大(85位)の4校。101-200位に北海道大学、名古屋大学、東北大学、東京工科大学、九州大学、筑波大学の6校、201‐300位に神戸大学、301‐400位に広島大学、慶応大学、岡山大学、東京医科歯科大学、早稲田大学の5校、401-500位に金沢大学、長崎大学、新潟大学、徳島大学の4校。(101位以下は100校ずつアルファベット順で発表されている。)

日本の大学ランキングと全然違うじゃん!・・・という疑惑に満ちた声も出そうだが、採点のやり方が違うのだから仕方ない。日本語で論文を発表しても、恐らく点数にはならない。

本題に戻って・・・

同じく9月に発表されたのが、「タイムズ高等教育」(Times Higher Education)による「出身校指標:世界の重役たち」(The Alma Mater Index/ Global Executives)。CEOを輩出した大学のランキングである。

1位はハーバード大学。上位100大学のうち、アメリカの大学が38校。日本は東大(2位)、京大(18位)、早稲田(20位)、中央大学(27位)、一橋(43位)、東京工大(52位)、阪大(74位)、法政(100位)と8校。

アフリカ大陸から上位100大学に入っているのは、南アフリカの2校だけ。ヴィッツの24位とケープタウン大学の79位だ。ヴィッツはニューヨーク大学やプリンストン大学やブラウン大学より多くのCEOを生み出している!

10月には、同じく「タイムズ高等教育」が「雇用したい卒業生の出身大学世界ランキング」(Global Employablity University Ranking)を発表した。世界20か国のトップ企業の雇用担当者2700人に、どの大学の卒業生を採用したいか聞いたものだ。

1位はオックスフォード大学、2位はハーバード大学。日本のトップは東大の10位。

ヴィッツはアフリカ大陸の大学で唯一、トップ150に食い込んだ。(137位

そして、10月末。雑誌『Spear's』が百万長者を輩出した大学トップ500を発表。上位100校のうち、60校以上がアメリカ、日本の大学はゼロ。日本が先進国の中でも極めて貧富の差が少ないことを改めて実証した。

アフリカ大陸から上位100に2校入っている。ヴィッツの56位とケープタウン大学の79位である。

こうしてみると、ヴィッツはまだまだ捨てたもんじゃない?

【参考資料】
「世界の大学学術ランキング」(Academic Ranking of World Universities: ARWU)
「出身校指標:世界の重役たち」(The Alma Mater Index/ Global Executives)
「雇用したい卒業生の出身大学世界ランキング」(Global Employablity University Ranking)
『Spear's』誌 百万長者の出身大学ランキング

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